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熊王伝  作者: ウル
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第73話 テレポート

「ウル様、ウォルタンの文献が役に立ったぜ。まがいなりだけどテレポートを習得したぜ。」

 翌日、俺はウル様に文献を返しに行った。


「すごいじゃないか。

 エルモンドにも移動できるのか?」

 ウル様が聞いてくる。


「そこまではまだ無理だな。

 だが、訓練を続ければいずれできるんじゃないかと思ってるぜ。」

 俺は答える。


「俺様達もサンクチュアリを習得したぜ。

 形が出来ただけだけどな。」

 傍にいた兄貴が言う。

 えっ?

 ウル様も兄貴もまだ★5なのに、★6専用技のサンクチュアリを習得?


「ウル様も兄貴もまだ★5だよな。」

 俺が聞くと、


「どうやら、専用技は★5に進化していれば使えるみたいで、努力すれば高度な6レベル専用技も使えるようになった。

 ★4の時に5レベル技を覚えるようなものだな。技の構成を試行錯誤しないといけない分苦労したが。」

 ウル様が答えてくれる。

 俺は苦労してテレポートを一応習得したのに、負けた感がすごい。


「ウル様と兄貴はもう完全に物にしたのか?」

 俺は何とか聞いてみる。


「まだ小規模な構築が出来ただけだ。

 実運用のためには、まだまだ課題が多い。

 これから1つずつクリアしていくしかないな。

 そう考えると、ガインのテレポートと同じようなものだ。」

 ウル様が答える。


「そういうことだ。

 まあ、お互い調整して完成させて行こうぜ。」

 兄貴がそう言って、俺は文献を返して話を終える。


 これは、早くテレポートをものにしないとな。

 俺は、今まで以上に熱心にテレポートの訓練を続けた。


 その日の夜、俺達は諜報部隊に呼ばれる。

 そこには、魔王とスレイルさん、アウルスさん、ウル様、ケルティク、兄貴と俺が集まった。

 念のため、全員にシャドウウォークをかけて話をする事になった。


「急に集まってもらってすまない。

 実は、昨日から私の周りにエネルギーが集まり始めている。

 昨日は気のせいかと思ったが、間違いではなかったようだ。」

 魔王が言う。


「魔王のエネルギーが増えているなら、できることが増えていい事じゃねえのか?」

 俺が聞くと、


「私が貯めるエネルギーは、普通の魔王とは違い生物たちの救いを求めるエネルギー。

 ありていに言えば、勇者が貯めるエネルギーだ。

 大きな被害に遭い、そして、救って欲しいと願う者が大量に発生する事で私はエネルギーを得る事ができるのだ。」

 魔王が答える。


「大量の救いを求めるエネルギーが発生したという事は・・・」

 ウル様が言いかけると、


「まさか、破壊の魔王が現れたとか言うんじゃねえだろうな?」

 兄貴が聞く。


「そのまさかの可能性が高い。」

 アウルスさんが言う。


「エネルギーは北の方から流れてくる。

 新たな魔王の居場所の方角は北なのだろう。」

 魔王が言う。

 まじかよ。

 折角北部貴族連合の奴らを潰せるかと思ったら、次の敵は魔王って事か。

 しかも魔王レオニエルと違って、破壊の権化の魔王だ。


「ピュートル公への連絡は?」

 ウル様が聞くと、


「この後すぐにでも行きたいと思うが良いか?」

 スレイルさんが聞いてくる。

 特に反対意見もないので、俺達はすぐにピュートル公に面会希望を出す。

 レオグラードを救った英雄達と言う事で、ピュートル公もわざわざ時間を空けて、すぐに会ってくれた。


 場にいるのはピュートル公と2将軍、そして一部の護衛達だけだ。


「よくぞ参られた。

 至急の要件と聞いたが何があったのだね?」

 ピュートル公が聞いてくる。


