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熊王伝  作者: ウル
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第79話 勇者の力

 ★5リバイアサンの魔王を倒した。

 モンスター部隊のメンバーも攻撃に参加していたので、進化について確認して貰ったところ、進化できるメンバーが結構いた。


 兄貴はついに★6アルクトドスに進化した。

 弱ったとはいえ、魔王に肉弾戦をして勝ったことで条件を満たしたのだろう。

 確かに体長10メートルで頭から背中にかけて真紅の鬣がある姿になった。

 コストは325になった。

 ★6アルクトドスの種族平均コストは240とすれば、兄貴の追加コストは10もあがったのか。すごいな。

 そして、ウル様の支配力を超過したのでウル様との支配契約も解除されたようだ。


 それ以外に、ウィルとゼルが★5カリストと★5オニクビに進化したのだ。

 ケイシュール・魔王と格上と戦ってきたからなのだろう。

 ウィルのコストは、★4進化時の88から160になった。追加コストが28から一気に40まで増えた。★4アルカス時代の俺ともう変わらない。

 ゼルのコストは、★4進化時の84から160に上がっていた。ゼルは後から進化したのにコストがもっと上がってるぞ。ついにコストがウィルに追いついたな。ゼルは相当努力したらしい。

 ゼルは、リコが★3ダイアウルフでいる間に2回進化できたと喜んでいた。比較するのがそこでいいのかとも思ったが、ゼルが頑張ってきたのは俺もよく知っているから、あえて水を差す事もないか。


 更に★4ホウオウのヤヨイ隊長が★5スザクに進化した。

 昔コストを計った時は52だったらしいが、今は125だ。

 追加コストが25も上がったことになる。比較期間が違うとはいえ、すごい努力だ。


 そして、ロウガが★4ガイアに進化した。

 ★4の姿は鳥族の姿だ。やはり、ガイアの進化はよく分からない。

 急いで進化させるために鬼訓練をしたとは言え、1ヵ月も経たない間に★1から★4まで進化したのは驚きだ。

 コストも150となり、追加コストも10上がっている。


 隊員も★2はいなくなり、全員が★3以上になった。

 戦力が増強された事だし、最後の敵であろうタンゴに勝たないとな。



 そして、俺は兄貴達とタンゴの居場所を確認しに行くことになった。

 他に連合国の諜報隊長のイザベルさんとピュートル公の外交官のミハイルビッチさんと一緒だ。


 俺達は、フライトとスピードをかけて帝都を目指す。

 途中、魔王に破壊された街を上空から多数通過していく。

 これは酷いな。

 完全に破壊された街は復興もままならないだろう。


 1日の移動が終わり、夜の野営に入る。

 とは言っても、俺達モンスターは、背負ってきた餌を食べて寝るだけなので何も準備は要らない。

 イザベルさんはケルティクの首を持っていて、ケルティクと交信をするらしい。

 とは言え、特に何もないので状況の連絡だけをしたようだ。

 それが終われば、イザベルさんもミハイルビッチさんも保存食を食べた後、寝袋で寝るだけだ。

 何かあってもいけないので、交代で見張りをして寝る事になった。


 その晩、俺は変な夢を見た。

 幼い人間の少女が俺に助けを求めてくるのだ。

 助けてやるから安心しろと俺が言うと、安心した表情をして少女は消えていった。

 一体何だったのだろうか?


