3話 屋上でのアドバイス
昼休憩に入ると、亮太は汐音、凛、愛理の三人に屋上へ連れ出された。
汐音と凛は慌てているが、愛理にはそんな様子は見えない。
「愛理、あんな教室で告白なんて受けたらダメじゃん。どうして告白を受け取っちゃったのよ?」
「だって、亮太から話しかけられるの初めてだし……亮太ならいいかなと思って」
「今までだって告白は全部断ってきたんだから、今回の告白も断りなさいよ。どうして受け付けちゃうのよ。クラス中がパニックになってるじゃない。このバカ愛理」
「汐音、そんなこと言わないでよ。これでも考えて、きちんと回答したんだから」
汐音と凛が真剣な顔で愛理にお説教をしている。
愛理は困り顔で、汐音と凛の二人に言い返していた。
それを呆然と見ている俺。
一体、何が起こっているのか頭がついていかない。
汐音と凛が振り返って俺に向かって来た。二人とも真剣な顔付きだ。
「こうなったら、亮太にも協力してもらうからね。愛理って未だに彼氏を作ったことがないの。男子とも、男性とも遊びに行ったこともない純情ギャルなの」
「愛理のことで、学校中に広まっている噂は全て嘘よ。私達は嘘を利用していただけ」
は? 学校中に広まっている噂は全て嘘か?
岡島高校でも知らない学生はいないと言われる加茂井愛理が純情ギャル。
そんなことを聞いても、誰も信じる男子生徒はいないだろうな。
俺としては噂が本当であろうと、嘘であろうと、あまり気にしていないのだが。
汐音と凛にとっては重要事項らしい。
「もう、これで明日になったら学校中にアンタ達二人の噂が広まっているわ。もう後戻りできない。これからは二人で仲良く付き合いなさい。何かあったら私達に相談すること」
「亮太、学校では愛理はギャルだからね。そのことをきちんと理解しておいて。今までの噂も本当のことで通すこと。愛理をきちんと守るのよ」
そうだ……これからは俺と愛理はお付き合いする仲になったのだ。
お付き合いといっても、何から始めていいかわからない。
やはり登下校は一緒で、手など繋いだほうがいいのだろうか。
女子と手を繋いだことなんてないぞ。
考えるだけで心臓がドキドキと鼓動がうるさい。
「俺はこれからどうすればいいんだ? 自分でいうのも変だけど、女子と付き合ったことがないんだよ」
「それは私だって同じじゃん。私も男子と付き合ったことないし。亮太と私は同じだね」
愛理があっけらかんと俺に返事をする。
こんな状態で、付き合うなんてことができるのだろうか。
汐音はアゴに手を当てて、首を傾げて考えている。
「まずは下の名前で呼び合うこと。後は二人でよく話をして、お互いの個性を理解しあうこと。よくわかり合うことが付き合いの秘訣よ」
凛が腰に手を当てて、俺に指差してきた。
「亮太はこれからは困ったことがあったら、私達二人に必ず相談すること。愛理は私達二人の大事な友達だっていうことを忘れないこと。何かあったら相談しにきなさい」
おおー……ここに力強い協力者が二人もいる。
汐音も凛も男子との付き合い方も知っていそうだし、女心も教えてくれるだろう。
これからは二人には何かと相談することにしよう。
「亮太はこれからは、私達のことを汐音と凛と呼べばいいわ。愛理の彼氏になるんだから」
おおー……この俺が彼氏。
加茂井愛理の彼氏。
夢でも見ているんだろうか。
「これからは亮太が私の彼氏。私が亮太の彼女。ウフフ……夢みたいじゃん」
愛理はなぜ、そんなに嬉しそうに笑っているんだろうか。
もしかして、本当に俺と付き合うことになって喜んでくれているのか。
まだ愛理のことを把握することができない。
「本当にこんな俺でいいのか? 他にもいっぱい良い男子がいると思うけど」
「だって、告白してくる男子達のほとんどは私の体が目的だよ。いやらしい目で胸ばっかり見てきてさ。下心丸出しじゃん。そんな男子なんて嫌よ」
確かに愛理はモデル並みのスタイルの上に、胸が豊満で魅力的だ。
告白してきた男子達が、胸に視線を向けたとしても仕方のない話だと思う。
俺の視線が胸にいかなかったのは、さっきまでパニックになっていたせいだ。
女性は男性の視線に敏感だと、何かの本で読んだことがある。
女子なら過度に胸に視線を向けられるのは嫌だろう。
俺はそっと胸から視線を外した。
汐音が胸の下で腕を組んで俺を見る。
「まずは一緒に登下校するところから始めましょうか。二人っきりで仲良く帰るのよ」
「今日の帰りは亮太と一緒なんだ。なんだか楽しいね」
愛理が屈託のない笑みを浮かべる。
そうか。今日の下校時から愛理と二人っきりで帰ることになるのか。
何を話すればいいんだろう。
愛理が好きそうな話ってどんな話だろうか。
そもそも女子と二人っきりで帰ったことなんてないぞ。
凛が悩んでいる俺を見てニッコリと微笑む。
「そんなに固く考えなくていいから。二人で帰ることに慣れてくれば、自然と話も出てくるわよ」
「そうだよ。私は亮太と一緒に帰れるだけで楽しいんだから。それだけでいいじゃん」
愛理は嬉しそうに微笑んで俺を見る。
あまり固く考える必要なんてないのか。
考えても上手く話せるはずもないし、少し楽に考えて二人でいることを楽しもう。
汐音と凛が胸を張って俺に迫ってきた。
「愛理は私達の大事な友達なんだから、今まではいつも三人で一緒に帰っていたんだからねそれを亮太に任せるんだから、亮太が愛理を守るんだよ。わかった?」
「わかったよ。下校時は一緒に帰るようにするよ」
初めての女子との帰り道か。
これは大変なことになったぞ。