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見習い薬師少女の日常

薬師の見習いとなった少女の一日を紹介するお話です

私はララ。薬師見習い。年は十二か三かな。森の中にある素敵なおうちでお師匠さんと二人で暮らしているの。今日は私の一日を皆にも教えてあげるね。

 

 「お師匠さん朝ですよ。起きてください」

 

 私の一日はお師匠さんを起こすところから始まる。お師匠さんは夜遅くまで起きているから朝が苦手なんだ。なかなか起きないけど、諦めないでお布団をゆさゆさ揺するとお師匠さんは目を開けてくれる。

 

 「おはようララ。今日もよい朝だな」

 

 大きなあくびをしながら私の頭を撫でるお師匠さん。見た目はきれいなお姉さんなんだけど、もうずっと昔から生きているんだって。1回だけ何歳なの?って聞いたことがある。その時は怒られたなぁ。

 

 「朝食にしよう」

 

 お師匠さんは着替えるとキッチンに行って朝ごはんを作る。私もちゃんとお手伝いするよ。お師匠さんは朝ごはんを食べるときと食べないときがある。食べないときは私の分を作ってくれて「うまいか?」と聞きながらコーヒーという黒色の液体を飲む。お師匠さんのごはんはおいしいけれど、コーヒーはまずい。コお師匠さんからもらって飲んだことがあるけれど、とても苦かった。ホットミルクが一番いいや。

 

 「それでは始めよう」

 「よろしくお願いします!」

 

 ごはんを食べた後、午前中のうちの半分の時間は薬師になるためのお勉強だ。お師匠さんに教えてもらうことを聞き漏らさないように頑張る。時々うとうとするけど、そんなときには質問が飛んでくるので眠気が飛んでいく。

 

 今日は今まで習ったことを復習するテストだった。お師匠さんが書いた問題は読みやすい。私もこんな風に書けるようにならないとなぁ。

 

 「ふむ、よく解けているな」

 「えへっ、ありがとうございます」

 

 やったぁー!ちゃんと出来た。お師匠さんが誉めてくれたのが嬉しい。

 

 「六問目の咳を止める薬だが、最後にプティラビットの角を入れるのも忘れてなかったな。えらいぞ」

 

 「一番のポイントですもん。覚えてますよ」

 

 へへっと胸を張るとお師匠さんは私にテストを返した。

 

 「たが油断はならないぞ。三問目。腹痛を止めるのはアメル草とトロスイ草ではない。アメル草とトロスイ花の蜜を使う。おしかったな」

 

 ニヤリと笑うお師匠さんを前にして私は慌ててテストを見返す。そこ以外は全部あってた。悔しい。

 

 「こ、今度は絶対、全部正解します」

 「その意気だ」

 

 お師匠さんとのお勉強が終わると、残りの半分の午前中はお店のお手伝い。お師匠さんのお薬を皆が買いに来たら、お菓子とお茶を出すのが私のお仕事。たまにお師匠さんからお薬を取って来ることも頼まれるんだ。

 

 「やぁ、ララちゃん。元気かい?」

 

 「はい!エンゾおじさん」

 

 このおじさんはエンゾおじさんだ。よくお師匠さんのお薬を買いに来る。甘いお菓子が好きだって知ってるから少しだけ多目におまけした。お師匠さんからも言われたからね。上客は丁重にもてなせって。間違ってないよね?

 

 「ちょうど良かった。ララ、手伝ってくれ」

 「はい!エンゾおじさん、ちょっと待っててくださいね」

 

 お師匠さんの行き先はたくさんの引き出しがついた棚の前だ。ここにお薬がしまってあるの。危ないのもあるから教えてもらってないところは開けちゃダメなんだ。

 

 「ここが咳止め、ここが頭痛薬。ここが腹痛の薬だ。分かるか?」

 

 お師匠さんがどこになんのお薬があるか教えてくれた。棚の上の方は私の身長よりもずいぶん高いとこにある。背伸びをしてなるべく近くで見る。

 

 「頑張って覚えます」

 「少しずつ覚えていこう」

 

 引き出しはたくさんある。お師匠さんは迷うことなく引き出しを開ける。私も頑張って覚えなきゃ。用事がすんだお師匠さんが降り返って笑う。

 

 「エンゾのところに戻ろう」

 「はい!」

 

 エンゾおじさんのところに戻るとお菓子が全部なくなっていた。やっぱりエンゾおじさんは甘いお菓子が大好きなんだ。私がお師匠さんを見上げるとお師匠さんと目があった。

 

 「菓子の補充をしてくれるか?」

 「分かりました!」

 

 お師匠さんも私と同じこと思ったのかな。ちょっと嬉しくなる。お菓子を盛ってきてお皿に足すと、エンゾおじさんの手が伸びた。

 

 「そんなに食べるからそのような腹になるのだ」

 「いえね、甘いものがなくては生きていけませぬよ」

 

 お師匠さんは呆れたようにエンゾおじさんに言った。エンゾおじさんのお腹はぽっこりしてるのだ。

 

 「今回の薬はこれで間違いないか?」

 「ええ、ありがとうございます。これでまた安心して暮らせます」

 「本当は薬など使うことがないのがいいのだがな」

 

 エンゾおじさんちでは、お師匠さんのお薬をお家にしまっておいて、いざという時に使うんだって。前にそれでずいぶん助かったんだってお話を聞いた。エンゾおじさんの他にもそうしている人はたくさんいるんだ。

 

 やっぱりお師匠さんはすごい。だから、皆お師匠さんには頭が上がらないってエンゾおじさんが言ってた。

 

 エンゾおじさんを見送って、何人かのお客さんにお薬を渡したらお昼になった。お昼ご飯はお師匠さんと一緒に食べることもあるし、一人で食べることもある。お店が忙しいと先に食べてと言われるんだ。今日もお昼にお客さんが来たから先に食べててと言われた。

 

 お昼は作り置きをしていて食べることが多い。いっぱいお客さんが来ると作る時間がないからだ。作り置きのスープを注ぐけど、お師匠さんはこれだけで足りるかな?…そうだ!