 俺の見張りは4番目なので兄貴に起こされる。


「変な夢だったな。」

 俺が言うと、


「ガイン、お前も夢を見たのか?」

 兄貴が聞いてきた。

 話を聞くと、兄貴も全く同じ夢を見ていたようだ。

 気味が悪いな。

 まあ、夢だしなと言いながら兄貴は寝た。


 無事朝になり、俺達は朝の餌を食べてから帝都に向かって出発する。

 つもりだったのだが、姿は見えないが俺にまとわりつく気配を感じる。


「何か気配を感じないか?」

 俺が聞くと、


「何かが俺様の周りにいるような気配がするぜ。」

 兄貴が答える。

 しかし、ロウガやイザベルさん、ミハイルビッチさんは感じないらしい。

 そうこうしている内にさらに多くの気配が俺の周りにまとわりついてくる。

 別に害になる訳ではないが、気になって仕方がない。


「まさか・・・な」

 兄貴が言う。


「どういうことだ?」

 俺には何の事か分からないので聞いてみると、


「テセウスさんが言っていただろ。

 魔王に殺された救いを求める願いによってエネルギーが回復するって。」


「だが、それは勇者だけの話だぜ。」


「そのエネルギーは本気で魔王を倒そうとする意志のある者に集まって、その者は勇者になるとも言っていただろ。」

 兄貴が続ける。


「それじゃあ、俺達は勇者に選ばれたというのか?」

 俺は答えるが実感はわかない。


「物は試しだ、受け入れてみようじゃねえか。」

 兄貴はあっさりしたものだ。

 兄貴にまとわりついている気配が兄貴に吸い込まれていく。


 大丈夫そうだし、俺もやってみるか。

「たすけて・・・」

 俺がまとわりつく気配を受け入れると、そんな願いの声が頭に響いてきた。

 しばらくして、この辺りの気配は俺と兄貴の体の中に吸い込まれていった。


「勇者の誕生と言うものを初めて見せてもらったよ。」

 イザベルさんが言う。

 だが、俺としては実感が全くない。

 魔王のようなパワーも感じないし。


「とりあえず、勇者のエネルギーが発動できるか試してみるぞ。」

 兄貴は、そう言うと試しで小さなサンダージャベリンを放つ。


「ちょっと色が違うが、サンダージャベリンとは違うのか?」

 俺が聞くと、


「いや、勇者のエネルギーを用いたバルキリージャベリンだ。

 何度やっても成功しなかったのに、受け入れた力を使ったら一発だったぜ。」

 兄貴が答える。


「すごいな。どうやるんだ?」


「今日はもう出発しなければいけないから、今夜見張りの交代の時に話すぜ。」

 兄貴が言うので、この話はここで終わりになった。


 2日目の夕方の交信でイザベルさんは、俺と兄貴が勇者の力に目覚めた可能性があるとケルティクに連絡していた。


 そして、2日目の夜兄貴からバルキリージャベリンについて聞く。

 俺も一発で習得できた。

 兄貴は魔王が来る前に何度も試したが、一度も成功しなかったらしい。

 やはり、勇者だけが使える技と言う事のようだ。


 3日目になり、ついに帝都ルーベンブルグのあった場所に着いた。

 目の前に悍ましい光景が広がっている。

 町は完全に破壊され、多くの犠牲者の死体が転がっていた。

 魔王の破壊エネルギーの前に死体すら残らずに消滅した人も多数いたのだろう。

 もはや原型を残していない死体も多数あった。

 今は季節が冬であり、北にあるルーベンブルグでは多くの死体が凍っている。

 腐敗していないため匂いに悩まされることはないが、春になればそうもいかないだろう。


 そして、そうしている間にもたくさんの気配が俺達の周りにまとわりついてくる。

 昨日とは比べ物にならない数だ。

 だが、魔王と戦うには、この力は重要な筈。

 俺も兄貴もできる限り集まってくるエネルギーを自分の中に取り込んだ。

 その度に、犠牲者の意識が俺の中に蘇る。

「ああ、魔王を倒して魂を救ってやるぜ。」

 俺は受け入れる一つ一つの魂に心の中でそう答えた。


「魔王を倒してからになりますが、犠牲者を弔わないといけませんね。」

 ミハイルビッチさんが言う。


