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32話 両親公認の仲

 愛理のアパートに向かう手前の公園に立ち寄って、二人でベンチに座る。

愛理は俺の隣に座って、体を俺にもたれさせた。



「今日、亮太の家に挨拶に行けて良かった。これで両親公認の仲だね。これで誰にも邪魔されない」


「ああ……そうだな。これで両親公認のカップルだ」



 それを聞いた愛理はとても嬉しそうに俺の手を両手で握る。



「私の父さんは許してくれないのはわかっていたけど、母さんが味方してくれたから。父さん母さんにはいつも頭があがらないの」



 そう言って愛理はコロコロと笑う。

その仕草がとても可愛らしい。


 愛理のお父さんも頑固だけど、愛理のお母さんの力のほうが強いからな。

母は強しとはこういう時に使う言葉だろうか。



「俺の家も父さんのほうが躾に厳しいけど、母さんが大らかだからね」


「とても大らかで楽しいお母さんね」



 父さんがどんな頑固なことを言っても、最後には母さんが父さんを丸め込んでしまう。

実際に母さんには敵わないと思う。


 愛理が俺の肩の上に頭をコテッと乗せる。

そして一緒に夕焼けの空を眺める。



「ねえ……亮太、今日は一緒に夕食を食べてから帰れるでしょ?」


「そういえば、さっき母さんに確認するのを忘れていたよ。今から連絡して聞いてみる」



 俺はスマホを弄って家に連絡をする。

すぐに母さんがでてくれた。

今日は愛理の家で夕飯を食べて帰ると報告すると、二つ返事でOKと言ってくれた。



「母さんから、OKをもらったよ。今日は愛理の家で夕飯を食べてから帰るよ」


「ヤッタね。今日の夕飯は何にしようか? 何が食べたい?」


「愛理の作った料理なら何でもいい」


「そういう答えが一番困るじゃん。もっとはっきり言ってよ」


「それじゃあ、冷やし中華ソバが食べたいな。」



 暑くなってきている季節に冷たい中華そばが美味いに違いない。

愛理も嬉しそうに微笑む。



「それじゃあ、スーパーに寄って、冷やし中華ソバの材料を買って帰りましょ」



 俺と愛理はベンチから立って、公園を出てスーパーへ向かう。

段々と夕焼けの色が濃くなり、愛理の横顔が輝いて見える。

とてもきれいで可愛い。


 スーパーに立ち寄った俺達は、カートの上にカゴを乗せて、冷やし中華ソバの具材をカゴの中へ入れる。

愛理は他にも、足りていない食材もカゴの中へ入れていく。

そしてレジに並んで支払いを済ませた後、二人で袋に詰めて、俺が荷物を持って、スーパーを出た。


スーパーを出た時には、すっかり夕闇になっていた。

2つの袋を両手で握りしめて、スーパーからの帰り道を歩く。

愛理は何を買ったのか、相当に重い。



「重い? 大丈夫? 一つ持とうか?」


「大丈夫。大丈夫。二つだけなら何とかなるよ」


「亮太と買い物に行くと、運んでもらえると思ちゃうから、ついつい多めに買っちゃうんだよね」



 それは止めてほしい。

本当はメチャメチャ重い。

だけど愛理の前で恰好悪い所は見せらない。

俺はやせ我慢をしながら、荷物を運んでいく。


 愛理のアパートへ着いた。

二人で階段をのぼって二階に向かう。

二階の一番奥の家の鍵を愛理が開けて、玄関を開ける。

すると子猫のウータが足元にじゃれついてくる。


 ダイニングに入って、テーブルの上に買い物袋を二つ置く。

すると両腕がすごく軽くなった。

ウータがじゃれついてくるので、両手で持ちあげて、胸の所で抱っこする。



「ニャー」



 ウータは甘えた声をだして、俺に身体をこすりつけてくる。

やさしく背中をなでると、目を細めて気持ち良さそうにしている。


 俺とウータが遊んでいる間に、愛理が自分の部屋に入って部屋着に着替える。

今日の部屋着はオフショルダーのニットにデニム姿だ。

本当に愛理はニットがよく似合う。

豊満な胸が強調されて、見惚れてしまいそうになった。

あわてて視線を胸から外す。


 愛理は髪を束ねてポニーテールにすると、エプロンを着けて、キッチンで冷やし中華ソバを作り始めた。

その手つきはテキパキしていて、とても慣れている。


 愛理が料理をしている間、俺は子猫のウータをじゃれさせて遊ぶ。

ウータは喜んで、俺に飛びついてくる。

1時間ほどウータと遊んでいると、ダイニングテーブルの上に冷やし中華ソバが並べられた。

色鮮やかなトッピングの冷やし中華ソバが美味しそうに置かれている。


 愛理はポニーテールを解いて、エプロンを脱いで、席にかける。

そして俺の対面の席に座る。



「今日もとても美味しそうだね」


「自慢の一品なんだから。食べてみて」



 食べる度にトッピングされた具材の味が飛びこんでくる。

そして中華ソバとタレが絡まって美味しい。



「美味い」


「でしょ……ウフフ」



 俺は大量にあった冷やし中華ソバを一気に平らげた。

愛理は嬉しそうに俺が食べている姿を見ている。



「亮太はいつも美味しそうに食べてくれるから、料理を作ったかいがあるわ」


「美味しいものは美味しいから仕方がないよ」


「そう言ってもらえて嬉しいわ」



 夕食を食べ終わって、キッチンで二人で後片付けをして、ダイニングテーブルに座る。

すでに時間は20時を過ぎていた。



「もうそろそろ帰らないとダメ?」


「うん……あんまり遅く帰って、信用をなくしたくないからね」



 席から立ち上がると、愛理も席から立って、俺の胸に飛びこんできた。



「門限なんてなければいいのに。亮太と一緒に暮したいな」


「俺も愛理と一緒に暮らしたいよ。でも今はダメ。健全な付き合いをするって約束したからね」


「もう……亮太の意地悪」



 愛理は目を潤ませて俺の首に手を回して抱き着いてくる。

俺も愛理の腰に手を回してギュッと愛理を抱きしめた。

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