24話 ファミレスでの勉強会
放課後になり、一階の下駄箱の所に全員で集まり、校舎を出て、校門をくぐる。
そのまま、皆でファミレスへ向かう。
ファミレスに入って、皆、ドリンクバーを頼み、それぞれ飲み物をもって座席に着く。
聡の両隣に汐音と凛が座った。
聡は嬉しさで頬をほころばせている。
俺の隣に愛理が座る。
それぞれに教科書、ノート、筆記用具を出して、テーブルの上に乗せる。
聡は一番苦手な国語の教科書を出していた。
「わからないことがあったら、私達に声をかけて。それまで私達も勉強しているから」
汐音が聡に声をかけている。
「確か、以前のプリントがあったでしょ。それで復習するといいわ」
凛がジュースを飲みながら聡にヒントを与える。
聡は凛に言われた通り、プリントを出して、国語の教科書をブツブツを読んでいる。
「国語なんて、答えは問題用紙の中に書いてるじゃん。どうして点数悪いのかな?」
汐音は不思議な顔をして聡を見ている。
聡は教科書に集中して、ブツブツと読んでいる。
そしてプリントの問題をノートに書き写して、ノートに答えを書いていく。
「そこはそれじゃないじゃん。そこに書いている『これ』はここを指しているじゃん」
「なるほど、そういうことかー」
「こんな簡単な問題で点数落としてるから赤点ギリギリになるんじゃん」
凛が容赦なく聡にいう。
聡はもう一度教科書を読んで、ノートに要点を書いていった。
「それじゃあ、俺達も始めようか。愛理が嫌いな教科は何?」
「私は数学が苦手……大嫌い」
数学か。
あまり俺も得意ではないんだが……
「亮太、この問題がわからない。教えて」
「あーこの問題は、文章問題だから、文章をよく読んで理解しないと解けないよ」
愛理は一生懸命、問題の文章を読んで理解しようと必死だ。
それでも理解できないようで髪を掻いている。
「だからこの問題は、こういう風に考えて、こう読めば、何を質問しているかわかるだろ」
「なるほど、そういうことね」
「後は公式に当てはめて、答えを出せばいいだけだよ」
「うん……わかった、やってみる」
これは時間がかかりそうだぞ。
俺も数学は得意じゃないけど、愛理よりは理解できているようだ。
まだ愛理を教えることができる。
愛理はノートに公式を書いて、問題を解いていくが、途中で計算方法がわからなくなったらしい。
両手で頭を抱えている。
「そこの計算が間違っているから、つぎの式を間違えているんだよ。ここの計算はこれ。次の式はこうだよ」
「ありがとう……亮太」
「そこは間違いやすいから、マーカーでラインを引いておくといいよ」
「うん……そうする」
愛理は計算を間違えていた。
それを訂正して、次の計算式の中へ当てはめていく。
そして、やっと正解の回答を導き出した。
「やったー。亮太のおかげで1問できたー。」
「よかったね。じゃあ、次の問題へ行こうか。その問題はさっきの問題の応用だから、よく読めばできるはずだよ」
「うん、頑張る」
愛理は黙々と問題を読んで、計算式を書いて、回答を書いていく。
今の所、順調だ。
聡のほうを見ると、汐音と凛が両方から、聡の教科書、ノート、プリントの3つを指さして、二人ががかりで聡に教えている。
聡のほうは大変そうだ。
「どうしてこれがわからないのよ。これはこれを指してんじゃん」
汐音のイライラした声が聞こえてきた。
「それにこれは、ここに答えが書いてあるじゃん。よく読んで理解しないとダメじゃん」
凛の叱咤する声も聞こえてくる。
聡は必死になって、二人の言っている意味を理解しようとしているようだが、的外れの答えを書いてしまっているようだ。
汐音と凛も、言葉はキツイが、必死に聡に教えていた。
「亮太、この問題がわからない」
「これは、この条件を覚えておかないと問題は解けないよ。まずはこの条件を覚えていこう。ノートに条件を書いて覚えていくほうが、覚えやすいよ」
「……わかった」
愛理は必死に条件をノートに何度も書いて、覚えようとしている。
「条件がわかったら、その条件に添って考えてみよう。すると式が見えてくるはずだよ」
「うん」
愛理は条件の書いた下に、式を書いていく。
確認したけど間違っていない。合っている。
「これでいいかな?」
「それで大丈夫だよ。数学では色々な条件が出て来るから、その時は条件を先に覚えておく必要があるんだ。そのことは忘れないで。要注意だよ」
「私、面倒で、いつも条件を覚えていなかったから、難しかったんだー」
「そういうこと」
愛理はノートに今までの条件を色々と書きだしていく。
そして一つ一つ丁寧に覚えていく。
この分だと数学はなんとかなりそうだ。
段々と愛理の質問の回数が減っていく。
俺は愛理を時々見ながら、自分の勉強を進めていく。
聡を見ると、汐音と凛は聡に密着していることも忘れて勉強を教えてくれている。
聡は体が密着しているせいか、顔が赤い。
本当に勉強に集中できているのだろうか。
「これは今日だけじゃダメだわ。もっと日数がかかりそう」
「国語だけで、今日は終わっちゃうじゃん」
汐音と凛が声をあげる。
それでも聡に勉強を教えていく姿からは、普段のギャルのイメージとは違う迫力があった。
ファミレスでの勉強会は夕暮れまで続いた。
勉強会が終わった時は、聡もゲッソリしていたが、なぜか顔が赤かった。
「亮太、ファミレスでの勉強会だけじゃ、私、追いつけないよ」
「そうだね。今度、愛理のアパートに行って、勉強会を開こうか」
「さすが亮太。わかってるじゃん」
今度は愛理のアパートで勉強会を二人で開くことになった。
愛理は嬉しそうに俺の手を握って微笑んだ。