「そうだな。

 それにしても、魔王は姿を見せないな。」

 俺は答える。


「帝都は襲われてからかなり時間が経っている。

 もっと西の方を探さないといけねえな。」

 兄貴が言う。

 今回の調査の目的は魔王となった可能性が高いタンゴがどこにいるのか探す事だ。

 もっと新しい犠牲者を探して、魔王の行方を追わなければならない。


 4日目にはパヴェル公の本拠バイカルに着く。

 帝都同様廃墟となっていた。

 しかも、襲われたのはかなり前のようだ。

 帝都よりも先なのかも知れない。

 ここでも同じように俺達はできる限りエネルギーを吸収した。


 そして、4日目の野営の時間になる。

 明日以降どう動くか。

 ここから先のの進行方向は、遠く南のウォルタンか西のフェニキア公国のいずれかだ。


「明日、ここから北にある魔王バエルの封印を確認しに行きませんか?」

 ミハイルビッチさんが言う。

 確かハキルシア帝国には2体の魔王が封印されているんだったよな。

 そのうちの1体が魔王バエルだ。バエルの概念は不滅。滅ぼす事のできない魔王だ。

 確かに、そんな相手の封印が解けていたら一大事と言うことで時間を割いて確認しに行く事になった。


 5日目、ミハイルビッチさんの案内で俺達は魔王バエルの封印に向かう。

 そして、魔王の封印が解かれている事が分かった。

 それだけでなく、守護者である人間が全員殺されていた。


「やはり魔王の封印を確認してよかったですね。

 これで、推定タンゴと思われる魔王のほかに、魔王バエルも暴れ回るという事になります。」

 ミハイルビッチさんが言う。


「守護者達は皆、胸を何かに貫通されて殺されているぜ。

 これは何だ?」

 ロウガが聞いてくる。


「バルキリージャベリンだろうな。

 勇者か魔王しか使えない技だ。

 となると、封印を解いたのは魔王となったタンゴなのだろうな。」

 兄貴が言う。


「間違いない。

 タンゴの匂いがするぜ。」

 封印の前を確認すると、俺はタンゴの匂いを見つけた。

 封印の前に立って封印を解いたのがタンゴであることは間違いないようだ。


「とは言え、タンゴが別の魔王の封印を解いた理由が分かりませんな。」

 ミハイルビッチさんが言う。


「魔王の力を持ったタンゴが、別の魔王の封印を解くメリットなんてあるのか?」

 俺が聞くと、


「歴史上このような事例がないから何とも言えないな。

 概念が同じ魔王なら吸収してエネルギーを増やすこともできるのだろうが。」

 イザベルさんが答える。


「封印を短時間で解こうとすれば、魔王とは言え相当なエネルギーを消耗するはず。

 さらに言うと、封印されている時点で魔王のエネルギーはかなり消耗した状態になっているはずです。そうでなければ封印などできませんから。

 エネルギーの補充のためにそこまでするメリットがあるとは感じないのですが。」

 ミハイルビッチさんが言う。

 ここにいるメンバーで頭を捻ったが、タンゴの目的が全く分からない。


「一応、もう1体の魔王についても教えてくれ。」

 仕方ないので何か分かればと思い、俺はハキルシア大陸に封印されているもう1体の魔王について聞く。


「魔王ダニエルはサマルトア公国の付近に封印されています。

 概念は支配です。」

 ミハイルビッチさんが教えてくれた。


「目的は分からずとも、タンゴは破壊しながらどこかに進んでいる筈だよな。

 南のウォルタンで何かあればケルティクから連絡が来るだろうから、今日は西のフェニキア公国へ向かわないか。」

 兄貴の意見に全員同意して、俺達はその足でフェニキア公国へ向かった。


 そして、俺達は驚く。

 フェニキア公国は、魔王に襲われていないのか普通に住民が生きているのだ。

 だが、昼にもかかわらず門は厳重に閉められている。

 タンゴが魔王バエルの封印を解いた後、すぐ近くのフェニキア公国を襲わない理由が思いつかない。

 どういう事だ?

 それに、タンゴはすぐ近くのフェニキア公国を放置してどこへ行ったんだ?



