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31話 亮太の実家

 愛理のご両親に会った、次の日、俺は愛理を連れて、自宅へ戻った。

愛理のアパートから歩くこと15分の場所に俺の家はある。

一戸建ての一軒家だ。


 門をくぐって玄関を開けて、愛理と二人で入る。

玄関で靴を脱いで廊下を歩いてダイニングへ行くと、母さんが紅茶を飲んでくつろいでいた。



「母さん、今日は少し話がある。隣に連れてきている女子は愛理という。俺と交際してるんだ」


「加茂井愛理と申します。亮太のお母さん、よろしくお願いします」


「最近、帰りが遅いと思っていたから、彼女でも作ったのかと思っていたのよ。やっぱりそうだったのね。おめでとう亮太」


「母さんは俺に彼女ができたことを祝ってくれるの?」


「当たり前じゃない。愛理さん、こんなに地味な亮太だけど、末永くお付き合いしてあげてくださいね」



 母さんにまで地味と言われるなんて、俺はそんなに地味なのか。



「はい。亮太のお母さん、私達を認めていただいてありがとうございます」



 愛理は嬉しそうに微笑むと、俺の手をギュッと握った。



「亮太のお父さんは警察官をしているの。だから小さい時から躾に厳しくて、そのせいか亮太は地味で奥手な男の子になってしまったので、心配していたの。これでもう安心ね」



 そうだ……父さんにも紹介しておかないといけない。しかし今日は父さんは仕事だ。

すると母さんが優しくニッコリと笑う。



「父さんへは私から伝えておくわ。たぶん父さんに話をすると、健全な付き合いをしなさいと言われると思うの。だから二人共、健全なお付き合いをしてちょうだいね」


「わかってるよ。健全に付き合えばいいんだろう。今でも健全だよ」


「亮太は奥手だから大丈夫だと母さんは思ってるわ」



 愛理の目の前で奥手とか言わないでほしい。

地味男で奥手……俺はどれだけ地味と思われてるんだよ。

愛理はその言葉を聞いて、小さく笑っている。


 リビングのドアが開いて、妹の茜が顔を出した。

そして愛理を見て目を大きくして驚いている。



「亮太兄ちゃんが彼女を連れてくるなんて、今年の異常気象は亮太兄ちゃんのせいね」



 今年のどこが異常気象だ。

いつもいつも俺と顔を合わせば、からかってくる。



「亮太兄ちゃんが選んだにしては、すごくきれいで美しい彼女さんだね。どうやって口説いたの」


「うるさい。お前に関係ないだろう。俺でもやる時はやるんだよ」


「えーあの地味で奥手なお兄ちゃんが、こんな美人に声をかけるわけないでしょ。どうやって付き合ったのよ。少しぐらい教えてよ」



 罰ゲームで告白したら、付き合いをOKしてもらえたなんて、口が裂けてもいえない。言いたくない。


 愛理は茜を見て優しく微笑んでいる。



「私の名前は加茂井愛理というの。亮太はきちんと告白しようとしてくれたのよ。だから私のほうからOKしたの。亮太の妹さん、よろしくお願いね」


「私の名前は茜。中学三年生。来年になったら、お兄ちゃん達の後輩になる予定です」


「茜ちゃんっていうんだ。仲良くしましょうね」


「はい。愛理お姉ちゃん」



 茜は愛理のことを気に入ったようだ。いつも注文のうるさい茜にしては珍しい。



「私、昔からお兄ちゃんじゃなくて、お姉ちゃんがほしかったの。だからとっても嬉しい」



 茜、お前はお兄ちゃんよりもお姉ちゃんが良かったのか。

地味に傷つくぞ。



「それもこんなにきれいなお姉ちゃん。お兄ちゃんにしてはナイスだよ」


「茜ちゃんに気に入ってもらえて、私も嬉しいわ」



 茜と愛理は手を取り合って喜んでいる。

ともかく妹の茜にも愛理は気に入られたようで良かった。



「これで用事を済ませたから、俺は愛理を送っていくよ」


「あら、そうなの? もっとゆっくりでもいいじゃない?」


「とにかく彼女は紹介したからね。これで俺達の用は済んだから」



 母親と妹に彼女を紹介することが、こんなに恥ずかしいことだとは思ってもみなかった。

すごく恥ずかしい。



「愛理ちゃん、これからは時々、家にも遊びにきてね。私は仕事に出ていていない時もあるけど、茜は家にいると思うから」


「はい。わかりました。また亮太に連れてきてもらいます。今日はありがとうございました」



 愛理は丁寧に頭を下げる。

母さんと茜も丁寧に頭をさげる。


 俺と愛理はダイニングを出て、玄関に出て、門をくぐって家を出た。

愛理は家を出た所で、一度立ち止まって、俺の家をじーっと眺めている。



「良いお母さんと良い妹さんだね。すごく温かい家。亮太の家、私、気に入っちゃった」


「そうか。それならいいだけど」



 愛理と二人で手を繋いで歩道を歩いてアパートまで帰る。

愛理は嬉しそうに俺の肩に頭を乗せて、二人で寄り添うようにして歩いていく。

愛理は時々、俺の顔を見て優しく微笑んだ。

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