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37話 モブオ、千鳥足

すいません、ちょっと短いです

 今日の魔石魔物狩りに、シーたちのパーティがいなかった。

 チョロスさんが言うには、今日も合流して狩りをする予定だったらしい。


 しかしシーたちは来ておらず、約束の時間はすでに過ぎていた。

 もしかするとモブオさんと同じように、ただ寝坊しているだけの可能性もある。

 モブオさんは昨日の酒が影響している様子だ。

 だが……


「……」


 妙な胸騒ぎがする。

 確かに寝坊など、そういったトラブルで遅れることはよくあることだ。

 しかし早朝、僕はロイと会っている。他のヤツとも会っている。


 酔っているなどの様子はなかった。

 だから仮に二度寝したとしても、誰かしらは起きたはずだ。

 だと言うのに……


「……あの、今日はどうしますか?」

「ん~~、取りあえずモブオ待ちかな。アイツが来たら始めよう」


「……はい」


 


        ◇   ◇   ◇   ◇   ◇




 30分ほど経過した。

 しかしここに居るのは僕とグレランのメンバー、そしてリティだけ。

 彼女は今日も見学に来ていた。少し離れた場所でじっとこちらを窺っている。

 シーとモブオさんはまだ来ていない。


「ん~~、さすがに昨日は潰し過ぎたか? こりゃ、起こしに行くしかねえか」

「ですね、誰かひとっ走りして――」


「スイマセンッス! 急いで起きたんスけど、ちょっと遅れちゃって……」


 モブオさんが走ってやってきた。

 まだ昨日の酒が抜け切っていないのか、少々足取りが怪しい。


「ホントにスイマセンッス。って、あれ? 今日はスカーレットのところはいないんスね。やっぱ来るときに見かけたのは、スカーレットのところのパーティだったのかな?」

「――えっ? モブオさん、シー、シオンさんのパーティを見たのですか?」


「んん? ああ、来る途中に見かけたぞ。あっちはハズレルートの方だったな。あっちに行くから見間違えかと思ってたけど、こっちに居ないってことはあっちに行ったってことか? あれ? でも、今日も一緒に狩りをする予定だったはずじゃ……? あれ?」

「――っ!?」


 不思議そうに首を傾げながらそう言ったモブオさん。

 彼の瞳に嘘は見えない。

 当然、見間違えという可能性もあるかもしれないが――


「リティっ、一緒に来て欲しい」

「ん、わかった」


「すいませんっ、僕、ちょっと行ってきます」

「え? アルド? え? どうしたんだよ! ――うっぷ!?」


 僕は全力で駆けた。

 モブオさんが吐き出しそうな声で呼び止めてきたが、それを振り切る。

 すれ違う冒険者たちがギョッとした顔をする。


「……リティ、僕とパーティを組んで欲しい。ハズレルートに入るには誰かとパーティを組んでいないといけないから、一人じゃ入れないかもしれない」

「ん、了解してラジャ」


 僕の唐突なお願いに、リティは何でもないように了承してくれた。

 詳しい訳など一切訊かず、彼女は僕とパーティを組んだ。


「え? 閃迅?」

「おい、閃迅が走ってんぞ!」

「閃迅だって?」


 地下迷宮ダンジョンを出て、もう一つの入り口、ハズレルートの方へと向かう途中、走っているリティが珍しいのか彼女のことを注目する者が大勢いた。

 あまり目立つことはしたくないが、いまはそんなことを気にしている場合ではない。僕たちはそのまま走り続けた。


 もう一つの入り口へとすぐに辿り着く。

 僕は入り口を守っている門番の男に、ステータスプレートを見せながらシーのことを訊ねる。


「すいません、二人パーティです。入らせてもらいます。あと、赤い髪の女性が居たパーティは来ましたか?」 

「んん? そういった情報を明かすことは禁じられてんだよなぁ……」

「ん、すぐに言う。迅く」


「――っ!? 閃迅!? えっと、ちょっと前に通りました。赤い髪の……えっとスカーレットだっけ? そんな二つ名の女冒険者と、あと男の冒険者5人。6人パーティで中に入って行きました」


 リティに凄まれた門番の男は慌てて情報を明かした。

 剣を抜いていないのに、刃を突きつけたような重圧だ。

 

「ん、ありがとう」

「ありがとうございます。これを」

「――えっ!? ええ??」

 

 僕はその門番の男に、情報料として金貨一枚を渡した。

 凄まれて青ざめていた門番の男が、手渡された金貨を見て表情を輝かせる。

 

「リティ、行こう」

「ん、たぶん……こっち」


「……ありがとう、リティ」


 彼女はすぐに案内役を買って出てくれた。

 【索敵】を持っていない僕では、シーを探すのに時間が掛かり過ぎる。 

 リティは状況の流れからシーを探していることを察し、何も聞かずに協力してくれていた。


「本当に、ありがとう」

「んっ」


 先を走るリティを追う。

 彼女の毛先の方だけ束ねられた銀色の髪が、まるで尻尾のように揺れている。

 

「つぎ、こっち」

「うん」


 僕はその銀色に導かれるまま、悪路で有名なハズレルートを疾走したのだった。


読んでいただきありがとうございます。

よろしければ感想やご質問などいただけましたら嬉しいです。


誤字脱字ありましたら、教えていただけましたらありがたいです。

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