小説を書きたいと相談された
先日の深夜未明である。
栄養ドリンク片手に、ひいひい言いながら仕事をしつつ、小説の更新分を描いていた私の下に、こんな相談がやってきた。
「毎週楽しく小説を読ませていただいています。質問なのですが、亜細万先生はどうやって小説を書いているのでしょうか。自分も小説を書こうと思っているのですが、中々進みません。ご教授願えないでしょうか。」
随分と簡略化させていただいたが、この内容で間違っていない。
これを読んだ際の私の心理を当てられるだろうか。
答えはこうだ。
(相談する相手間違ってるぅ)
私は人に教えられる程、立派なアマチュア作家ではない、寧ろ軽蔑されて然るべき作品を書いている。女性の方々から石を投げられても、仕方のない作品だ。
しかし、彼、または彼女は真剣に悩んでいるようだった。
メッセージを返信してみると、数分後に返事が返ってきた。どうも、切羽詰まっているようだ。
内容を要約すると「何か書きたいと言う気持ちは十分だが、それだけで終わってしまうか、ちょこっとだけ書いて、おじゃんになってしまう」
なるほどなるほど、初心者あるあるか。
これについてのアドバイスは……できねーよ!!
私は思い付いたらとりあえず文章を書き殴る習性がある、こんな真摯で幼気な悩みとは、最も遠い場所に居る人間だ。
私は叫んだ、無人の職場で。
「助けてなろうのエロい人!!」
深夜特有のハイテンションで、仕事も執筆も中断、相談の君に「考えを纏める時間をしばしいただけないでしょうか」と断りを入れて、エッセイを読み漁った。
して、小説を書きたいと相談されたエッセイがなろう内に、いくつか存在し、読みふける事二十分程、私は結論を得る。
(どれもこれも参考にならねぇ)
いくつかのエッセイは、真摯に小説の書き方と言うのを解説していたが、それらはある程度書きたい物が決まっている人向けのエッセイだった。解説出来るだけ立派だと思うが、今役に立たないのが口惜しい。
それよりも、これから小説を書こうと言う人間を上から目線で、馬鹿にするエッセイがあった。
特にひどかった文を下記にあげる。
・なろう小説なんて下らないもの書くな。
それは人の勝手である。誰かの書きたい物にケチをつける程、作家失格な事はない。
・語呂を増やしてからでも遅くはない。美しい文章を書こう!!
相談の君が書きたいのは、文章ではなく小説と言う、誰かの物語だ。言ってる事は正しいが、今は不要。
・今、なろう界隈には、小説とも呼べない物が殆ど、そうなって欲しくない。
小説は「作者の構想を通じて、人物や事件、人間社会を描き出そうとする、話の筋をもった散文体の作品」だから、人が出てきて、何かしらの社会を書き出していれば、小説なのである。間違っているのはエッセイの作者だ。
・文学作家について述べよ。
おう、小説に全く関係ない事言っているよ。○○作家のこの作品ならまだわかるが、作家の事って馬鹿じゃないのか。
ぶっちゃけ、なろうのあれこれより、ラノベ作家のツイッターのが数千倍参考になる、と気が付いたのは数分先の話。
それらを読んで、かみ砕いて、私の流儀を混ぜ合わせ、とりあえずなんとか説明できる程度の内容を教える事ができた。
それを、書き出そう、箇条書きで!!
①世界観の作り方。
1 自分の好きな物を組み合わせよう。
2 1+2、1+2+3を作ったのならば、1があって2があるなら、こうじゃないかと連想して、基礎を産み出そう。
3 基本設計が出来たのならば、つけたい設定の肉付けをしよう。
4 設定の肉付けが終わったのならば、いる設定といらない設定を分けよう。
5 完成したのなら、次のステップだ。
②登場人物の作り方。
1 主人公を作ろう、まずは性別を決めるのだ。
2 先程作った世界観と照らし合わせて、適当に年齢を決めて、それまで何をして生きていたかを箇条書きしよう。
3 さぁ、その箇条書きから主人公の性格が産まれましたね? 産まれない?
4 産まれないのならば、性格を決めちゃおう。主人公は良い人? 悪い人?
5 善悪決まったのなら、脳の固さを決めよう。一度決めた事は曲げない、固い人なのかな? 効率が良ければ、変えちゃう人なのかな?
6 上記全てが決まったのなら、想像してみよう。それまでの人生で、トラブルがあった。君の主人公はどうやって解決した?
7 これで、最低限の主人公の完成です、同じようにヒロインだけでも作ろう。
8 主人公君とヒロインちゃんが産まれたら、次のステップだ。
③物語の最初と最後を決めよう。
1 主人公君は、君が作った世界の、どこに居て、今何をしているのかな?
2 そう、○○に居て、××をしているんだね。それじゃあ彼の隣にはヒロインちゃんが居るのかな? いないのかな?
3 居るなら、最初は出会い方を書こうね。幼馴染でも、仕事の依頼人でも、なんでもいいよ。
4 居ないなら、どうやって出会うか、出会う理由はこうだって書こうね。
5 主人公君に目的をあげよう、別名はトラブル、○○で××してたけど、△△が起こってさぁ大変、こんなもんでいいよ。
6 物語の最後、この△△をどうにかする方法を考えよう。
7 これがプロットと呼ばれる、物語の設計図です。さぁ、次に参りましょう。
④最初と最後が決まったら、その間で何がしたいかを考えよう。
1 ○○で××をしている主人公君に、△△が起こった。②で作った主人公君の性格に則った行動をしよう、彼はどうする?
2 どうするって言うのは、積極的に動くか、消極的に動くの二極で考えようね。
3 主人公君がどちらを選んでも、物語は止まらないよ。
4 さぁ、物語が始動しました。まず、主人公君はどうする? 解決に動くのかな? それともまだ○○で××するのかな?
5 前者なら、移動させよう、移動させながら、ヒロインの身の上を聞くとか、主人公の身の上を話すとか、適当にキャラ設定と、世界観を説明しよう。
6 後者なら、移動できない理由を説明するのと、移動できない理由を世界観にこじつけられればいい感じです。
7 世界観のさわり部分を説明したら、物語を動かそう。場所移動だけではなく、他のトラブルとかでもいいよ、でも、メインより小さなトラブルを書こうね。
8 7で起きた小さなトラブルを解決する最中、ヒロインと主人公の性格を描写出来ると尚良し。
9 小さなトラブルを一つ解決できたら、△△を解決する為に動き出そうね。
10 △△を解決する為に、動き出し、トラブルに巻き込まれ、解決したら再び△△を解決する為に動かそう。ここまでで起承転結の起承だよ。
11 さぁ、次は転結だ、これで最後です。
⑤物語の大事な所。
1 △△は実は、を考えよう。
2 1は少しばかり悲劇的で、残酷な方法のが良い。
3 主人公を悩ませよう、ヒロインを狼狽させよう。
4 ある程度悩ませ、狼狽させたのなら、光明の糸を下ろすのだ。これで転。
5 後は貴方の自由です、主人公達は光明の糸を掴む(ハッピーエンド)のか、それともその糸すら罠だった(バッドエンド)のか。
6 物語に一旦幕が引かれます。これで、結。
7 幕引きは、物語の終焉ではありません。再び幕を開けるかどうか、作者である貴方次第です。
と言う内容を説明させていただきました。
もうちょっと、テクニックに突っ込んだ部分も説明しましたが、おおまかにこんな感じに説明をして、ドン引きされました。
大量の文だからね、仕方ないね。