39話 二人三脚の練習
今日の体育の授業は男女混合だ。
リレーや100m走を中心に走る競技の練習が行われる。
俺と愛理は二人三脚の練習だ。
俺と愛理は足首を紐で結って、グラウンドのトラックに立つ。
「愛理はそのまま、ゆっくりと走ってくれればいいよ。俺がサポートするから」
「わかった……私はゆっくりと自分のペースで走ればいいんだね」
俺は愛理の肩を持って、愛理と体が離れすぎないようにする。
愛理の体から甘くて優しい香りがする。
とても安らぐ香りだ。
愛理が走り始める。
俺はそれに合わせて、足を添わせる。
愛理が走る度に、愛理の胸の双丘が大きく揺れる。
思わず、愛理の胸に目がいってしまう。
俺は強引に視線を前に向けた。
何もしていないのに愛理がコケた。
俺も愛理に巻き込まれて大きく倒れる。
「どうしたんだ? 今、コケるような所は何もなかっただろう?」
「自分で自分の脚に絡ませちゃった。ごめん」
「怪我はないか?」
「怪我は大丈夫」
もう一度、愛理と二人で二人三脚をスタートさせる。
するとまた愛理が何もない直線でコケた。
そして俺も愛理の横に倒れる。
「どうしたんだ?」
「私、走っているとすぐに足が絡まっちゃうの。だからコケやすい」
「なるほど……足を絡ませないように膝を少し離すような感じで走ってみなよ」
「うん、わかった」
立ち上がって愛理と二人でスタートする。
今度は直線は上手く走っていくことができた。
問題はカーブだ。
やはり愛理はコケた。
「早く走ろうとすると足が絡まっちゃうの」
「それじゃあ、ゆっくりと、歩くよりも少し早い速さから練習しよう」
「それなら大丈夫だと思う」
愛理は目を輝かせた。
そして練習を再開する。
さすがに歩くよりも少し早いだけなので、愛理も足を絡ませることはなかった。
やっとグラウンドのトラックを1周できた。
しかし、このままだと体育祭でビリは確定だ。
なんとかしないといけない。
「さっきよりも少しだけ早く走ってみよう。無理はするなよ。あくまでゆっくりでいいんだから」
「うん……私、頑張る」
少し休憩してから、練習を再開した。
愛理は先ほどより、少し早いスピードで走る。
俺は愛理の肩を持って、しっかりと愛理と体を密着させた。
愛理の体温が伝わってくる。
俺の鼓動は激しく高鳴った。
愛理は走ることに集中しているようで、俺のことには気づいていない。
このスピードなら愛理もコケることもなくトラックを1周することができた。
真夏の日差しが俺達を照らす。
愛理も俺も汗が流れる。
「汗かいちゃった。私、臭くない?」
「臭くないよ。愛理からは良い香りがする」
「ダメ、匂いを嗅いじゃダメじゃん」
「ごめん」
愛理は顔を真っ赤にして、恥ずかしそうにモジモジしている。
しかし、二人三脚の練習は体を密着させないとできない。
「もう嗅がないでね」
「うん」
体が密着しているから、愛理の体から甘い香りがする。
嗅ぐなと言われても、香りが漂ってくるから無理だ。
しかし、そのことを言うと愛理が恥ずかしがる。
だから俺は黙っておくことにした。
「今度は普通に走ってみよう。一、二と号令をかけながら足を交互に出してみよう」
「わかった……やってみる」
「せーの、一、二、一、二……」
「いい調子だ。片足づつに意識を集中させて」
愛理と俺は号令をかけながら、二人で直線を真直ぐ走る。
愛理は時々、脚を絡めかけたが、なんとか持ちこたえた。
しかし、カーブに入るとバランスを崩して、愛理がコケた。
そして俺もコケる。
「カーブは苦手なの。だって曲がってるじゃん」
「曲がってると何が困る?」
「自分で自分の足を蹴りそうになる」
なるほど、それなら上手くカーブを曲がれないはずだ。
愛理は人よりも、足を広げる横幅が狭い。
これならば転んでも当然だ。
「カーブの時は脚をもっと横に離して走ったほうがいいかも」
「そんなことして、バランス大丈夫かな?」
「俺がしっかりとサポートしているから安心してやってみて」
「うん、わかった」
愛理と直線コースまで歩いて戻って、もう一度練習を再開する。
一、二の号令のおかげで直線は上手く走れるようになった。
カーブにさしかかった。
愛理は脚を少し横に離して走る。
バランスが崩れそうになる。
それを俺が愛理の肩を持ってサポートする。
上手くいったと思ったが、カーブの最後で愛理がコケた。
俺も一緒にコケる。
「このままじゃあ、上手くいかないじゃん」
愛理が悲しそうな目をして俺に訴えかけてくる。
なんとか愛理と二人三脚でトラックを一周したい。
今からカーブの練習をしていても、時間がかかりすぎる。
「俺に考えがある。俺に任せて」
「本当に大丈夫?」
「任せて」
直線コースまで戻って、愛理と二人で再スタートする。
直線コースは上手くいった。
後はカーブだ。
カーブにさしかかった所で、俺は愛理の肩から手を離して、愛理の腰を持って抱え上げた。
愛理の脚が宙に浮く。
そのまま、俺は愛理を担いでカーブを走る。
そして直線コースに入って、愛理を下ろして、一緒に直線を走った。
やっと愛理と二人三脚でゴールできた。
「ヤッター。二人三脚で初めてゴールできたじゃん。亮太すごい」
愛理が嬉しそうに目を輝かせている。
少しズルい手段だが、愛理が喜んでくれるならいいだろう。
ルールにも抱えてはいけないとは書かれていない。
俺はニッコリと愛理に微笑んだ。
愛理は嬉しそうに俺に抱き着いた。
「亮太、大好き!」