「初にお目にかかる。

 私は魔王レオニエルだ。

 とは言え、私が得る事ができるエネルギーは勇者としてのエネルギーだ。

 なので、私の存在はエネルギーの大半を失った勇者と捉えてもらいたい。


 そして、本来エネルギーの補給ができない筈の私に昨日からエネルギーが流れ込み、私の力が少しずつ回復している。

 これは良く無い兆候だ。

 このような事が起こるのは、破壊の権化である魔王が復活し破壊活動を開始した時しかありえないからだ。」

 魔王が用件を伝える。


「つまり、世界に新たな破壊の魔王が誕生したという事か。」


「そうだ。

 すでにレオグラードの遥か北で大量の破壊が起こっているものと思われる。

 私を除けば最後の魔王の出現は190年もの前に遡る。

 今回の魔王は歴史上でも最大規模の魔王になるだろう。」


「事態は分かった。

 世界中の各国に伝達して、協力要請を行おう。

 アンネコフ、確認と通達を頼む。」

 ピュートル公がそう言うと、文官らしき人物が部屋を出て行った。


「推定ではあるが、現在破壊が行われているのは帝都近辺だと考えられる。

 新たな魔王がこのまま南下してレオグラードに向かって来る可能性は十分にあるだろう。」

 魔王が言うと、


「我々は少しでも抵抗して魔王のエネルギーを削るしかないという事か。」

 ピュートル公が言う。


「対策として、ウル君とパワー君が結界技のサンクチュアリを不完全ではあるが習得した。

 これである程度の期間レオグラードの町全体を結界で守る事ができる。

 何とか、世界中からの援軍が到着するまで持ち堪える事ができるといいのだが。

 最悪の場合は、私が全エネルギーを新たな魔王にぶつける。

 魔王のエネルギーと勇者のエネルギーはお互いに相殺する。それにより、新たな魔王はエネルギーをその分だけ失う筈だ。」

 魔王が言う。


「しかし、その場合レオニエル殿は消滅するのでは?」


「そうなる。

 だが、魔王のエネルギーを減らすことにより、対抗する者たちに勝機が見えてくる筈だ。

 私は魔王と呼ばれはしたが、本質的には勇者だ。破壊の魔王の存在を放っておく訳にはいかない。

 その時は後のことを頼みたい。」

 魔王が答える。


「分かった。

 私もレオグラードの領主の名に恥じぬよう取り組もう。」

 ピュートル公がそう答え、面会は終わった。



 諜報部隊の所に戻ってくると、ケルティクが待っていた。


「ピュートル公に伝えている間に帝都に意識を飛ばして確認をした。

 西の方から魔王が現れ帝都はほぼ壊滅したらしい。

 帝都に到着したばかりだった北部貴族連合軍もだ。

 魔王の姿は巨大な★5リバイアサンに近い姿ということだ。

 帝都方面の連合国の諜報部隊は全員撤収し、レオグラードで落ち合う事になっているようだ。

 それ以外にも帝都から多数の避難民が南に向かっているようだ。魔王は帝都からの避難民を追いかけ南下を始めたようだ。」

 ケルティクが言う。


 だとすると、魔王がレオグラードにやって来るのも時間の問題だな。

 スピードとフライトを併用すれば、3日で届く距離だからな。


「ケルティク、オーウェルさんに話をしてロウガの状態を聞けないか?」

 ウル様が言う。


「分かった。」

 ケルティクはそう言うと、オーウェル様と通信を始める。


「ウル様、ロウガって何だ?」

 その間に俺は、知らない事について確認する。


「ガインには話していなかったな。

 メキロ家が手に入れた対魔王最終兵器ガイアの事だ。

 種族名がガイアで個体名がロウガ。

 今エルモンドの施設にいる筈だ。」

 ウル様が教えてくれた。


「そいつがいれば、魔王に勝てるのか?」


「確実に魔王に勝てるって訳じゃない。

 だが、魔王のエネルギー攻撃を全て吸収して自分の生命力の回復ができる。

 もちろん魔王が肉体攻撃をして来たら普通にダメージを喰らうが。」


