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そこは本で囲まれた部屋。たくさんの背が高い白い本棚に囲まれ、床にも無数の本が散らばっている。そんな部屋なのに狭苦しい印象を与えないのは、単純に部屋が広いからだろう。
本棚からかろうじて見える壁の色は白。床も白。白色だらけの部屋だ。だから、無造作に散らばる本の背表紙がとてもきれいに映える。
赤色、青色、緑色、黄色、桃色、茶色、単色、複数色、色あせたもの、革表紙、紙表紙、紙のカバー、布のカバー、カバーがないもの。新書、古書、中にはA4の紙をクリップで留めただけの紙の束。
思い思いにそこに散らばる本のコントラストがきれい。そんな場所でただ一人、本を読んでいる者がいた。今、まさに読み終えた本をそこに積み重ねた彼だ。いや彼女か……。
少年のような少女のような老男のような老女のような、男のような女のような大人のような子供のような、あるいはただの者がそこにいた。
そいつは床に散らばる本を一瞥する。様々なジャンル本がそこにある。恋愛だったり、アクションだったり、推理だったり、ホラーだったり、ミステリーだったり、エッセイだったり、歴史だったり、参考書だったり、絵本だったり。読み尽くしてしまったものたちを哀れむような一瞥だった。
そいつは本棚に向かう。読み尽くした本達を無造作に床に重ねる。そこにはもう用がないとでも言うように。
全てを取り出した本棚の奥。そいつはそこにまだ読んでいない本があるのに気がついた。そいつは本を手に取る。
それは透明なガラスのような板で出来た片表紙の本だった。そいつはページを開いてにっこり笑う。
「次は君の物語を見せてもらうね。」
これでおしまいです
読んでいただきありがとうございました!