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10話 夕焼けの公園

「私達は駅前をショッピングして適当に帰るわ」


「それじゃあ、俺も汐音と凛と一緒に行こうかな?」


「好きにすればいいじゃん。その代わりあまり相手しないからね」


 汐音と凛と聡の三人はそう言って駅前の雑踏の中に消えていった。



「それじゃあ、俺達は歩いて帰ろうか」


「うん……」



 愛理が俺の隣に並んで歩く。

雑踏の中を歩いているので、いつもより愛理との距離が近い。

もう二人の手を当たる距離だ。


 俺は自分の顔が赤くなるのがわかる。

こんな時、手を握ったほうがいいのだろうか。


 愛理を見ると、愛理の頬もほんのりと赤くなっている。

愛理も俺と同じことを考えているのかもしれない。


 夕焼けの日差しがビル街へ落ちていく。

段々と街が夕陽で真っ赤に染まる。



「今日は皆でスイーツを食べに行けて良かったー。また食べにいきたい」


「今度、愛理が食べに行きたい時に一緒に行こう。俺もあの店を気に入ったよ」


「だって私達の今、一押しの店なんだよ。美味しいに決まってるじゃん」


「そうなんだ……」



 そんな美味しい店に連れてきてもらっていたんだ。

今度、俺も愛理をどこか美味しい店に連れていかないとな。

でも、俺には美味しい店を見つけることなんてできないぞ。



「今度、美味しい店を見つけてくるから、それまで待っててね」


「うん……あんまり気にしないでね。美味しいお店は私達が探してくればいいんだから」



 確かに女子のアンテナには敵わない。

ここは愛理に甘えさせてもらおう。


 愛理と二人で並んで帰る。

二人だけの時間がゆっくりと流れていく。


 甘い香りが愛理から流れてくる。

いつ嗅いでも優しい香りだ。

とても優しくて落ち着く香り。


 駅前を遠く過ぎて愛理のアパートの近くまで歩いてきた。

そしていつもの公園に立ち寄る。


 屋根があるベンチに座って、二人で夕焼けを眺める。

とても赤くてきれいな夕焼け。



「初めて亮太と会った時、私、傘持っていなくて、ブレザーまでぐっしょり濡れて、気分も落ち込んでいて、亮太を見つけた時、とても嬉しかったんだよ」


「……そうなんだ」


「そしたら、亮太が子猫を抱っこして、優しく撫でている姿を見て、亮太って優しいんだって思ったの」


「子猫を雨の中に置いて帰ることができなかったからね」


「そこが亮太の優しい所なんだよ。そこに私、キュンと来ちゃったんだもん」



 そんな所で愛理の好感度を上げていたとは思ってもみなかった。

俺としては嬉しい誤算だ。



「子猫も抱っこすると、すぐ懐いてくれたし、超可愛かったし、心が明るくなったよ」


「あの日は土砂降りで、心まで冷え込みそうだったからな」


「私に子猫と傘を押し付けて、恰好つけて、土砂降りの中を帰っちゃうんだから」



 あの時は、何を話していいのかわからなかったし、愛理とも話したことがなかったし。

何を話していいのかわからずにパニックになって逃げだしたなんて言えない。


「その時、亮太って優しいんだなって思ったの。それから亮太のことが気になって、授業中も時々、亮太のことを覗いていたんだよ。気づかなかった?」



 そんなの気づくはずがない。

岡島高校でも美少女ギャルで有名な愛理が俺のことを気にしていたなんて夢にも思っていなかった。

地味男の俺が女子に気にされるはずがないと思い込んでいたから。



「できれば亮太から話しかけてくれないかなって、いつも思ってた。でも亮太って女子と全く話しないんだもん。もう話できないかと思っちゃったじゃん」



 女子と話をするのは緊張するんだよ。

女子っていつも集団でいるし、何を話していいかもわからないし。



「亮太から告白された時、とても嬉しかった。だから教室でOKしちゃった」


「あの時は驚いたよ。一瞬何が起こったのかわからなかった」


「亮太、呆然としてたもんね」



 あの時はパニックで何も考えられなかった。



「今でも、あの時、亮太からの告白をOKしたこと良かったと思ってる。だって楽しいもん」



 それは俺も同じ気持ちだ。

愛理と付き合い始めてから、まだ2日目だが、本当に毎日が楽しい。


 俺はベンチから立ち上がり、公園の自動販売機でジュースを二本買って、一本を愛理に渡す。そして二人でベンチに座ってジュースを飲む。



「ジュースが冷えていて美味しい。ありがとう亮太」


「これぐらいはお安い御用だよ」


「今度、アパートへ遊びに来て。子猫のウータも亮太のことを待ってるから」


「あれから1カ月以上経ってるのか。大きくなってるだろうな」


「とても可愛くなってるんだから」



 そして愛理は嬉しそうに笑う。

俺も愛理の笑顔を見て嬉しくなって笑顔になる。



「今度、愛理のアパートへ遊びに行かせてもらうよ」


「その時には、夕食を作ってあげるから、家には夕食は友達の家で食べるって言っておいてね」



 おおー……愛理の夕食をご馳走してもらえるのか。

それは是非、愛理のアパートに遊びにいかないとな。

その時が今から楽しみだ。

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