第76話 スパルタ
あの野郎との話が終わってようやく一息ついたので、ゼルの様子を見に行く。
「ゼル、ロウガの様子はどうだ?」
俺はボコボコになっているロウガを横目にゼルに聞いてみる。
「多少動きは良くなったが、何というか根性が足りねえなあ。
簡単に諦めやがるぜ。」
ゼルが答える。
「なんで俺がこんな目に遭わなきゃいけねえんだ。」
ロウガが言う。
「そりゃ、魔王と戦うガイアに生まれたからだろ。」
俺が言うと、
「こんな目に遭うならウルの奴にガイアを譲れば良かったぜ。」
ロウガが言う。どういうことだ?
「ロウガ、お前、ウル様と何かあったのか?」
「ウルの奴の体は元々俺の物だったんだ。
俺の中にあいつの魂が入って来て、1つの体に2つの魂だとぶつかるからって、どっちかがガイアの体に入ることになったんだ。
ガイアの方が楽が出来そうだったからガイアを選んだのに、この仕打ちはひでえぜ。」
ロウガが言う。
ロウガはウル様の肉体の持ち主だったらしい。まあ、今は重要でもないからとりあえず覚えておくだけにするか。
「自分で選んだんだ。
今更文句を言うな。
ウル様も対ノリク戦で相当苦労してるんだからな。
どちらにしても楽ができる道なんてねえぜ。
分かったら、訓練を続けるぞ。」
俺はロウガに言い放つと、そのままゼルの訓練を見守る。
ゼルは、ロウガに攻撃させてカウンターを喰らわせていた。
「同じことばかり繰り返してないで、毎回少しは工夫しろよ。」
ゼルが言う。
すると、ロウガが少しゼルから距離を取る。
「サンダー」
ロウガがゼルに技を放つ。
「どうだ。」
ロウガが言う。
しかし、ゼルは腕で電撃を受ける。
多少はダメージを喰らっているだろうが、まだまだ余裕だろう。
「そうそう。
そうじゃなきゃ面白くねえよな。
それじゃあ、こっちも行くぜ。」
ゼルがそう言うと、ゼルもサンダーを放つ。
「痛え、無理だぜ。
★1の俺が、★4相手なんて勝てる訳ねえだろ。」
ロウガが言うと、
「それじゃあ、★6のガイン大将と交代するか?」
ゼルが返す。
「やめてくれー。
殺されちまう。」
「お前のレベルアップのためにやってるんだ。
殺しはしないぜ。
気絶しても、すぐにリザレクションをしてやっているだろ。」
ゼルも結構鬼コーチをしているな。
「どうしたら一撃をぶつけられるか考えて色々試してみろ。
諦めずに訓練を続ければ、そのうち何回かは当たるようになる。」
俺も一言アドバイスする。
その後しばらくゼルの訓練を見ていたが、ロウガは諦めが早いな。
勝てないと思うとすぐ攻撃が投げやりになる。
魔王を相手にするのにこれでは困るのだが。
動きを見ていると結構考えていてセンスがありそうなのに勿体ない。
どうするか?
1つずつ試してみるしかない。
「おい、ゼル。ちょっと耳を貸せ。」
俺は、ロウガでも勝てそうな相手と一度戦わせるようにゼルに耳打ちする。
「おい、ネロとエリーを呼んで来い。」
ゼルが言うと、隊員が★2ウルフと★2イーグルを連れてきた。
「ゼル大将、お呼びですか?」
ネロが聞く。
「ネロ、エリー。仲間がみんな進化できたのに、お前達だけ進化できなくて悔しいだろ。
ちょうどそこにいるロウガの訓練をしていたんだが、どうせだから、お前達も訓練した方がいいと思ってな。
順番にロウガと戦ってみろ。
俺達が見てるから全力でやっていいぜ。」
ゼルは隊の中で★3まで進化できなかった2匹を呼んだようだ。
実は見たところ、ロウガの戦闘センスはかなり良い。
ゼルも、ロウガは★2相手でも善戦できると判断したのだろう。
最初に★2イーグルのエリーが相手をする。
2匹はお互いに精神集中を始める。
「ウィンドショット」
「サンダー」
2匹は攻撃技を相手にぶつける。
ロウガはすぐに次のサンダーの精神集中を始める。
迷いがなかったな。
一方のエリーは飛ぶかどうか迷ったようだ。
少し遅れてウィンドショットの精神集中を始める。
2回目はロウガの方が早く、エリーのウィンドショットは失敗してしまう。
次からはエリーも迷わず次のウィンドショットを準備を始める。
