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34話 皆で海へ②

 海からあがって、テントへ戻っていくと、汐音、凛、聡の三人も海からあがっていた。



「お腹空いたから、海の家で何か食べない?」



 汐音がお腹を押さえて提案する。

そういえば朝から何も食べていかなった。

太陽を見ると、少し西に傾いている。

お腹が空くはずだ。



「よし、海の家で何か食べよう」



 俺達はテントをそのまま置いて、五人で砂浜を歩いて海の家に向かう。

海の家の店員に食事を食べたいというと、テーブルに案内してくれた。

そして手作りのメニューを見せてくれる。



「やっぱり海といえば焼きそばでしょ」



 聡が大声で断言する。

そういえば海の家で食べる焼きそばは、家で食べるよりも美味しそうだ。


 俺達五人は焼きそばを注文する。

店員のお兄さんは大声で焼きそばの注文を厨房へ通す。


 あっという間に焼きそばが運ばれてきた。

俺達はそれぞれ、割り箸を割って、焼きそばを食べる。


 とても美味しい。



「私達が沖に行っている間、愛理と亮太はイチャイチャしていたでしょ」



 凜が鋭い指摘を飛ばしてくる。

別にイチャイチャしていたつもりはないが、二人で抱き合っていたことは確かだ。



「別に愛理の浮き輪を安定させていただけだよ。イチャイチャなんてしてないよ」


「そういうのをイチャイチャしているって言うのよ」



 汐音が笑いながら俺達に指摘する。

俺も愛理も言い返す言葉がない。

ひたすら二人で顔を赤くしているしかなかった。



「いいな……彼女と二人でイチャイチャできるなんて、無茶苦茶羨ましい」



 聡が雄叫びをあげる。

ここは海の家の中だから、大声を出すのはやめてほしい。



「聡も汐音と凛にイチャイチャしてもらったらいいじゃないか」



 すると汐音が怒ったような顔で俺を見る。

凜も不満そうに頬を膨らませる。



「私達にはちゃんとした彼氏がいるの。聡とイチャイチャなんてしないわよ」


「聡とイチャイチャするぐらいならクラゲとイチャイチャするほうがマシよ」



 聡の扱いはクラゲ以下なのか。

しかし、聡は嬉しそうに笑顔で笑っている。



「俺は汐音と凛と一緒に海にくることができた。水着も見れた。それだけで十分だ」



 確かに聡のいう通りかもしれない。

普通の男子であれば、愛理、汐音、凛の水着姿などみることができない。

聡のほうが得をしている。


 俺達5人は焼きそばを食べ終わって、支払いを済ませて、海の家を出てテントに戻る。

太陽の日差しが眩しい。


 女子達は代わる代わるにサンオイルを体に塗っている。日焼け止め対策だろう。



「俺もサンオイルを塗ってみたいな」


「それはセクハラだから、汐音や凛に聞かれるとマズいぞ」



 俺は聡の呟きにストップをかける。

女子達に聞かれて、大事になったら、俺も聡も変態扱いだ。



「俺達にも日焼けどめのサンオイル貸して」


「いいわよ。日焼けは痛いから、貸してあげる」



 汐音からサンオイルと借りて、体に塗っていく。背中は聡に塗ってもらった。



「なぜ俺が男子の背中にサンオイルを塗らないとダメなんだよ。何かがちがう」


「ほら、聡、お前の背中にもサンオイルを塗ってやるから、後ろを向けよ」



 俺と聡は互いにサンオイルを背中に塗る。

確かに男子二人がサンオイルを塗り合っている姿は気持ちが悪い。


 テントの近くにシートを張って、その上で五人で体を焼く。日差しがとても気持ちがいい。

そのまま聡はいびきをかいて眠ってしまった。



「私たちは沖まで遊びにいくわ。聡のことは放っておきましょう」



 汐音と凛は立ち上がって、海まで走っていって、沖まで泳いでいってしまった。



「俺達も海に入りにいこう。夕方になるまでに少しでも海に入っておきたいから」


「そうね。聡は寝ているだけだし、私達だけで行こう」



 俺は愛理の手を握って、海へ向かって走る。

そして愛理の脚が届く所まで海に入っていく。



「足が届くから、大丈夫だよ。まだ怖がらなくても大丈夫」


「私、海の波が怖いの」



 確かに大きな波が来た時には、頭まで波の中へ入ってしまう。

泳げない愛理としては不安なんだろう。



「大丈夫。浮き輪があるから、絶対に沈むことなから」


「それはわかってるだけど、不安なの」



 そう言って愛理は俺の体を抱きしめて離さない。

俺は浮き輪に手を置いて、浮き輪がひっくり返らないようにする。


 愛理は必死で俺に抱き着いて、まだ不安そうな顔をしている。

俺も愛理の腰に手を回してギュッと抱きしめた。

すると愛理もギュッと抱きしめてくる。


 確かに傍からみるとイチャイチャしているようにしか見えないな。


俺と愛理が海から戻ってくると、汐音と凛が先に戻ってきていた。

聡はまだ起きずに、今度は背中を焼いている。



「もうそろそろ気温が下がってきたわ。今日はこれぐらいにしましょ」


「今、帰らないと、地元に着いた時には真っ暗になってるじゃん」



 空を見ると太陽が随分西に傾いている。もうすぐ夕焼けの時間帯だ。



「聡……起きろ。帰るぞ」


「え! 俺、まだ泳いでねーぞ」


「寝ていたお前が悪いんだろう。テントとシートを片付けて、海の家で着替えるぞ」



 聡はまだブーブーと文句を言っていたが、聡は無視してテントとシートを荷物にまとめる。

そして五人で海の家に向かった。


 海の家でシャワーを借りる。そして男女に別れた更衣室で服を着替える。

愛理がスッキリとした笑みをうかべて、俺達を覗き込んでくる。



「シャワーを浴びてすっきりしたわ。亮太達もすっきりした?


「ああ……すっきりしたよ」



 汐音と凛も私服に着替えて更衣室から出てきた。

五人で海の家を出て、歩道を歩いて駅へと向かう。

聡がもっと遊びたそうに呟く。



「海にいると時間があっという間だったな」



 確かに海にいると時間が早く感じる。

駅に着いて、電車に揺られて六駅、自分達の街へと戻った。

汐音と凛が荷物を持って、手を振る。



「今日は楽しかったわ。愛理と亮太も楽しかったでしょ。また今度、海にいきましょ」


「ああ……今日はありがとう。皆で行ったほうが海は楽しい。また一緒に行こう」



 聡も荷物を持って、汐音と凛の隣に立つ。



「俺は汐音と凛を送って帰るから、亮太は愛理と一緒に帰れよな。二人の邪魔はしたくないし」



 そう言って汐音、凛、聡の三人は駅前から去っていった。

俺と愛理だけが残る。



「海は少し怖かったけど、すごく楽しかった。亮太ありがとう」


「また行こうな」


「うん」



 愛理は海でのことを思い出しているのか、頬を赤くして、すこし恥ずかしそうに微笑んでいる。

俺と愛理は手を繋いで、寄り添って、愛理のアパートまで一緒に帰った。

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