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熊王伝  作者: ウル
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第75話 帰還

 6日後、俺はロウガを連れて無事レオグラードに到着した。

 すると、レオグラードの城壁の周りに多くの人が生活をしている。

 連合国の援軍も到着していたようだ。

 そりゃ、町に全員は入れないよな。

 それにしても予想以上に人数が多いのは何故だ。

 話を聞くと、レオグラードに対魔王の結界を張るから近隣の町から避難して来て貰ったらしい。

 そう言えば、途中空から見ていて気付いたが、ファーレンの方からもたくさんの人間が向かっていたな。

 ファーレンの町をがら空きにするくらいの勢いだった。


 レオグラードの町に入ると、町の中もかなりごった返していた。

 籠城時よりも人が増えてないか?

 近隣の町の全ての民衆をレオグラード周辺に集めたらしい。


 俺は連合国諜報部隊の所に戻るがウル様がいない。

 聞くと、結界を張るための魔力プールの設置の所にいるらしい。

 オーウェル様についても聞くと、ピュートル公の館の一室にいるらしい。

 とりあえず、オーウェル様に報告するか。


 俺は館に行き、オーウェル様に面会を求める。

 すると、オーウェル様の方から館から出てきた。


「ガイン殿、お疲れ様です。

 ガイアを連れて来てくれたのですね。」

 オーウェル様が労ってくれる。


「ああ、こいつがガイアのロウガだ。

 まだ★1らしいが。

 魔王の動きはどうなっている?」

 俺は魔王の動きについて聞く。


「近隣の町を破壊しながら南下してきているみたいですね。

 レオグラードに避難するよう近隣の町に伝達しましたので、少しでも犠牲者が減るといいのですが。」


「町の外にかなりの人数が避難していたが、結界で守れるのか?」


「ウル殿の話ではレオグラードの周辺も含めた広範囲を結界で守るので大丈夫との事です。

 結界を張る場所には印をしてあるので、そこよりは中に入るようレオグラードの兵士達が誘導しています。」


「結界の維持にかなりのエネルギーがいると聞いたが。」


「サンクチュアリに複数の術者が多数の魔力プールを出して、多くの術者が魔力を供給することで結界を維持するようです。」


「パヴェル公の動きは分かっているのか?」


「分かりませんね。

 ただ、一つはっきりしていることは、パヴェル公の本拠のバイカルも既に魔王によって廃墟になっているということです。」

 それなら、魔王と戦っている間にちょっかいを出してくる心配はないか。


「あと、ガイアはどこに連れていけばいい?」


「ウル殿に考えがあるようですので、ウル殿の所に連れて行って貰えないでしょうか。

 あと、終わってからでいいのでブランタン殿の所にも顔を出してあげてください。」

 オーウェル様が言う。

 げっ、あの野郎に会いに行けってか。

 無視したい所だが、オーウェル様に言われたら嫌とは言えないしな。

 まあ、用事が全部済んでからだな。


「分かった。それでは、ガイアを連れていく。」


 俺はそう言って、館を後にする。

 あの野郎に会いに行くとは言わない。

 そしてモンスター部隊の所に戻ると、ウル様は町の中央の魔力プール設置予定場所にいるらしいので、そのままそこへ向かう。


 すると、ウル様・兄貴・ライン公の側近の★5シリウスのジーク、エルシア商人の★6ゲブのブライアン、そして、レオニード将軍と側近がいた。


「ウル様、ガイアを連れてきたぜ。」

 俺はウル様に言う。


「ガイン、やはりテレポートに成功していたんだな。

 間に合ってよかった。」


「結界の方はどうなんだ?」


「全て準備はできた。

 一応レオグラード周辺を含めた結界を維持できそうだ。」

 ウル様が答える。


「それじゃあ、ガイアはどうするんだ?」

 俺は再度ウル様に聞く。


「俺達は、結界の準備関係で動けないから、ガインが訓練して進化させておいてくれ。」

