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21話 愛理と初めての映画

 時には違う場所で待ち合わせをしたいという愛理の要望を聞き入れた俺は、今駅前で愛理を待っている。

待ち合わせ時間30分前、少し早く到着してしまっただろうか。



「お待たせ、亮太」



 愛理は白を基調にした花柄のワンピースを着てきた。

ギャルというよりも清楚な女子のようだ。



「似合ってる?」


「ああ……とても似合ってるよ」



 愛理は嬉しそうにニッコリ笑うと俺の隣に立つ。



「そろそろ行こうか?」


「うん」



 二人で手を繋いで駅前の繁華街へ向かう。

駅前の繁華街は人が多く、手を繋いでいないと離れてしまいそうになる。

しっかりと二人で手を繋いで、人混みの中を通る。


 そしてシアタービルの前に着いた。

一階にはモニターがあり、今上映中の映画の広告が流されている。



「何を見ようか?」


「恋愛映画がいいかも」


「わかった。それじゃあ、これにしよう」



 広告ではファンタジー系恋愛映画と書かれている。

場所はシアタービルの六階となっていた。


 俺達はエレベーターに乗って六階へ向かう。

大勢の人がロビーに座って映画の上映を待っていた。



「結構、人気ありそうだね」


「亮太と観るんだったら何でも楽しいよ」



 二人でチケット発券機の前に行って、料金を支払ってチケットを2枚発行する。

そして一枚を愛理に渡した。



「亮太は映画で何か食べる派?」


「そうだな……ポップコーンは食べるかも」


「それじゃあ、ポップコーンと飲み物を買いに行こうよ」



 二人でフードセンターへ行き、店員にポップコーンとジュース2つを頼む。

そして紙のトレイにポップコーンとジュース2つを乗せてもらって、待合席に座る。



「やっぱり映画といえばポップコーンじゃん。美味しい」


「ああ……ポップコーン美味しいな」



 映画の上映を待っている間にポップコーンを完食してしまった。

上映時間が迫ってきた。店員がチケットの受付を始める。


 俺と愛理はジュースを飲みほして、ポップコーンと一緒にゴミ箱へ捨てる。

そして店員にチケットを受付してもらって、上映する館内へ入った。


チケットを見て指定席に座る。

席は映画館の中央の席で、映画を観るには良い席だ。


 館内が暗くなり、映画が上映されるブザーが鳴る。

幾つも広告が流れていく。

そして映画が始まった。


 愛理を見るとジーっと映画に集中して観ている。

その横顔が美しくて可愛い。


 愛理が無意識に俺の手を握ってくる。

俺はそっと愛理の手を握り返す。


 映画の場面は次々に移り変わっていく。

そしてストーリーは山場へと流れていく。


 愛理を見ると、目から涙を流している。

きれいな涙だと俺は思った。


 俺も映画を観ているが、隣の愛理が気になって物語が頭に入ってこない。

始終、愛理の横顔を眺めて見惚れてしまう。


 愛理が映画に集中しているおかげで、俺の行動を見ていないので助かる。

初めて女子と映画デート。

俺は興奮で映画どころではなかった。


 映画が山場に入った。主人公とヒロインのアクションが展開される。

思わず愛理の手を握っている手に力が入る。

すると愛理も手をギュッと握ってきた。


 迫力のあるシーンが広がる。

思わず息をのむシーンが続く。


 そしてエンディングへ。

愛理の手から力が抜ける。


 映画の上映が終わって館内のライトが点灯された。

俺達は館内を出て、待ち合わせロビーへ出る。



「ちょっとお手洗いに言ってくる」


「私も……」


「待ち合わせはロビーな」


「わかった」



 二人別れて、トイレに向かう。

トイレから出て、待ち合わせロビーで愛理を待つ。

ほどなくロビーに愛理が現れた。

しっかりとメイクが直されている。



「この映画、当たりだった。思わず引き込まれたもん」


「それは良かった。これを選んで良かったよ」


「亮太、あんまり映画に集中していなかったでしょ。私の横顔ばっかり見てたじゃん」



 愛理にバレていないと思っていたのだが、しっかりとバレていたようだ。

だって仕方ないだろう。隣に美少女の愛理が座っているんだから。

映画よりも愛理に目が向いてしまうのは仕方がないことだと俺は思う。



「愛理の横顔がきれいだったから、思わず見惚れていただけだよ」


「そんなこと言われると恥ずかしくなるじゃん」



 俺達がシアタービルを出ると太陽が西に傾いていた。

繁華街には人が多く歩いている。



「これからどこへ行こうか」


「私、ちょっとお腹空いたかも。ファーストフードでいいんじゃん」


「わかった。ファーストフードへ行こう」



 二人で手を繋いでファーストフードへ向かう。

 一階のカウンタ―でハンバーガー、ポテト、飲み物のセットを買って、三階の席に向かう。

窓際のカウンタ―席が開いていたので、二人隣同士でカウンター席に座る。


 窓の外を見ると繁華街の雑踏を歩いていく人々が見える。



「さっきの映画、どうだった? 愛理は好きそうだったけど?」


「面白かったし、恋愛もきちっと入ってたし、アクションもあったし、私は良かったわよ」



 愛理が今日の映画を気に入ってくれたようで良かった。

俺はハンバーガーにかじりつく。

愛理も小さな口でハンバーガーをかじる。



「やっぱり映画が終わった後はファーストフードだね。すっごく落ち着くし」


「そうだな。映画が終わった後って、妙にファーストフード食べたくなる」


「亮太、今日は緊張した? 私は相手が亮太だったからリラックスできたし」


「俺は愛理と初めてのデートだったから緊張した。今はリラックスしてるけど」


「いつも学校で一緒なのに、デートとなると緊張するのは何故かしら?」


「そうだね。そう考えると不思議だね」



 本当に不思議だ。

いつも一緒にいるのにデートと聞くだけで、これほど緊張するとは。

デートということを気にし過ぎているのかもしれない。



「これからプリクラ撮りに行こう。今日の記念に」


「今日の記念にプリクラ……」



 女子と一緒にプリクラなんて撮ったことがない。

とても恥ずかしい気がする。



「私と二人のプリクラ欲しくない?」


「欲しい!」



 その言葉を聞いて愛理はニッコリと笑った。

そして俺達はファーストフード店を出て、ゲームセンターへ向かった。

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