「要するに、魔王の遠距離攻撃は全部効かないって事か?」


「概ねそういう事だ。

 問題は、成体に成長するまでに数年かかるという話だ。

 今は生まれたばかりかも知れない。」

 ウル様が言う。


「生まれたばかりの奴に魔王と戦わせるのは無理じゃねえのか。」

 俺が聞くと、


「無理やりにでも戦闘経験をさせて進化レベルを上げるしかないな。

 ある程度進化できれば、対魔王戦で切り札となりえる戦力になる筈だ。」

 うわっ、ウル様超スパルタだ。

 しかし、対魔王の切り札である以上やって貰うしかないか。


 そうこうしている間にケルティクの通信が終わる。


「待たせたな。

 現在オーウェル様は連合国の本隊とレオグラードに向かっている最中だ。

 明日にもファーレンに着くとのこと。レオグラードまで、あと5日と言う所か。

 ガイアについてだが既に孵化はしているそうだ。まだ★1の幼体という事だ。」

 ケルティクが言う。


「オーウェルさんに魔王の話をして、ロウガの出撃許可を貰えないか?

 それで、ガインにテレポートでエルモンドに飛んで貰って、帰りはフライト・スピード併用で連れて来て貰えないか。」


「ウル様、無茶だぜ。まだ町の外へテレポートするだけでも苦労しているのに。」

 俺は言うが、


「そうでもしないと、魔王到着前にロウガをレオグラードまで連れて来れないだろ。」

 まあ、それは確かにそうだが。

 エルモンドまでフライト・スピード併用でも1週間近くかかるからな。往復したら半月だ。アレスみたいに徹夜を続ける訳にもいかねえしな。


「テレポートの訓練は続けるが、最悪を考えて普通の移動方法での伝達もしてくれ。」

 俺はそう言っておく。

 ケルティクが再度連絡を取り、オーウェル様の所から伝令を出して貰った。一応これでレオグラードから出発するより1日は早くなるか。


 翌日の朝から、俺は集中的にテレポートの訓練を始める。

 これまで散々試してきた経験から重要なのは、テレポート先の情景が鮮明に思い描けること。そして、方向と距離が正確に測れることだ。


 今日からは、ストライフさんが専属でサポートしてくれるので非常にありがたい。

 ストライフさんと色々試した結果、エネルギーを貯めるのに必要な時間は移動距離の平方根に比例する事が分かった。

 多少の誤差なら問題ないとは言え、精神集中で貯めるエネルギーが多すぎても少なすぎても技は失敗し、無駄に終わる。それでもエネルギーが多すぎたのか少なすぎたのかは分かるので、少しずつ調整していく事ができる訳だが。


 町の外からレオグラードの中に戻るにはエネルギーを貯める時間が17秒位。

 計算すると1キロで10秒と言う事になる。

 エルモンドまでの距離はどれくらいだ?

 人間が行軍する時間と地図で迂回している分を補正すると直線距離で概ね4000キロ位か。

 だとすると、計算上精神集中に必要な時間は10分余りと言う事になる。

 技で10分とか有り得ない精神集中時間だよな。精神集中時間の一番長いイクソシズムが可愛く見える。それだけ移動のエネルギーを貯めないといけないって事だ。


 俺は町の外からのテレポートは失敗しないようになって来たので、いよいよエルモンドへのテレポートを試してみる。

 下手な場所へ飛んで戻ってこれないと困るからな。

 俺は頭の中で、エルモンドの部隊と一緒に過ごしていた場所をイメージする。

 そして、精神集中を始める。

 ストライフさんに計算した時間を計ってもらった。


「ガインさん、あと10秒です。9・・8・・7・・」

 ストライフさんがタイミングを教えてくれる。

 エルモンドまでの距離と方角が地図から計算した通りなら、これで上手くいく筈だ。


「テレポート」


 気づいたら、俺はエルモンドの見慣れた光景の中に移動していた。


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