 ウル様が言う。

 ウル様、こいつのスパルタを俺に丸投げかよ。


「おいっ、俺を進化させるってどうやるんだ?」

 ロウガが聞いてくる。


「そりゃ、24時間みっちり戦闘訓練してレベルを上げるって事だ。」

 俺は答える。


「ひでえ。俺はまだ生まれて2ヵ月ちょっとの赤ん坊だぜ。」

 ロウガが言うが、


「ウル様の命令だ。諦めろ。

 それじゃあ行くぞ。」

 おれは、ロウガを引っ張って連れて行った。



 そして、俺はモンスター部隊のゼル隊長の所へ行く。


「ガイン大将、レオグラードに帰ってきたんだ。

 本当にエルモンドにテレポートしたのか?」

 ゼル隊長が聞いてくる。


「ああ、ウル様の指示どおり、エルモンドに飛んでガイアを連れてきた。

 こいつがガイアのロウガだ。

 まだ★1の赤ん坊らしいが、こいつが何回か進化すれば魔王に対抗する切り札になる。

 ゼル、こいつをみっちり鍛えてやってくれねえか。

 時間がないから遠慮はいらねえ。

 早く進化できるよう、徹底的に戦闘経験を積ませてやってくれ。」

 俺はゼルに頼む。


「ガイン大将、任せてくれ。

 ★4モサに進化する時の経験から何をすればいいか分かったからな。」

 ゼルは快くロウガの訓練を引き受けてくれた。


「ひでえ。鬼だ。悪魔だ。」

 ロウガは叫ぶが、


「それじゃあ、生き残る訓練から始めるか。

 敵の攻撃を避ける事も大事だからな。

 ちゃんとよけろよ。

 怪我をしたら、リザレクションですぐに回復してやるから、心配しなくても休まず訓練続けられるからな。」

 ゼルが、ロウガに死刑宣告「?」をする。


「ゼル、それじゃあ頼んだぜ。

 言うことを聞かないようなら、俺がボコボコにしてやるからいつでも言いに来てくれ。」

 俺はそう言って、ロウガをゼルに任せた。

 俺はウル様と違って丸投げはしないぜ。

 ちょくちょく様子は見に来るつもりだ。



 俺は次にアリサに会いに行く。

 エルモンドに行く前、俺がテレポートの技に苦戦していたころには、腹が大きくなってきていたからだ。

 ダガンもそろそろ隊長の交代をすると言っていた。

 アリサ隊の所に行くと、アリサは木にもたれて座っていた。


「アリサ、待たせたな。

 エルモンドでの任務が終わって帰ってきたぜ。」

 俺はアリサに言う。

 アリサの腹を見ると俺がエルモンドへ行く前よりもさらに大きくなっていた。

 あと1~2か月で出産だろう。


「ガイン、お帰りなさい。

 突然レオグラードから消えた時は心配したけど、無事エルモンドへ飛べたと信じていたわ。」

 アリサが言う。


「既に聞いているだろうが、帝都に魔王が現れた。

 俺は、魔王に対抗するために忙しくなるが、今後はそうそうレオグラードを離れる任務はないだろうから、安心してくれ。

 なるべく多く、アリサの所に顔を出すようにするからな。」


「無理はしないでね。

 私はガインが近くにいてくれるだけで大丈夫だから。」

 アリサが気を使って言ってくれる。


「ありがとな。

 また来るぜ。

 ダガン、アリサ隊の事頼んだぜ。」

 俺はそう言って、アリサとの話を終える。


 その後は、スレイルさんアウルスさんと各隊の調整だ。

 事態が緊迫して講習は一旦中断し、戦時体制に入る。

 モンスター部隊は結界構築後に交代で、魔力プールに魔力を充填するらしい。実際にテストも行い、本番のローテーションも決まっていた。


 さてと、オーウェル様の命令だし、一度はあの野郎に会っておかないと拙いか。

 俺は諜報部隊の所でハイネの部隊の場所を聞くと、レオグラードの外に駐屯していることが分かる。

 あの野郎もそこにいるらしい。レオグラードの館には協力貴族全員は入れないからな。

 ある程度位の高い貴族だけか。折角だから、その辺も聞いてみるか。


 俺はどうせ文字で分かるだろうと、通訳も連れずにあの野郎のいる陣に向かう。

 すると、行く途中の陣の兵士から


「うわー、巨大なモンスターが現れたぞ。」

 と言う声が聞こえる。

 俺の事か?

