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12話 視聴覚室での授業

 次の授業は視聴覚室で行われることになった。

休憩時間の間に教室を移動しなければならない。


 俺は授業の準備を終えて、教科書とノートを持って教室を出ようとすると、教室のドアの所で愛理が俺のことを待っていた。



「視聴覚室へ行くんでしょ。一緒に行けばいいじゃん」


「ああ……一緒に行こう」



 愛理と俺は二人並んで廊下を歩いて視聴覚教室へ向かう。

視聴覚教室では、基本的に座席は自由だ。

俺と愛理は隣り合わせで席に座る。



「やったね。これで授業中も亮太と一緒だね」


「そうだね。愛理の隣で授業を受けるのは初めてだな」


「うん。だから今日はとても楽しみ」


「静かにしてるんだよ。先生に注意されたら問題が大きくなるから」


「私だってそれぐらいわかってるわよ」



 授業のチャイムが鳴って、専門科目の先生が視聴覚教室へ入ってくる。

その後ろにプリントを大量にもった藤本委員長も入ってくる。


 そして藤本委員長は前列にプリントを配布して、プリントを後ろの生徒達に回していく。

そして最前列に座席に藤本委員長が座った。



「それではこれから授業を始める。今日はプリントを見ながら、皆にはビデオを見てもらう」



 視聴覚教室のモニターに映像が流れ、プリントの説明をしていく。

俺達はプリントと映像を見て、プリントに要点を書き込んでいくだけの簡単な授業だ。

愛理は俺の袖を引っ張り、ニッコリと微笑む。



「簡単な授業で良かったね。これだと亮太と少し話しながら、授業も受けられるので楽じゃん」


「でも、あの先生、曲者だから、後からプリントのテストをする可能性もあるから、注意しておかないと、後から居残り授業を受けることになるかもしれないぞ」


「わかってるわよ。その辺はきちんと要点を押えておくもん」



 そう言って愛理は可愛い文字でノートの要点を書きこんでいく。

意外と愛理は授業中は大人しく、授業に集中するタイプのようだ。


 ノートを書き終えると、俺の左手に、右手をそっと乗せてくる。

それだけで、俺は頭が真っ白になり、意識の全てを愛理に持って行かれる。

このままでは、居残りになるのは俺のほうかもしれない。


 頭を切り替えて、俺は真剣にプリントに要点を書きこむ。

それを面白そうに愛理が覗いてくる。

そんな愛理がとても可愛く見える。


 愛理が俺の手を握ってくる。

初めて俺と愛理は手を握りあった。

それだけで顔が赤くなるのがわかる。


 愛理も頬を赤く染めている。


 モニターの映像が終わり、専門科目の先生の説明に移る。

しかし、俺には先生が何を言っているのか、半分以上わからない。

意識が愛理と手を握っていることに集中していて、授業に身がはいらない。



「説明は以上だ。これから今習った部分のテストを行う。きちんと聞いていればわかるはずだ」



 その言葉を聞いて我に返る。

急いでプリントを見直して、頭の中に入れ直す。

愛理も真剣にプリントを見直していた。


 席の前列からテスト用紙が配られてくる。



「時間は20分だ。簡単な問題だから、できない者はいないと思う。できない者がいた時には居残りで、もう一度ビデオを見てもらう」



 テストが始まった。

なんとか全問を書き終えたが、回答が合っているかどうかわからない。


 藤本委員長がテストを回収して、専門科目の先生の元へテスト用紙を持って行く。

その場で専門科目の先生は、皆のテスト用紙に点数をつけていく。


 俺と愛理はギリギリセーフの点数で居残りを免れた。


 専門科目の先生が大きな声を張り上げる。



「それでは居残りは沢尻だけだな。沢尻、お前は残ってビデオをもう一度見ろ。藤本委員長、悪いが沢尻の居残りに付き合ってやってくれ」


「はい、わかりました」



 聡の奴、藤本委員長と二人っきりになりたいから、知ってて悪い点数を取ったんだろう。

聡は嬉しいかもしれないが、藤本委員長からすると迷惑な話だぞ。


 聡を見ていると、聡は静かに亮太にサムズアップしている。

完全な確信犯だ。


 愛理は不思議そうな顔をして聡を見ている。



「聡、居残りになったのに、なぜあんなに嬉しそうなの? どうしてサムズアップしてるの?」


「それはだな……聡が藤本委員長を気に入っているからだよ」


「そうだったんだー。面白そう。これは汐音と凛にも教えなくちゃ」



 聡よ、すまない。思わず白状してしまった。

しかし、お前が居残りなんて卑怯な手段を使ったのがいけないんだからな。悪く思うなよ。



「このことは汐音と凛には内緒にしてくれないか。俺も秘密にするように聡から頼まれているんだ」


「えー、こんな面白いこと教えちゃダメなの」


「俺と二人だけの秘密にしてほしい。俺も約束を破りたくない」


「亮太がそういうなら、黙ってる」



 授業が終わり、俺と愛理は二人で手を繋いで視聴覚室を出た。

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