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26話 愛理と夏の約束

 期末考査テストが終わり、テストが全て返却され、廊下の掲示板に学年順位50位までが発表された。


 俺のような中の中には関係ないが、好奇心で掲示板に貼っている順位表を見る。

なんと汐音が48位、凛が42位と名前が載っていた。


 あの二人って本当に頭良かったんだな。

藤本委員長の名前が24位にあった。

さすがクラス委員長。


 やはり俺の名前はない。

愛理と聡は赤点が1つもなく、平均点を上回っていたと喜んでいた。

俺はいつもの通り、不可もなく可もない中の中の点数だった。

地味男は点数も地味なのか。


 しかし、これで全員、夏休みの補習はなくなった。

これで愛理と楽しい夏休みを送ることができる。

自然と頬が綻んでくる。



「これで期末テスト終わったね。もうすぐ夏休みだね。以前に約束していたこと覚えてる?」


「ああ……プールで愛理の苦手な水泳を教えてあげるって言ってたもんな」


「そう……覚えてくれていたのね。嬉しい。」



 プールといえば愛理の水着姿でしょう。

俺が忘れるはずがない。



「プールに行くのが楽しみだね。いつ行こうか? 海も行きたいし、プールは早めにいきたいかな?」


「わかった……夏休みに入ったら、すぐにプールに行こう」


「汐音と凛に言ったほうがいいかな? 皆、一緒のほうが楽しいし」


「汐音と凛にも予定があるだろう。俺は愛理と二人だけでプールに行きたいな」



 汐音と凛を呼ぶと、聡がどこからか現れそうな気がする。

だからプールのことは愛理と二人だけの内緒話だ。



「わかった……プールは亮太と二人っきりね」



 そう言って愛理が優しく微笑む。

まるで天使のようだ。


 愛理に見惚れていると、愛理は顔を赤くして、女子達の輪の中へ入っていった。



「夏休みに彼女と二人っきりでプールか。楽しそうだな」



 俺の隣から聡の声が聞こえる。

いつの間にか隣に座っていたようだ。

愛理に夢中になりすぎて、聡が近くにいることを知らなかった。



「俺も彼女がほしいぞー。俺もプールに行きたいぞー」


「今回は愛理と二人っきりでプールに行くんだから、聡は連れて行かないぞ」


「クッ……俺にも少し、お裾分けしてくれてもいいだろう」


「ダメ。絶対にダメだ。聡には愛理の水着姿を見せないからな」


「亮太のケチ」



 当たり前だ。愛理の水着姿を他の男子に見せるはずがないだろう。

俺の初めての彼女だぞ。


 聡と騒いでいると、女子達の輪の中から汐音、凛、愛理の三人が出てきて、俺の元へ向かって歩いてくる。


 汐音と凛が少し拗ねたような顔をしている。



「今度、愛理と二人だけでプールに行くんだって。私達に内緒で二人っきりで」


「愛理が嬉しそうにしていたから、何か嬉しいことがあったの? って聞いたら愛理が上機嫌で教えてくれたわ。私達にも内緒なんて、それはないんじゃないの!」



 愛理……どうして汐音と凛に話しているんだよ。

プールの件は内緒だと言っていただろう。

愛理は俺に向かって手を合わせてゴメンのポーズをしている。


 汐音は胸の下で腕を組んで、俺の鼻先を指で押える。



「私達も色々と予定があるし、亮太の気持ちもわかるから、二人でプールに行ってらっしゃい。その代わり、海へは皆で行きましょう」



 凛は顔を俺に近付けて、俺の頬を指でつつく。



「プールは二人で行っていいわよ。でも海へは皆で行こうよ。海は皆で行ったほうが楽しいじゃん」


「……わかったよ。二人に内緒にしてプールに行こうとしたのは悪かった。海へは皆で一緒に行こう」



 汐音と凛が俺の言葉を聞いてにっこりと微笑む。

それを聞いていた聡が立ち上がって手をあげる。



「俺も海に行く。一緒に連れていってくれ。皆で一緒のほうが楽しいだろう。男子が亮太だけだと寂しいだろう。俺も連れていってくれよ。頼むよ」



 汐音と凛は顔を合わせて、顔を近づけてヒソヒソと相談している。

それを見た聡は汐音と凛に向かって、手を合わせる。



「もう……仕方ないわね。海へは人数が多いほうがいいし。聡だけ仲間外れにするのも可哀そうだし。聡も一緒に連れていってあげるわよ」


「そうそう……仕方なしだからね」


「ヤッター。汐音、凛、サンキューな」



 汐音と凛がいうように、海へは皆でいったほうが楽しい。

汐音と凛が一緒なら聡と一緒でもいいだろう。



「愛理、プールへは二人で行って、海へは皆で一緒に行こう。そのほうが楽しいし」


「ヤッター。やっぱり汐音と凛とも海に行きたかったの。亮太が賛成してくれて嬉しい」



 汐音と凛には愛理と二人でプールに行くことを許してもらえたし。

これで皆で一緒に海に行くことができれば、これ以上に楽しいことはない。

聡に愛理の水着姿を見られるが、これは仕方ないことだろう。


 愛理が俺に近付いてきて耳元でささやく。



「今度、新しい水着を買っておくから、一番最初に水着を見れるのは亮太だよ」



 新しい水着……

俺が一番最初に見る……

その言葉を聞いただけで心臓の鼓動が早くなる。



「亮太、今、顔が真っ赤だよ」



 そう言って、愛理は嬉しそうに俺に抱き着いた。

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