 確かに体長7メートルはあるし、★6ポラリスなんて歴史上記録がないから謎のモンスターかも知れないが。

 あの野郎の軍の近くにいるってことは、同じ連合国のどこかの軍だよな。

 ピュートル公の軍にも敵と思われたことないのに、まさか同じ連合国の軍に敵と間違えられるとは思わなかった。

 そのまま様子を見ていると、完全に警戒態勢でこちらを見ているし、近くの軍に伝令が走っている。

 しばらくして、俺は近くにいた複数の軍に包囲された。

 とりあえず、いきなり攻撃してくる気配はなさそうなので、誰が気づいてくれるのだろうとそのまま様子を見ていると、軍の間から数人の人間が飛び出してきた。


「ガイン、お前は何をやってるんだ。

 連合国の軍の前をお前1匹だけでうろついていたら、敵モンスターと見間違えられるだろうが。」

 怒鳴り声がすると思ったら、飛び出してきた中の1人はあの野郎じゃねえか。

 もう少し先の軍の中にいるじゃなかったのか。


「うるせえなあ。

 オーウェル様がお前に会いに行けっていうから来てやったんじゃねえか。

 そうでもなけりゃ、わざわざこんな所まで来ねえぜ。」

 俺は言い返す。


「ブランタン様のお知合いですか?」

 警戒している別の軍の隊長があの野郎に聞く。


「うちのガインが迷惑をかけて申し訳ない。

 味方だから大丈夫だ。」

 あの野郎は言うが、


「だから、俺はハイネのモンスターじゃねえ。

 エルモンドのモンスターだって。」

 俺はきっちり間違いを訂正しておく。


「分かったからさっさと来い。」

 あの野郎が言ってくるので、あまり迷惑をかける訳にはいかず、俺は大人しくついて行った。

 ついて行くと、すぐにハイネの軍の場所に着く。

 隊長クラスだけでなく兵士の中にも知っている顔が結構あった。


「お前達、ガインを迎えに行ってきたぞ。」

 あの野郎がハイネの軍に向かって叫ぶ。


「おお、ハイネの英雄だー。」

 などと言う声が聞こえてくる。

 流石に、ここでハイネのと言う部分を否定する訳にはいかねえか。


「それじゃあ、ハイネの英雄に一言言って貰うぜ。」

 あの野郎が言う。

 あの野郎が『ハイネの』を連呼する所は気に入らないが、一応世話になった町の仲間なのでここはあえて黙っておくか。


「ガインだ。

 今は連合国のモンスター部隊所属だけどな。

 みんな、この姿を見るのは初めてだよな。

 ★5カリストが覚醒すると★6ポラリスに進化する事ができる。

 俺もハイネや連合国の皆の協力のおかげで★6ポラリスに進化する事ができた。

 感謝するぜ。

 魔王が誕生して帝都を破壊した話は聞いているだろ。

 魔王はいずれレオグラードにやってくるらしい。

 俺も全力で戦うつもりだが、みんなも頼むぜ。」


 俺は簡単に挨拶をする。

 ハイネの軍のあちこちからはおおという掛け声がする。

 あの野郎の事は置いておいて、こいつらは仲間なんだと改めて実感した。


「連合国のウル殿とファーレンのジーク殿がレオグラードに結界を張って守るそうだ。

 だが、結界も無限に続くわけじゃない。

 その時は、我々で魔王と戦うぞ。」

 あの野郎が言う。


 上位の魔王と初期に戦った軍は全て壊滅している。

 魔王にエネルギーを浪費させる事が、後から魔王と戦う者達にとって有効だからだ。

 だから、結界が破れた時は死ぬ可能性が高いとみんな分かっている。

 ハイネの軍のみんなは殆どが、そのつもりだという顔をしていた。


「全く、気分が暗くなっちまったぜ。

 ちっとは明るい話はねえのかよ。」

 俺が言うと、


「それじゃあ、ガイン。

 レオグラードでの活躍の話でも聞かせてくれ。」

 あの野郎が返してきたので、俺はレオグラードで戦った話をしてやる事にした。

 みんな、俺の話を自分の事のように喜んでくれる。

 やはり、俺の故郷はハイネなのだろうか?

 話しながら俺はふとそう思った。


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