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35話 花火大会

 月日が経ち8月1日となった。

8月1日は俺達の県では、花火大会の日だ。


 もちろん前日までに愛理と花火大会へ行く約束をしている。

愛理と約束した時間に愛理のアパートへ向かう。

愛理のアパートの玄関を開けると、愛理が薄ピンク色の浴衣姿で立っていた。



「とても似合っているよ」


「そんなに真顔で褒められると恥ずかしいじゃん」



 そう言いながら愛理が玄関から出て来てアパートを出た。

そして俺の自転車に二人乗りして、花火大会の会場の河川敷まで走っていく。


 土手に着くと、既に大勢の人達が土手の歩道に集まっていた。

土手の歩道には多くの露店が並んでいて、香ばしい香りが漂っている。



「露店で何か食べたいけど、浴衣が汚れたらダメじゃん。今日は我慢する」


「そうか。愛理が我慢するなら俺も食べないよ。でも何か飲もうよ」



 露天商でコーラを二本買って、一本を愛理へ渡す。

プルトップを空けてコーラを飲む。

そして二人共コーラを飲み終えて、ゴミ箱へコーラの缶を入れる。


 二人で手を繋いで土手の歩道を歩いて、花火の見やすい場所を探す。

真っ暗な夜空に大輪の花のような花火があがった。



「うわー花火があがったよ。とってもきれい」


「そうだな。とってもきれいだな」



 次々に花火が上がっていく。

まだ俺達は土手の歩道の通りを歩いている。

早く座る場所をみつけないといけない。


 土手の歩道から階段を下って河川敷へ降りる。

河川敷も露天商が並んでいて、人が多く並んでいる。


 俺と愛理はやっと小さなベンチを見つけた。

そこへ二人で座る。


 空では三つも四つも色とりどりの花火が打ちあがっている。

とてもきれいだ。



「座ることもできたし、やっぱり露天商で何か食べようよ。せっかくの花火大会なんだから」


「亮太がそう言うなら、そうしてもいい。浴衣の汚れないものでお願いね」


「愛理はベンチで花火を見ていてね」



 そう言って俺は露天商の見て回ってポップコーンを買って、愛理の元へ戻る。



「ポップコーンじゃん。これなら浴衣が汚れない」


「そう思って買ってきたんだ」



 二人でポップコーンを少しずつ食べる。

空では花火がどんどんと、続いて打ちあがり、空を彩っている。



「本当に花火がきれい」



 愛理は夜空の花火を見て、小さく拍手をしている。

その横顔がとてもきれいで、俺は愛理の横顔に見惚れていた。


愛理がすっと顔を俺の方へ向ける。

そして不思議な顔をして首を傾げる。



「亮太、じーっと私の横顔を見てどうしたの?」


「愛理、きれいだ」


「あ……ありがとう」


「うん」



 ドドドーンという音がして花火がどんどんと打ちあがり、夜空をきれいに彩る。

河川敷に座っている人、立っている人も、それぞれ夜空の花火を眺めていた。


 俺には花火の種類はわからないが、数種類の花火が打ちあがっていることはわかる。

それぞれに違った味わいがあり、空が輝いている。


 俺と愛理はベンチに座って夜空を見上げ続けた。

時間も午後九時となり、最後の花火が打ちあがった。



「とてもきれいな花火大会だったね。私、実は花火大会にくるの初めてなの」


「そうだったのか。俺は聡達と毎回、花火大会に来てたよ」


「花火ってきれいだね。また来年も花火大会に連れてきてね」


「もちろん、一緒に花火大会へ来よう」



 俺と愛理はベンチから立ち上がって、河川敷を歩いていく。人が多すぎて、一歩づつしか前に進むことができない。


 河川敷の通路では、まだ露天商が開かれており、明かりがあるので足元がみやすい。


 河川敷から土手の上まで階段をのぼる。そして土手の歩道を歩いて、自転車の止めた場所まで戻った。


自転車に二人乗りして、愛理のアパートまで戻る。



「公園で止まって」



 愛理の言うがままにアパートの近くの公園で自転車を止める。

すると愛理が俺の手を引っ張ってベンチへ座った。



「亮太、私をアパートへ送り届けたら、そのまま帰っちゃうんでしょ」


「うん。今日は夜遅くなっているからね」


「だから、もう少し公園にいましょ。まだアパートへ帰ってないでしょ」



 そう言って愛理が可愛く笑う。

俺は立ち上がって、自動販売機からジュースを二本買って、一本を愛理に渡す。


 二人でベンチに座ってジュースを飲む。



「今日の花火大会、私、忘れないからね。私と亮太の大事な思い出だから」



 そう言って愛理は優しく俺を見つめて、俺の肩に頭を乗せる。

俺は愛理の手を静かに握った。



「アパートまで送るよ」


「うん」



 俺と愛理はジュースをゴミ箱に捨てて、公園を出て、自転車を押して、歩いて愛理のアパートへ向かう。


 アパートの一階に着くと、愛理が俺の体をギュッと抱きしめた。



「今日は本当にありがとう。楽しかった」


「うん。俺も楽しかった」



 俺も愛理の腰に手を回して、愛理をギュッと抱きしめる。

とても甘くて優しい愛理の香りがした。



「また明日、遊びに来てね」


「うん……また明日、遊びに来る」



 俺が自転車にまたがると、愛理は嬉しそうに満面に笑顔を浮かべていた。

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