「とりあえず、話を聞きに行けないか?」

 兄貴が言う。


「そうだな。

 魔王の目撃情報が聞ければいいのだが。」

 イザベルさんが言う。


 俺達はフェニキア公国の門の前に行き、ミハイルビッチさんがレオグラードのピュートル公の使者だと言って門を開けてもらおうとするが、反応がない。


「使者の来訪を無視するとはどういうつもりですかな?」

 ミハイルビッチさんが叫ぶが、フェニキア側はだんまりを決め込んでいる。


「どうするんだ?」

 ロウガが聞いてくる。


「強引に空から入れば敵対行動と見做されても文句は言えないしなあ。」

 兄貴が答える。


「だが、フェニキアの様子は明らかにおかしい。

 魔王となったタンゴに支配されている可能性がある。」

 イザベルさんが言う。

 それじゃあ、戦闘準備だけはして空中から入ってみるかと言うことになり、俺達は支援技を全員にかけていく。

 その声も明らかに城壁の向こう側には聞こえている筈だが、フェニキア側の反応はない。


 準備ができた所で、俺達は空中から町の上空に移動する。

 地上は大騒ぎになっていたが、一般人どころか町の衛兵までが建物の中に隠れて出てこなくなった。どう考えても様子がおかしい。

 魔王に支配されているなら当然無謀な攻撃が来る筈だ。


「おい、誰かが飛んでくるぞ。」

 ロウガが気づいて言う。

 見ると、黒ローブを来た人間が1人、こちらに向かってフライトで飛んでくる。


「警戒を怠るな。

 まだ手を出すんじゃねえぞ。」

 兄貴が全員に言う。

 まだ敵と決まった訳でない以上、先に攻撃を仕掛けるのは拙い。

 とは言え、敵でないとも決まっていない以上、警戒は怠る訳にはいかない。


 黒ローブの人間は俺達の近くに来ると、

「ここでは話せぬ故、一度町の外まで着いて来てくれ。」

 と言ってくる。

 とりあえず、いきなり攻撃してくる気配もないし、1人だけなら不意打ちされても何とかなりそうだという事で、俺達は黒ローブの人間について町の外に出る。

 そして、ある程度離れたところで地上に降りると、黒ローブのフードを外した。まだ若い人間の男だ。


「使者に対して無礼な振る舞いになって申し訳ない。

 私は、フェニキア公国王弟リカルド。

 貴方方と情報交換をするつもりで来た。

 フェニキアは、タンゴと名乗る魔王に脅されて外部との接触を完全に遮断している。」

 リカルドと名乗る男が言う。


「やはり、フェニキアに魔王が現れたという事なのだな。」

 イザベルさんが聞く。


「パヴェル公の本拠のバイカルが一瞬で破壊されるところを見せられ、我々は従うしかなかった。」

 そりゃあ、逆らったら町ごと一瞬で滅ぼされる力を見せられたら逆らう事はできないよな。


「それで、タンゴの奴はどこへ行ったんだ?」

 俺が聞くと、


「行先は分からないが、西に向かって飛んで行った。」

 リカルドが答える。

 タンゴの行先は西か。目的はさっぱり分からないが。


「タンゴから何を言われている?」

 イザベルさんが聞く。


「指示があるまで城門を閉じ、外部との接触を一切絶てと。

 なので、ここで貴方方と話したことがタンゴの耳に入ると、実は非常に拙い。」


「そうだな。

 口外することはないから安心してくれ。

 状況だけ分かれば、我々は西に向かう。」

 イザベルさんが答える。


「あと、私からも1つ聞きたいのだが、レオグラードにはダゴンと名乗る魔王が向かったと聞いている。

 レオグラードは無事なのか?」

 今度はリカルドが聞いてくる。


「★5リバイアサンの姿の魔王なら倒したぜ。」

 兄貴が言うと、


「それは本当か。

 なら、フェニキアとしてもタンゴと名乗る魔王と戦えないか考えてみたい。」


「我々としては、魔王がレオグラードに来るのを待ち構える事になりますが、できる限り協力したいと考えております。」

 ミハイルビッチさんが答える。


「レオグラードには何かあるのですか?」


「魔王に決して破られない結界を張ることができます。

 それを用いながら戦い、魔王を消耗させます。」

 ミハイルビッチさんが言う。

 信用できると断定できない相手にここまで話していいのかとも思うが、これくらいは言ってもいいという判断なのだろう。


 フェニキア公国としても魔王に脅されて従っているだけで、可能なら魔王を倒したいと考えているようだ。

 お互いに情報交換し、俺達は西に向かう事になった。


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