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熊王伝  作者: ウル
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第71話 ポラリス

 翌朝、目が覚めると既に北部貴族連合の連中はディビアン近辺から撤退をしていたようだ。

 1日経てばレオグラードからピュートル公の主力が援軍に来る状況の中、僅か6万のディビアン軍を27万の大軍で攻めきれなかった時点で敗戦濃厚だろうからな。


 念のため、ホーク隊とヤヨイ隊に偵察に行ってもらったら、北部貴族連合軍は帝都に向かって撤退を開始しているようだ。

 本当に敵が撤退するのか2~3日様子を見る必要があるが。

 南部貴族連合の首脳陣がレオグラードに集まるのは、敵が完全に撤退するのを確認してからになるようだ。


 その日、戦死者の追悼を行った。

 ドルカンコーチも英雄として人間の戦死者とともに丁重に葬られた。


 俺は、葬られたドルカンコーチ達ディビアンの英霊の墓の前でドルカンコーチの事を思い出していた。

 技を教える時のコーチは厳しかった。怒鳴られた記憶しかない。それでも、俺や兄貴に対する優しさに満ちていたのを俺は知っている。

 俺は、熊族の中では歴史上にまだ記録のない伝説の★6に覚醒した。この姿をドルカンコーチに見せてやりたかったな。ドルカンコーチは熊族の中から★6に覚醒する者が現れることを心待ちにしていたからな。


「それが★6ポラリスの星か。なるほど、確かに額に星を持ちたる英雄と呼ばれた通りの姿だ。」

 いつの間にか俺の近くにレオグラードのエース冒険者のアレクシードがいた。


「★6ポラリスって何だ?」

 俺はアレクシードに聞いてみる。


「ガイン殿の事だ。

 マケルーノに伝わる神話の中に出てくる2匹の熊の英雄のうちの1匹さ。

 英雄の1匹であるポラリスには額に星を持つと言われている。

 まさか、本当に伝説通りの姿になるとは思わなかったが。」

 アレクシードが教えてくれる。


「俺の額に星があるのか?」


「自分じゃ分からないか。

 鏡で自分の顔を見てみろ。」


 俺は、アレクシードに鏡を借りて自分の顔を見てみる。

 すると、俺の顔の額にはっきりと毛が星形に白くなったところがある。

 ★2ブラックベアだった頃に胸にあった斑紋と同じようなものだ。形も大きさも全然違うが。


「なるほど、この星型の体毛を見て額に星持つと表現した訳だ。

 もう1匹の英雄についても教えてくれねえか。」

 俺が聞くとアレクシードは神話に出てくる2匹の熊の英雄について教えてくれた。


 1匹は兄のアルクトドス。基本黒茶色の体毛だが、頭から背中にかけて真紅の鬣があるらしい。

 もう1匹が弟のポラリス。こちらは銀色の体毛だが、額に星を持っているとのことだ。

 2匹は協力して魔王を倒し、大地の守り神になったとか言う話だ。


「特殊能力についても伝わっているのか?」

 俺が聞くと、


「アルクトドスの能力はサンクチュアリと言う町全体に結界を張る能力。結界の力で魔王の攻撃から町を守ったそうだ。

 ポラリスの能力はテレポート。世界中の自分の馴染みのある場所に瞬時に飛び、各地で世界中を同時に侵略しようとした魔王の手下と戦ったそうだ。」

 アレクシードが答えてくれる。

 兄貴の★5オニクビは、サンクチュアリの下位版ともいえるフォースフィールドを持っているし、これは★6に覚醒した熊族の特殊能力について示しているのかもしれない。

 

