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13話 雨上がりの屋上

 昼前には雨はあがり青空が見えてきた。

昼休憩になり、俺の元へ愛理が歩いてくる。



「雨もあがったね。今日のお弁当、どこで食べようか?」


「雨があがったのなら、やっぱり屋上がいいじゃん。二人っきりになれるし」


「愛理がそういうなら、そうしようか」



 愛理は両手を胸の前で組んで、とても嬉しそうに微笑む。

その笑顔を見れただけで十分だ。



「じゃあ、私、汐音と凛に、今日一緒にお弁当食べられないって言ってくるね」


「ああ……二人には謝っておいてね」


「二人共、怒ったりしないよ。だって昼休憩に二人でお弁当を食べなさいって言ってるのは、汐音と凛じゃん。亮太、気の使い過ぎだよ」



 そうかもしれない。

しかし、汐音と凛が愛理と一緒にお弁当を食べるのを楽しみにしていたら申し訳ないと思った。



「とにかく二人には一緒に食べられないって言っとくから。教室のドアの所で待っていて」



 そう言って愛理は汐音と凛の元へ歩いていった。

俺は席を立ち、教室のドアの所で愛理が来るのを待つ。

すぐに愛理はお弁当袋を二つ持って、俺の元へやってきた。


 二人で教室を出て、三階への階段をのぼり、さらに屋上へ向かう階段をのぼって、表に出る。

屋上はまだ雨が通った跡が残っていて、どこに座っても濡れそうだ。

さて、どこに座ればいいんだろう。


 そんなことを考えていると、愛理がニッコリと笑ってビニールシートを取り出した。



「ジャジャーン、こういうこともあるかと思ってビニールシートを持ってきていたの。これでどこに座ってもお弁当を食べられるね」


「用意がいいね」


「だって、もう梅雨の時期じゃん。雨の用意ぐらいは考えておかないとダメじゃん」



 なるほど確かに梅雨に入る時期だ。

最近では、ゲリラ豪雨もあるからな。


 愛理はご機嫌でビニールシートを屋上に敷いて、その上に座る。

ペタリと座ると、短いスカートからきれいな脚が見えて、ハラハラする。

見えそうで見えないところが……視線を無理やり外す。



「はい。これ亮太のお弁当ね」



 そう言って、少し大きめのお弁当箱を渡してくる。

昨日までのお弁当箱と違う。


「あれ? お弁当箱変った?」


「うん。亮太、私と同じ量だと少ないと思って、お弁当箱を新しく変えたの」


「……ありがとう」



 確かに俺の持っているお弁当箱は愛理が持っているお弁当箱よりも大容量だ。

新しいお弁当箱を用意してくれたことに感激を覚える。



「俺と会っていない時も、俺のことを考えてくれていたんだね。ありがとう」


「女の子は常に大好きな男子のことを考えているもんなんだよ。だから亮太のことを1日中考えてるんだから」



 そこまで愛理に想ってもらっているなんて感激だ。

俺ももっと愛理のことを考えるようにしないといけないな。


 俺もビニールシートに座って、お弁当箱を開いて、お弁当を食べる。

今日もお弁当の中は、色とりどりのおかずでびっしりと埋め尽くされている。


 愛理は本当に料理が上手い。

どのおかずを食べても、どの料理も美味しい。



「美味い。本当に美味しいよ」


「やったね。亮太のその笑顔がみたくて、頑張っちゃうんだよね……エヘヘ」



 二人で料理のおかずの話をしながら、笑顔でお弁当を食べていく。

天気も良くなったし、最高の一時だ。



「そういえば聡って、いつから藤本委員長のことが好きだったの?」


「わからない……今日になっていきなり言ってきたんだけど、随分前から想っていたんじゃないのかな。いきなり好きになった訳じゃないと思うよ」


「亮太は藤本委員長みたいな女子はタイプ?」


「ん……スタイルは抜群で、物静かで、おっとりしているし、男子なら誰でも好みの範疇に入るんじゃないかな」



 それを聞いた愛理が頬を膨らませて、不機嫌を表現する。



「私よりも藤本委員長のほうが好みって言うの? それって許せないじゃん」


「そうじゃないよ。一般的な意見を言っただけで……俺の個人的な意見でいえば愛理のほうが好きだよ。今も愛理と一緒にお弁当を食べられて嬉しいと思ってる」


「本当? 本当に私以外の女子のことを思ったりしない?」


「しない、しない。藤本委員長のことを好きなのは聡であって、俺じゃない。俺は愛理が好きだ」



 思わず恥ずかしい言葉を口走ってしまった。

顔が火照って、赤くなるのがわかる。

言われた愛理も頬を赤くして照れている。



「亮太……好きな女の子の前で、他の女子の話題をしちゃダメなんだよ。関係ないとしても女の子は気になっちゃうんだから」


「でも、今の話題は愛理から振ったよね。俺はそれに答えただけだよ」


「それでもダメなの。私と話をしている時は私だけを見ていてほしいじゃん」



 何か理不尽を感じるが、愛理を不機嫌にさせたくない。

ここは愛理の意見に賛同しておいたほうがいいだろう。



「わかった。何も考えずに藤本委員長の話に乗った俺が悪かったよ。ごめん」


「亮太は藤本委員長よりも私のことがいいんだよね?」


「当たり前じゃないか。俺は愛理に一途だよ。いつでも愛理と一緒にいたいと思ってる」


「キャー……超嬉しい。私も亮太のこと大好き」



 何とか愛理の不機嫌を直すことができて良かった。

もう愛理の前で、他の女子を褒めることはやめておこう。

別に聡のことで、俺のことじゃなかったんだけどな。

女の子にはそういうことは関係ないようだ。


 愛理は上機嫌な笑顔で俺を見る。



「ねえ、亮太……今日の放課後、私のアパートへ遊びに来ない? 子猫のウータも待ってるよ。夕飯も私が作るし。亮太と放課後も一緒にいたいの。お願い」


「わかったよ。今日の放課後は愛理の部屋にお邪魔させていただきます。よろしく」



 それを聞いた愛理は花が咲いたように微笑んだ。

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