こうして10発余りの攻撃技を打ち合った結果エリーが先に気絶してしまった。
ゼルが、間に入って戦闘を中断させる。
「よっしゃ、格上の★2に勝ったぜ。」
ロウガが言う。
やはりこいつ、おだてて自信を持たせた方がやる気になるタイプだ。
俺とゼルで2匹にリザレクションをした後、今度はネロとロウガの対戦になる。
ネロは、ロウガがエリーを倒すところを見ていただけあって、★1とは言えロウガを強敵とみているようだ。
開始早々ネロは、一直線にロウガに向かって突っ込む。
サンダーの一発を喰らうことは覚悟しているようだ。
ロウガは突っ込んでくるネロにサンダーを一発ぶつける。
ネロはロウガにトリプルスラッシュを仕掛けるが、ロウガは攻撃してきたネロの前腕を加えてネロを投げ飛ばした。
そして、まだ体制の整わないネロに対して追い打ちのサンダーをぶつける。
ネロは、素早さでは勝てないと判断したのか、サンダー連射に切り替える。
今度はお互いにサンダーの打ち合いが始まった。
同じように10発程度でネロが気絶して戦闘が終わる。
ロウガ、お前はひょっとして精神力がかなり高いんじゃないか。戦闘センスがいいのもあるが、なにより賢そうだ。それで同じ技でもネロやエリーよりも威力が高いのではないか。
★2のウルフのネロは好相性技だから威力にボーナスついている筈なのに撃ち勝ったからな。
「もう1回。もう1回だ。」
負けたネロが言う。こいつ、根性があるな。ゼルと一緒で自分だけ進化できなかったのが悔しいのか。
「そうか。それじゃあ、今度は遠距離攻撃なしでやってみるか。」
ゼルがそう言って、再度ネロとロウガの試合が始まる。
今度はロウガもかなり善戦したものの、ネロがロウガの攻撃を敢えて受け、反撃で噛みつき合いに持ち込むと、進化レベルによる体力差で最後はネロが押し切った。
「もう1回。もう1回同じ条件で戦わせてくれ。」
今度はロウガが言う。
ゼルも認めて、もう一度ネロとロウガが戦う。
大分粘ったものの、結局はネロがレベル差で逃げ切った。
「もう1回だ。」
再びロウガが言う。
どうしたんだロウガ。どこからその根性が出て来るんだ?
さっきまでとは別人じゃないか。
その後3回戦い、ついにロウガが初めてネロに勝った。
動きの改善度が全然違う。やはり、ロウガの戦闘センスはかなりのものだ。
その後、ロウガにハンデをつけてもらって2匹と交代で戦う。
ロウガもそうだが、ネロとエリーも動きがよくなってきていた。
やはり、レベルが近い者との全力勝負は経験として得るものが大きいのかも知れない。
その日の訓練が終わり、施設で確認してもらうとロウガとネロが進化できるようになっていた。
ロウガは進化に選択肢があるのか分からないが、★1ガイアから★2ガイアに進化した。
姿が小さなドラゴンから狼のような姿に変わった。種族が変わった訳ではないよな。翼が無くて飛べなくなったのか?ガイアの進化は分からない。
そして、進化前後でコストも図ったのだが、55→67に増えていた。★1でコスト55とか無茶苦茶高いな。ガイアの種族平均コストは★1が12で★2は24。賢さ分が43と考えると辻褄は合う。分かってはいたが、ロウガは賢いな。既に前回計った時のウィルやゼルよりも賢いわけだ。兄貴と出会った頃の俺と変わらない賢さだ。
ネロもゼルが相談に乗って★3キラーウルフに進化した。コストは19→33に上がった。
「それじゃあ、ネロ、ロウガ。折角進化したんだから、新しい技を覚えようか。」
帰ってくるとゼルが言う。
「ちょっと待ってくれ。今日の訓練は終わったんじゃねえのかよ。」
ロウガが言う。
「明日は、1ランク上の奴を相手に戦闘訓練するからな。
それまでに、1つ上のレベルの技を覚えておかないと相手にならねえぜ。」
ゼルは当たり前のように言う。
「なんの技覚えるんだ?」
ロウガが聞くと、
「ネロはジャンプアタック。
ロウガはストレングスかな。」
ゼルが答える。
まあ、そのあたりが妥当かな。
俺は、後をゼルに任せると、遅くなりすぎないようにだけ言って、隊の状況を一通り確認し、アリサの傍で寝た。