「姿が神話の通りなら、専用技も神話の通りかも知れないからな。

 情報感謝するぜ。」

 俺はアレクシードにお礼を言って、モンスター部隊の所へ戻った。


 すると、ウル様が★5シリウスに進化している。

 昨日大量に敵兵を倒していたからな。


「ウル様、★5シリウスに進化したんだな。」

 俺は声をかける。


「まあな。

 ガインにはまだ引き離されたままだけどな。」


「メンバーが少ないが、どこかへ行ったのか?」


「アウルスさんとパワーが進化できるメンバーを連れて進化しに行っているぞ。

 ガインが戻って来ないから、先に行っているとパワーが言っていたぞ。」

 そうか、俺がコーチの墓にいる間に進化しに行ったからメンバーが少ないんだ。

 俺は、ウル様にお礼を言って進化施設に向かう。


 そこでは、モンスター部隊のメンバーが進化を行っていた。

 今回は隊長の進化者はいないらしいが、★2から★3に進化できるメンバーがかなりいるとのことだった。

 俺がいなくても隊長がしっかりメンバーの面倒を見て、進化を行っていたようだ。

 総括でついてきていたアウルスさんや兄貴もほとんど見ていただけらしい。


「あの、ガインさんですよね。

 コストを測らせてもらえませんか?」

 進化施設の人間が聞いてくる。

 どうやら、★6モンスターを見るのは初めてのようで、コストを知りたいとの事だった。


 折角なので、俺はコストを測ってもらう。

 俺のコストは455と出た。

 施設の人間は初めて見る数値に驚いていた。

 だけど、ダガンの分の145を引くと、俺の実質コストは310だ。

 俺の★5カリスト時代の種族平均値120からの加算額は65。

 310から65を引くと計算上★6ポラリスの種族平均値は「平均を取るほども数がいないが」245となる。

 ★5の2倍と5だけ差がある。俺の賢さが上がったと考えていいのだろうか?

 そう考えれば、結局進化する度に種族平均コストが2倍になるのは変わらないという事になるのだが。


「★6になっても進化で増える種族平均コストはほぼ2倍ってことか。ガインの追加コストが5位は上がっているだろうしな。」

 兄貴も同じ計算をしていたらしい。


「そうみたいだな。

 そう言えば、★5オニクビは覚醒すると★6アルクトドスになるらしいぜ。

 頭から背中にかけて真紅の鬣が生えるんだとよ。」

 俺はアレクシードに聞いた話を兄貴に話す。

 あくまで神話の話で本当にそうなるかは分からないが。


「なんだそれ。かっこ悪くないか。

 ガインの額の星もそうだけどよ。」

 兄貴が言う。

 兄貴がそう言うのを気にするのは意外だな。


「姿に贅沢を言っている場合じゃねえだろ。

 強くなれるだけでいいじゃねえか。」

 俺が言うと、


「まあ、確かにそうだな。」

 あっさり引いたな。やっぱ、俺の気のせいか。


「あと、専用技についても聞いたんだが、どうやって習得したらいいんだろうな。

 今度ブライアンに聞いてみたいぜ。」


「ガイン、どこで専用技について知ったんだ?」

 兄貴が興味を持って聞いてくる。


「姿についてもそうだが、アレクシードが教えてくれた。

 なんでも、今の俺の姿がマケルーノに伝わる神話に出てくる2匹の熊の英雄の片割れであるポラリスそっくりなんだとよ。」

 俺が言うと、


「神話とかあてになるのか?」

 まあ、兄貴が言うのも尤もだな。


「今のところ★6ポラリスに覚醒した俺の姿を正確に言い当てているあたり、その神話も昔★6に覚醒した熊族かその仲間が作ったのかも知れねえだろ。

 間違っているかも知れねえが、一応覚えておいて損はねえと思うぜ。」


 俺は、★6アルクトドスと★6ポラリスについて兄貴に話した。

 兄貴も眉唾とは思っていないようで、しっかりと覚えたようだ。



 次の日の朝再度、ホーク隊とヤヨイ隊に偵察に向かってもらう。

 北部貴族連合軍は本当に帝都に向けて撤退をしているらしい。

 その報告を受け、ライオネル公をはじめ重要メンバーは護衛を連れてレオグラードに向かうことになった。



 出発が遅れて夜になったが、その日の内にレオグラードにつく。

 そして、ピュートル公の館で会議に入る。


 ピュートル公から協力のお礼の挨拶から始まった。

 ついにウラジオに連合国の主力が集結し、レオグラードに向けて進軍を開始したらしい。


 連合国の援軍到着後、帝都及びパヴェル公の本拠であるバイカルを攻撃に向かうとのこと。

 それまでゆっくり休養して欲しいとの事。

 遠方で往復するとあまり時間が取れないミューゼル軍とその周辺貴族はレオグラード周辺に駐屯するようだ。

 あと、ピュートル公の任命でライン・ミューゼル侯がファーレン太守に復帰してファーレン軍として共同して帝都に攻め込むとの事。これで、南部貴族連合はもとの結束を取り戻した訳だな。

 いよいよ北部貴族連合をぶっ潰す時がやって来るな。

 1ヵ月近く時間があるし、その間に何をするかな。


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