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23話 期末考査テスト範囲発表

 マラソン大会も終わり6月も中旬に入り、期末テストの範囲が発表された。

期末テストが終われば夏休みが待っている。



「期末テスト、範囲が広いから嫌なんだよな」



 聡が俺の隣で一人呟く。

聡の成績は中の下だ。

一歩間違うと欠点をもらう可能性がある。

期末テストが嫌いなのも頷ける。


 俺の成績は中の上ぐらいだ。

いつも安定して、それぐらいの点数を取っている。

良くも悪くもなく、普通の点数。

地味男の俺らしい点数だと思う。


 愛理はテスト範囲が発表されてから、少し機嫌が悪い。

難しい顔をして俺を見つめる。



「亮太は期末テスト、余裕みたいじゃん。いいなー、私、今度の期末テストは自信ないや」


「愛理はいつもどれぐらいの点数を取ってるんだ?」


「中の中くらいかな……でも気を抜くと赤点ギリギリになるからヤバいかも」



 恥ずかしそうに顔を赤くしてモジモジと愛理は俯く。

自分の成績が、あまり良くないことを恥ずかしがっているのだろうな。

誰にでも苦手なものがある。


 顔もスタイルも良い美少女ギャルで、家事や料理も完璧にこなすのだから、勉強ぐらい少し苦手があってもいいと思う。



「もう範囲も発表されたんだし、これから集中して範囲を勉強すれば赤点を取ることはないと思うよ。愛理次第だけどさ」


「それはわかってるんだけど……アパートで一人だと、ついウータと遊んじゃうのよね」


「ウータ、可愛いもんな」



 ウータは日に日にヤンチャになっていく。

しかし、その仕草は可愛くて、可愛くて仕方がない。

愛理がウータを遊んでしまう理由もわかる。



「汐音と凛はどうなんだ?」


「あの二人、ギャルなのに点数いいのよ。二人とも頭良くていいな」


「それじゃあ、汐音と凛に教えてもらえば? あの二人なら教えてくれるだろう」


「中間テストの時は教えてももらったけど、教え方がスパルタだから嫌」



 汐音と凛の性格を考えると、スパルタに教えるのも頷ける。

あの二人は、徹底しているからな。

それでも愛理を見捨てずに、教えてくれているだけ優しいと思う。



「そんなこと言ったらダメだよ。教えてくれるだけも嬉しいことだよ」


「うん。そのことは分かってるんだけど……スパルタは嫌じゃん」



 確かに愛理の言い分もわかる。


 すると聡が女子達の輪の中にいる汐音と凛を見ながら口を開く。



「汐音と凛だったら、俺……スパルタされてもいいから教えてほしい」


「汐音と凛の教え方は本当に厳しいよ?」


「それでもいい。教えてほしい」


「聡は藤本委員長に教えてもらえばいいじゃん。彼女秀才なんだから」



 愛理が藤本委員長を指さして、聡に言う。



「そんなこと言っても、藤本委員長、俺のこと相手にしてくれないんだから仕方ないだろう」



 そうか……藤本委員長はまったく聡の相手をしないのか。

意外と芯のあるタイプだしな。

聡では藤本委員長を攻略することは難しいだろう。



「亮太、お前でいいから、俺にテスト範囲の勉強を教えてくれよ」


「亮太はダメ。私が勉強を教えてもらうんだから」


「二人共、俺はそんなにテストの成績も良くないぞ。中の上だからな」


「それでも私達よりもテストの点数いいじゃん」



 確かに聡と愛理よりはテストの点数はいいが、汐音と凛のほうが俺より上だ。

教えてもらうなら、汐音と凛にお願いするほうが効率が良いように思うんだけど。


 女子の輪の中で談笑している汐音と凛と目が合った。

俺は手を振って、二人を自分の席に呼ぶ。


 汐音と凛の二人は女子達の輪から出て来て。俺のほうへと歩いてきた。



「私達に何か用なの?」


「愛理の期末テストについてなんだけど……汐音と凛で教えてあげてくれないか?」


「教えてもいいけど……途中で愛理、泣くんだもん。だから今回はパスしたいわね」


「私も教えている相手に泣かれたら、なんだか悪いことしてるみたいに感じて、感じ悪いじゃん。亮太が教えてあげればいいじゃん。私達はパスしたいよ」



 中間テストの勉強を教えてもらった時、愛理……汐音と凛の前で泣いたのか。

それは気まずいよな。

教えたくなくなる気持ちも理解できる。



「あの……今回は俺も教えてほしいんだけど……」



 聡がそっと手をあげる。


 それを見て汐音と凛が嫌そうな顔をする。



「愛理に教えるのは友達だから仕方がないけど……なぜ、私達が聡の勉強を教えないといけないのよ。聡こそ藤本委員長に教えてもらえばいいじゃん」


「だから相手にされてないんだって」


「それ脈なしじゃん」


「ぐぬぬぬ……はい」



「仕方ないわね……放課後、学校の帰りだったらファミレスで勉強を教えてあげる。そのかわり、ファミレス代金は聡が払うのよ」



「聡が私達に教わるんだから、奢るのは当然じゃん」


「はい。ありがとうございます」



 汐音と凛から勉強を教わることができて良かったな。

聡は顔を赤くして嬉しそうにニッコリと笑っている。



「それじゃあ、俺が愛理の勉強を見るよ。二人共、よろしく頼む」


「わかったわ。今日の放課後にファミレスでね。愛理の担当は亮太がしてよ。もう泣かれるのは嫌だから」


「愛理も亮太に教えてもらって、赤点だけは避けるのよ」


「うん……汐音と凛もありがとう」



 汐音と凛が仕方がないという風に微笑む。

聡は汐音と凛から勉強を教わることになったので、妙に気合が入っていた。

愛理は俺から勉強を教えてもらえることになって、満面の笑みを浮かべた。

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