12話 あの人のように……
遅れました;
「たああああ! WS”ヘリオン”!」
「わっ、アルド君!?」
「ん、いい踏み込み」
芋虫型の魔物が、十文字に切り裂かれて黒い霧となって霧散する。
地面に転がる黒い魔石。
「よしっ」
いままでにない手応えに、僕は剣を強く握る。
「アルド君、今日は絶好調だねえ」
「はいっ」
今日も僕たちは魔石を集めに来ていた。
昨晩は酔っ払って酒場を早々に後にしたリティだが、しっかりと眠ったようで二日酔いなどの影響はない様子。いつも通り僕を迎えに来ていた。
そして魔石を求めて魔物を探し、倒した魔物はいまので4体目。
僕たちは順調に狩りを進めていた。そして――
( いける、いけるぞっ )
僕はいま、かつてないほどの手応えを感じていた。
非力な片手剣WSであっても、しっかりと深く踏み込んで放てば一撃で倒し切ることができた。
WSを当てるように放つのではなく、WSを深く捩じ込むように放つのだ。
「……アル、何かあったの? 今日の戦い方は何か……違う」
「うん、実は――」
僕は、昨晩酒場で聞いたある話をリティたちに話した。
勇者ジンナイは、WSが一切使えないから、それを補うためにある工夫をしていたらしい。
その工夫とは、槍を扱っているのに接近戦を挑み、一足で詰めることができる間合いに身を置いて、必殺の瞬間を逃さないというものだった。
要は、槍のリーチを生かすのではなく、槍の貫通力を重視した戦い方だ。
それを聞いて僕は閃いた。
肩が魔物に触れそうなぐらい接近して、そこからWSを捩じ込むように放てば良いのだと。
酒場を出た後、僕はそれを試してみたくてウズウズしていた。
そしてそれがいま、解放されていた。
「……ねえ、アルド君。そこまで間合いを詰めるというか……あんなに魔物に近寄るの怖くない? そこまで強い相手じゃないけど、結構危ないよね? ワタシだったら怖いから無理かな~って」
心配そうに訊ねてくるニュイさん。
「あ、はい。……僕にはこれがありますから」
僕は自分のステータスプレートを出現させ、それをニュイさんに見せる。
ステータス
名前 アルド
【職業】冒険者
【レベル】11
【SP】176/211
【MP】92/109
【STR】27
【DEX】26
【VIT】47
【AGI】30
【INT】22
【MND】34
【 】
【固有能力】【蛮勇】【駆技】【耐強】【耐心】【僥倖】【不幸】【死心】
【魔法】雷系 風系 火系 水系
【EX】毒感知(大)耐毒(絶)
【パーティ】リティ68 ニュイ70
――――――――――――――――――――――――
「これです、【蛮勇】があるので怖くないのです」
「……なるほど、ね。聞いてはいたけど、そこまでの効果なんだ」
「はい、これがあるので……平気です。だからどんなことでもできます」
【蛮勇】の効果は彼女たちに伝えてあった。
納得しつつも驚きの表情を見せるニュイさん。
彼女を驚かせた【蛮勇】の効果は、何かに立ち向かうとき、勇気という感情が枯れることなく湧いてくるだ。
だからどんな魔物が相手であろうと、いけるという勇気が湧いてくる。
心を強く持てる限り、怯んだり竦むことは決してない。
ある意味、勇者とも言えるかもしれない。
どんな魔物が相手だろうと臆することなく、勇猛に戦うことができるのだから。
「アル、命を大事にしないと、ダメ」
「……うん、わかってるよ」
リティにやんわりと注意される。彼女の指摘はとても正しい。
【蛮勇】には大きな欠点がある。
命を失うかもしれないといった、そういった危機感が限りなく希薄になるのだ。
この【固有能力】を持っている者は、勇猛ではあるが無謀になる。
ある人は、恐ろしいほど無謀になれる【固有能力】だと言っていた。
兵士や騎士といった、命を賭して誰かを守る職業なら良いかもしれない。
だが僕たちは冒険者。命あっての物種とも言える冒険者だ。
リティの言っていることはとても正しい。
彼女の赤い紅茶色の瞳が、真っ直ぐ僕を諫めている。
( そうだよな、そうだよ、な…… )
ふと、あることを思い出した。
この【蛮勇】が烙印であったことを、思い出した。
僕はかつて、命をもっとも大事にしなくてはならない存在だった。
初代勇者の子孫、尊き血族、王族の第一王子だった。
しかしこの【蛮勇】は、王族としての資質を大きく欠くモノだ。
『命を大事にできない王族など害でしかない』と指摘されたこともある。
「ん? アル、どうしたの? ボ~っとして」
「ううん、何でもないよ。次、行こうか」
「ん、分かった。…………たぶんあっちに居る」
昔のことを少し思い出していたが、僕はそれを振り払うように次の獲物へと向かった。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
「よし、14個」
「ん、頑張った」
今日は昨日に比べて魔石を多く集めることができた。
戦闘も思い通り進み、自分的にはとても充実した一日。
そんな日の帰り道、ニュイさんが僕に訊ねてくる。
「ねえ、アルド君。本当に大丈夫? 何度かイイのもらっていたけど……」
「はい、平気ですよ。ほら、この小型盾があるので、回復魔法を掛けてもらうほどの怪我はしてません」
僕は、心配してくれているニュイさんを安心させるため、特注品のガーダーを掲げて見せた。
WSを深く捩じ込むため、今日はいつもより前に出て戦闘していた。
いつもより前に出ているのだ。当然、被弾することが増え、何度か反撃にあって吹き飛ばされかけた。
しかし僕は、小手に付けているガーダーでそれらを凌ぎ続けた。
この小手を僕に与えてくれたのは曽祖父。
その曽祖父は、小型盾に使われている板を世界樹の眷属の木だと言っていた。
滅多に出回らない素材らしく、鋼よりも硬いのにとても軽く、しかも弾性に優れているのだとか。
だから見た目以上の効果があり、心配されるほどの怪我は負っていなかった。
それに、僕には【耐強】がある。
イワオトコの魔石魔物ならともかく、大型でない魔物が相手なら問題ない。
あまり自慢にならないが、身体だけは本当に丈夫だ。
「そう、それなら良いんだけど……。でも痛かったらちゃんと言ってね、魔法で癒やすから」
「はい、お気遣い、ありがとうございます」
ニュイさんは本当に優しい。
今日はずっと僕のことを気に掛けてくれていた。
「アル、それじゃあ、また明日」
「うん、また明日リティ」
ダンジョンの出口で彼女たちと別れる。
今日は本当に充実していた。
まだまだフォローしてもらっているところはあるが、今日は自分の力だけで倒すことが多かった。
そう、リティに頼らなくても……
◇ ◇ ◇ ◇ ◇
新しい戦い方を得てから三日が経過した。
この三日間、僕はリティたちと毎日魔石集めをしていた。
そして四日目の朝――
「よう、今日はオレたちと一緒だ。魔石魔物狩りに行くぞ」
「え?」
「何だよ、お前たちが集めた魔石だろ? だったら参加する権利があるさ」
僕は、ガレオスさんと、モミジ組の人たちとアライアンスを組むことになった。
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あと、誤字脱字も……




