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Confcito  作者: 高月怜
1/3

1.あめの音

“ザーッ”


その音は耳に残る“あめ”の音。


“ザーッ”


そして今、自分に打ち付ける“雨”の音は耳にこびりついた。いつから降りだしたのか分からない雨は冷たく痛い。もう体を動かすのすら億劫だ。思わず、ため息を吐いて空を見上げたら綺麗に輝く星が見える。その事にため息を追加してノロノロと駅から家までの路地を歩いていく。


立ち止まったのはただの偶然ー


いつも仕事帰りに通るその道に灯りがあることは少ない。下を向いて歩いていた自分の目に止まったのは街灯とは別に伸びた灯り。その灯りは柔らかく、そしてまるで自分には降り注ぐ雲の切れ間にもたらされた陽だまりのように見えた。その店の前で足を止めて窓を見やって目を見開く。


その窓に映る自分の全身は“酷く濡れていた”


今にも泣き出しそうな顔をした自分の全身は降り注ぐ雨によって濡れている。ポタポタと髪から滴る雫が自分の頬を伝って地面に落ちる。


“今日は雨なんて降っていないのに……”


そう頭では分かるのに降り続ける雨に疲れて濡れて、今にも押し潰されそうな自分の姿。それが正しいものだと疑いもしなかった。隠して、隠して……隠して。


“キィ-ッ”


訳もく、込み上げる想いに押し潰されそうになった瞬間。その店の扉は開いた。


「いらっしゃいませ。お客様」


今にも叫び出しそうな言葉と想いに口に手を当ててガタガタと震えていた自分はそこに立つ男性に目を見開く。その顔は逆光になって見えないが、エプロンをつけた青年が優しい笑みを自分に向けてくれているのが何故か分かった。


「ああ……」


その姿を目にした瞬間、瞬きの後に涙が零れて頬を伝う。その後の言葉は声にならなかった。


でもー


「ようこそ“Confcito”へ」


扉が開いて店の柔らかな光が自分に当たる。その言葉を聞いた時、誰にも見えない自分に降り注ぐ雨がようやく少し和らいだ気がした。普段なら入りもしないだろうその店に足が動く。


そして……


“カラン”


入店の合図の鈴が鳴り、女性がその店に足を踏み入れた後にその通りからその店は姿を消した。

いつもお読み頂きましてありがとうございます。誤字・脱字がありましたら申し訳ありません。少しでも貴方に降り注ぐ雨の傘になりますように。

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