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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

狼が狼男になる方法

作者: いとおかし

 むかしむかし、あるところに人間が好きな白い狼がいました。


 その狼は、他の狼と違い白い毛で覆われており、みんなに嫌われておりました。一人ぼっちの狼は、小さな女の子がいる人間の家族のことをいつも眺めていました。


 どうしたらあの女の子と仲良くできるだろう。白い狼は必死に考えました。


「そうだ! 人間になれば良いんだ!」

 

白い狼はそう考えると、森の中で色々な事を知っている動物に聞きに行くことにしました。


 ある老いた鹿には「そんなものあるはずないじゃろ」と呆れられ、寝ていた熊には「俺に食われたらわかるぜ」とからかわれ、欠伸をしているカバには「バカだな。そんなことよりも昼寝しようよ」と興味がない様子で話も聞いてくれませんでした。


 人間になるなんてやっぱり無理なのかなと思い、トボトボと森の中を歩いていると、「何かお困りですかな?」と上から声が聞こえました。木の枝に白いフクロウが止まっており、白い狼を見下ろしていました。


「人間になる方法が知りたいんだ」


「ほう、人間になる方法ですか。聞いたことがありますな」


「本当に!? 教えてください!」 


「ほう、それでは特別に教えて差し上げましょう。その方法とは、満月の夜に人を食べることですよ」


フクロウは白い狼を見下しながらそう答えたのでした。


 「教えてくれてありがとう! さっそく試してみるよ!」 


白いフクロウに狼はお礼を言うと、


「ほう、ほう。いやいや、お役に立てたなら良かったですよ。それじゃ、頑張ってくださいね」


白いフクロウはそう言うと、空に向かって翼を羽ばたかせて飛んで行ってしまいました。


 白い狼はフクロウに言われた通り、満月の夜まで待ち、人を探し始めました。森の中は夕方まで雨が降っており、地面はぬかるんでおりますが、それでも人を探すため、地面に鼻をつけ匂いを嗅ぎ、キョロキョロと色々な方向を見てました。


 満月ですので、普段と比べ、木の葉や地面の草木など月の光で見えやすくなっており、雨が降ったせいか、葉についた水滴に光が反射し幻想的な光景になっていました。その光景の中、白い狼が人を見つけたのか、ある方向に一直線に駆け出しました。


 夕方に雨が降ったせいか、分厚い黒い雲が満月を隠してしまい、辺りが暗くなりました。白い狼は匂いを辿っており、人の近くまで来たので、慎重に少しずつ近づいて行きました。その人は、お花を摘むのに集中しており、狼には気付いていませんでした。


 もう少しで人間になれるんだ! 興奮する気持ちを抑え、白い狼は呼吸を整えると、狙っている人の背後から、飛び上がり牙を首すじに突き立てると、その人は「きゃあああぁぁ」と叫び声をあげていました。


 暗くて顔は分かりませんが、牙を突き立て、叫び声を挙げた後は動くことなく、白い狼のなすがままでした。白い狼は丁寧に牙を突き立て一滴も残さないように、首から下の部分を食べていました。すると、月を隠していた黒い雲から、また綺麗な満月が出てきて辺りを柔らかな光で照らしました。


 白い狼が改めて首だけになった死体を見てみると、それは友達になりたいと思った少女が苦痛に顔を歪めて死んでいる姿でした。ああっ、何てことをしてしまったんだ! 白い狼は後悔していると、この少女を探していたのか松明を持った人間たちが集まってきました。


「おい、何だあの化け物は!」


「顔が狼だが、身体は人だぞ!」


「アリス! ああ何てことだ!」


「殺せ! あの化け物を殺すんだ!」


 人々は口々にあの化け物を殺せと叫んでました。


「違う! この少女を食べるつもりじゃなかったんだ!」 


白い狼は必死に訴えましたが、人々には伝わらず、最後には武器を持った村人たちが応援に来て、攻撃されてしまいました。


 白い狼は必死で人間から逃げ何とか助かりました。そこで白い狼は自分の姿に気付いてしまいます。


 手足は狼の時より長く、立って歩くことが出来るようになりましたが、人間にはない白い体毛で覆われており、水たまりに顔を写すと狼のままでした。


 何ということでしょう! 人間にもなれず、狼にも戻れず孤独な生き物になってしまいました。その白い狼だった者は、悲しみのあまり大きな雄叫びをあげるのでした。


その後、村では「満月の夜には外には出てはいけない、狼男に喰われてしまうよ」という話が語り継がれていくのでした。






おしまい。

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