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4話 初めての下校

 午後のHRが終わり、クラスの生徒達はそれぞれに散らばっていく。

俺は聡達に一緒に帰れないことを伝え、愛理が待つ1階の下駄箱へ急ぐ。


 階段を降りて1階の下駄箱に到着すると、先に待っていた愛理が嬉しそうに近付いてくる。



「待たせてゴメン」


「ううん……私も今、汐音と凛と離れたばかりだから」



 初めての女子との二人の帰り道。

チョウ緊張する。

思わず、下駄箱に靴を入れ間違うところだった。


 二人で校舎を出て校門をくぐる。

愛理は俺の隣を歩いているので、距離が近い。

周囲では下校する生徒達が俺達二人を見てヒソヒソと話をしている。

明日になったら噂になって、学校中に広まることだろう。

愛理は岡島高校でも有名なギャルだからな。


 何も話をしないで二人で一緒に帰る。

それだけで胸の鼓動がドキドキと鳴る。

何を話していいのか、やっぱりわからない。

しかし、何か話したほうがいいよな。



「いつもは汐音と凛と三人で帰ってるの?」


「うん、そうだよ。私がナンパされないように二人が守ってくれてるの。汐音も凛もとても優しくて、私……二人とも大好き」


「そうなんだ。三人は本当に仲良しなんだね」


「亮太には仲良しの友達はいないの?」



 仲良しかどうかはわからないが、中学からの腐れ縁の聡が親友としている。

だからと言って、毎日、一緒に帰ったりはしない。

聡は友人関係が広く、常に誰かと一緒に遊びながら帰っているから、俺と一緒に帰ることは少ない。



「同じクラスの聡が一応は中学からの親友みたいなものかな」


「亮太の中学時代って知り合いになりたかったな。亮太、可愛かったんだろうな」



 男子としては可愛いと言われても嬉しくないのだが。

中学時代のことだから、仕方ないのかな。

そんなことを言ったら、俺も愛理の中学時代に会ってみたかったな。

きっと可愛いかったに違いないし。



「俺も中学生の時の愛理に会ってみたかったな」


「私、普通の中学生をしてたよ。ギャルになったのも高校に入ってからだし。私、高校デビューなの。だってギャルって可愛いじゃん」



 愛理の茶髪のロングヘアーが揺れる。

少しカールがかかったフワユルカールだ。

その度に愛理から甘い香りが漂ってくる。

女子の香りって甘くて、優しい香りがするんだな。

香りを嗅ぐだけで頭がクラクラする。



「そうなんだ。愛理は高校に入ってからギャルになったんだね。それは初めて知ったよ」


「だって、ギャルのファッションって可愛いじゃん。メイクも可愛いし」


「学校ではナチュラルメイクだよね?」


「学校だと先生達がうるさいから、メイクはナチュラルにしているの」



 どうやら愛理はギャル系のファッションとメイクが好きでギャルになったみたいだな。

高校ではナチュラルメイクにしていないと、先生達がうるさいからな。

生粋のギャルとは違うのか。

それなのに、あんな噂が立って、本人は嫌じゃないのかな?



「愛理は学校で噂になってる自分のこと知ってる?」


「知ってるわよ。汐音と凛が放っておきなさいって言うし、ナンパ除けになるから便利なんだよねー」



 なるほど、噂が逆にナンパ除けになっているのか。

汐音と凛もそのことに気づいていて、放っておきなさいって言ってたんだな。

二人とも、そういう所には頭が回りそうだし。



「私、あんまり噂って気にならないのよね。気にしても意味ないし」


「確かにそれは言えるかも。でも愛理の噂を信じている男子達は多いよ」


「信じたい人達には信じさせておけばいいじゃん。そんなの私に関係ないし」



 学校での愛理の人気はすごい。

しかし、噂を信じて、愛理に近寄れない男子達も多い。

確かに誤解したい男子には、誤解させておけばいい。

俺も誤解していた一人なんだけど。



「俺と付き合ったりして良かったの? 今になって後悔してない?」


「亮太って優しいというか、気が小さいというか。だから安心して隣にいられる」


「それ褒め言葉になってないよ。どうせ俺は気が小さいよ」


「悪気があって言ったんじゃないのよ。亮太って目立ちたがり屋じゃないし、大人しいというか、優しいじゃん。そんな男子のほうが近くにいて安心だし」



 俺は目立つことは嫌いだ。だから目立ちたがり屋ではない。

大人しいというよりも目立たない。

影が薄いと言ってもいいだろう。

そのことを自分ではあまり気にしていないが、他人から言われると若干傷つくな。


 岡島高校を出てから15分ほど歩いたと思う。

歩道を歩いていると、小さな公園が見えてきた。

愛理が嬉しそうに公園へ入っていく。



「亮太、この公園のこと覚えてる?」


「初めて愛理と話をした公園だろう。俺が子猫を抱いていて、愛理が土砂降りの雨の中を走ってきて」


「そうそう、あの時の子猫、私の家で大事に飼っているからね。名前はウータって言うんだよ」


「そうか。子猫も愛理に飼ってもらって良かったな」


「今度、家に遊びに来る? 私の家、この公園から近いから、すぐに遊びに来れるよ」



 さすがに女子と初めて一緒に帰って、初日で女子の家に遊びに行く度胸はない。

女子の家に遊びに行くなんて、考えただけでもパニックになりそうだ。



「愛理とのことに慣れてから、家には寄せてもらうよ。今日は遠慮しとく」


「そうだね。私達、付き合い始めて初日だもんね。これからもっと亮太と仲良くなればいいし」


「愛理と仲良くなったら、子猫を見せてもらうよ」


「うん……わかった」



 それから愛理の家まで送っていく。

すると愛理は小さなアパートの前で立ち止まった。



「私、このアパートの二階で一人暮らししてるの。このことは内緒なんだよ」


「マジか……」



 俺はアパートの下で立ち尽くす。

まさか、愛理が一人暮らしをしているとは思ってもみなかった。



「今日は送ってくれてありがとう。明日の朝は迎えに来てね。朝、待ってるから。じゃあね」



 そう言って、愛理はアパートの2階の部屋へ帰っていった。

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