 

 お師匠さんのためにご飯を作ろう。作るのは忙しくったって簡単に食べられるサンドイッチだ。まずはパンを用意してと…。

 

 「何をしている?」

 

 良かった、間に合った。お師匠さんが来たのは、ちょうど盛り付けをしていた時だ。間に合って良かった。

 

 「スープだけじゃ足りないと思ってサンドイッチを作りました」

 

 喜んでくれるかなとお師匠さんを見るとお師匠さんは困ったような顔をした。

 

 「そうか、ララも成長期だからな。明日からはもっと用意をしておこう。すまなかったな」

 「ち、違います!お師匠さんに食べてもらおうと思って」

 「私に?…そうか、いただこう。ララもまだ食べていないんだろう?一緒に食べよう」

 

 サンドイッチと私を見比べたお師匠さんはにっこりと笑った。よっし!喜んでもらえた。

 

 「片付けは私がやろう。外に行くなら気を付けるんだぞ」

 「はーい!」

 

 午後は夕方までは自由に過ごしていい時間だ。お絵描きしてもいいし、お昼寝してもいいし、本を読んでもいいけど、私が一番好きなのは外を探索すること。今日は天気もいいし気分は最高だ。森の中を探索しながら、お薬の材料になりそうなものを探す。

 

 「プティラビットだ」

 

 森の中にある開けた場所にプティラビット達がいるのを見つけた。プティラビットは白いモコモコの動物で耳が長い。目と目の間らへんから角が出ているんだけど、これが色んなお薬の材料になる。

 

 「プティラビットは角が生え変わって大人になればその分大きな角を持ってるんだっけ」

 

 お師匠さんに教えてもらったことを思い出す。近くに抜けた角がないか探してみることにした。

 

 「誰だ!」

 

 鋭い声が自分に向けられたものだと分かるのに少し時間がかかった。振り替えると私と同じくらいの年の男の子がナイフを構えていた。

 

 「あなた誰?」

 「俺はレオ。町から来た。お前は初めて見る顔だな。どこから来た」

 「私はララ。お師匠さんのお家から来たの」

 「お師匠さん?」

 「ヴァレリー・フォード・ナタリエル・ヴィヴィーロウお師匠さんだよ」

 「げっ!じゃあお前が魔女の弟子かよ!?スゲーな!」 

 

 お師匠さんの名前を言うとレオ君はビックリした。ナイフを避けてくれた変わりに手を握られてぶんぶんと振り回されて私も驚く。

 

 お師匠さんは町の人達から先生や魔女として慕われてるんだって。お師匠さんの作るお薬がすごく効くから皆お師匠さんを尊敬してるみたい。

 

 「俺はプティラビットを取りに来たんだけどお前もか?」

 「うん、角がいるの」

 「角?薬の材料なのか?肉はいるのか?」

 「そう。肉はあまりいらない。私とお師匠さんのがあればいい」

 「なら、一緒に取りに行こうぜ。一人より二人の方がいいだろ?」

 「うん!」

 

 誰かと一緒に採集するのはお師匠さんの他にしたことない。嬉しくなって返事をするとレオ君はにかっと笑った。

 

 「じゃあ、いこうぜ!」

 

 私とレオ君は十分なくらいのプティラビットを狩った。ちょっとの時間だったけどレオ君と仲良くなったよ。でも今日は町の入り口でバイバイだ。

 

 「今日はありがとな!じゃあまたな!」

 「ありがとう。絶対また行こうね!」

 「おう!」

 

 お師匠さんのお家に戻るといいにおいがしてきた。

 

 「ララ帰ったのか。今日は遅かったな。大丈夫か?」

 

 キッチンでお料理していたお師匠さんが私を上から下まで見る。怪我をしていないか確認するように。時計を見るとお師匠さんに言われた門限を過ぎてしまっているのに気づいた。

 

 「平気です!今日はお友達と一緒だったから…。遅くなってごめんなさい」

 「いや、いいんだ。ララが元気ならば問題ない。それより友が出来たのか。夕食をとりながら話してくれるか」

 「はい!」

 

 お師匠さんがお料理をしている間に、私はプティラビットの角をしまった。

 

 そうして夜ごはんになり、私が今日あったことをお師匠さんにお話しすると、お師匠さんは楽しそうに話を聞いてくれた。

 

 「そうか。楽しく過ごせたようで何よりだ」

 「はい、楽しかったです!」

 「友は何よりも大事なものだ。ララも友が出来たなら大事にするんだぞ」

 「もちろんです!」

 

 お師匠さんはふっと笑ってお片付けを始める。私もお手伝いをした。今日はとても楽しかったな。お友達も出来たし。明日もお勉強を頑張って、またレオ君と森を探索できたらいいな。そんなことを考えながら、私は寝るための準備をした。

 

 「では、おやすみ。ララ」

 「おやすみなさい、お師匠さん」

 

 お師匠さんとご挨拶をして私はベットに潜り込む。いっぱい遊んだからかすぐに眠りに落ちた。

 

 こうして、私の一日は終わる。明日からも楽しく出来たらいいな!

 

 


 

 

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