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かくれんぼ  作者: 大平麻由理
本編
1/210

プロローグ

プロローグのみ、メールのやり取りの散文形式になっております。

次話より、普通文型で展開していきます。

尚、時代設定は2010年以前となりますため、ガラケー使用で物語が展開していきます。

長編になりますが、最後までお付き合いいただけると嬉しいです。

加賀屋君、年末の予定は?


──大晦日の晩にはそっちに帰ると思う。

でも元旦の夜には京都に戻る予定。


相変わらず忙しいんだね。

おじさんもおばさんも寂しいんじゃない?


──いや、その心配は無用。

俺がいなくてせいせいしている模様。


そんなことないよ。きっと心配してるって。

もっと頻繁に顔を見せてあげなきゃ。


──来年は時間を作るよう努力する。

じゃあ、大晦日の晩、零時に。


うん。わかった。

ねえねえ、何回目かな? 大晦日の零時のメール。


──六回目。それが何か?


何回目かなって、ただ、そう思っただけ。

もうそんなになるんだね。

でもさ、加賀屋君。

あたしとメールなんかやってていいのかな? 

彼女に叱られない?


──別に。

もしいたとしても叱られないし

いなければ尚さら叱られない。


そんなもんなんだ。じゃあ、遠慮なく。


──澄香は? 

俺とメールしてて、彼に叱られないのか?


だから、いつも言ってるでしょ? 

そんな人いないって。


──会社のあの人は?


吉山君のこと? 

だったら彼はそういう対象じゃないって。

信じてよ。ただの同期だってば。


──じゃあ、他に、誰か忘れられない人でもいるんだろ?


うーーん……。そうかもね? 

なーんちゃって!


──おやすみ。


えっ? ちょっと待って。

加賀屋君、もう寝るの? 

早すぎるよ。それはないでしょ?

まだ話は終わってないし。


──おやすみ。


ひどいよ加賀屋君。

すねてる。絶対に、すねてる。


──スネテナンカイナイヨ。おやすみ。



毎日繰り返されるメールだけが、澄香の真実。

電話で話すことも、二人だけで会うこともないけれど。

彼とのメールだけが、澄香の生きてる(あか)し。



高校の同窓会があるってホント?


──ああ。今月末にある。


へえ、そうなんだ。二年ぶり? 

いやもっとかな?


──三年ぶりだ。澄香は行くんだろ?


うん。行くよ。加賀屋君も行くよね? 

だって、幹事だもんね。


──仕事の都合による。

月末、イタリアに出張予定だ。

滞在が長引けば、出席は無理だな。


ええっ! そうなの?

でもいいな、イタリア。

じゃあ、おみやげはパスタで。


──よし。わかった。

ただし、こっちは遊びじゃない。仕事だ。


わかってるって。

あたしなんか、たとえ仕事でも

海外に行くことなんてないもん。

加賀屋君がうらやましいよ。

だってついこの間、イギリスに行ったばかりだよ? 

そうだ。免税店であのブランドバッグもお願い。


──わかった。


あと、ブレスレットタイプの時計も。


──おやすみ。


あっ、また怒った。


──おやすみ。


絶対怒ってる。


──オコッテナンカイナイヨ。おやすみ。



澄香は出張のたびに彼におみやげをねだる。

すると、それを写真に撮ってメールに添付してくれる。 

でも……。

本物が届くことはない。

だって、これはゲームだから。

彼と澄香だけの、密かなゲーム。

どこまでも続くかくれんぼ。


そしてそれは、決して叶うことのない……。

夢物語。




舞台は神戸。メールで繋がる二人の恋の行方をお楽しみ下さい。

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