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熊王伝  作者: ウル
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第69話 ディビアン攻防戦「1」

 いよいよ北部貴族連合の連中がやってきた。

 敵は総勢27万の大軍だ。

 対する俺達ディビアン軍は6万。

 だが、ディビアン側は籠城しているため、ケイシュールの隕石で城壁を破壊されない限り、ディビアンの城壁で守り切る事は可能なはずだ。

 それに1日、遅くとも2日待てばレオグラードからピュートル公の主力が援軍に来てくれる。


 俺はケイシュールが来ないか町の外を見ながら、ディビアンの町の城壁の上で待機していた。

 俺の今日の魔法はエクステンド3回。訓練でポケットが20レベルまで広がったので、エクステンドを3回まで準備できるようになったからだ。

 そして、タイムストップの時間を延長して確実にケイシュールを仕留める。

 俺は全ての強化技をかけ、エクステンドを使って維持を続けている。

 そして、時々アナライズマジックで敵軍のいる方向を見る。

 ケイシュールが動き出しているなら、魔力が反応する筈だからだ。


 城壁のすぐ後ろにはケイシュールと交戦する兄貴達の部隊が控えている。

 ホーク隊やヤヨイ隊の鳥族からのケイシュールの発見報告を今か今かと待っていた。


「ガイン、そろそろシャドウウォークの準備をする。降りてきてくれ。」


 俺は、アウルスさんに呼ばれ、城壁の上から降りる。

 ケイシュール戦ではアウルスさんとドルカンコーチと俺がシャドウウォークで陰から暗殺を狙う。戦場なので、暗殺と呼ぶかどうかは怪しいが。

 そして、シャドウウォークのかかった俺達は、邪魔にならない空中でケイシュールの接近を待つ。

 シャドウウォークの中では音は聞こえないので、ケイシュールと戦う部隊の出撃で接近を判断する事になる。


 日が沈む頃、ディビアンの西門の近辺に大きな爆発が起こる。シャドウウォークのかかっている俺には音は聞こえないが、ケイシュールが隕石を落としてきた事は分かる。

 ケイシュール討伐部隊が慌ててフライトで西へ飛ぶので、俺もぶつからないようにしながら西へ向かう。

 シャドウウォークがかかっていても、夕日が眩しい。

 そうか、ケイシュールは俺達の発見が遅れるよう夕日を背に飛んできたんだ。

 兄貴達がケイシュールと交戦を始める頃には、既に5~6発の隕石が落ち、ディビアンの西門近辺は大分破壊されてしまった。


 ライオネル公が急いで兵を西に集めている。

 これ以上城壁を壊されないためにもケイシュールを早急に討ち取らないとな。

 アレクシードがケイシュールに斬りかかる。

 兄貴が横から援護している。いい連携だ。

 さらに、少し離れたウィルとゼルがケイシュールに技を放つ。アンチディスペルガードだな。


 その間に俺はケイシュールの後ろに回り込む。

 既に精神集中の終わっているタイムストップを発動するタイミングを計る。


 すると、ケイシュールが落下しはじめた。

 まさか、ディスペルマジックが決まったのか?


 ケイシュールはその隙に攻撃しようとするアレクシードと兄貴の攻撃を軽くかわすと、素早く魔法をかけて飛行して逃げようとする。

 今回のケイシュールの役目は城壁の破壊だけだからな。

 目的を達成したら危険地帯に長居は無用か。

 逃がさねえぜ。


 俺はシャドウウォークの中でケイシュールを追いかける。

 見ると、ドルカンコーチが横からケイシュールに近づいている。


 ケイシュールにはシャドウウォークがかかっているドルカンコーチは見えていない筈だ。

 ここで確実に仕留めなければ。


 俺も後ろからケイシュールを追いかける。

 その直後、ドルカンコーチの姿が消えた。

 タイムストップを使ったな。

 ちょっと早い気もするが、ドルカンコーチには勝算があるのだろう。

 ケイシュールの前にいる筈だ。


 だが、見るとケイシュールの剣がドルカンコーチの胸を貫いている。

 馬鹿な。

 だが、迷っている暇はねえ。

 こいつを逃がす訳にはいかねえんだ。


「タイムストップ」


 俺は、時間を止める。


 ケイシュールに追いつくまで2秒。



「エクステンド」


 俺はタイムストップが切れる瞬間に併せて効果を延長させる。

 これで、タイムストップの効果はエクステンドしてからさらに1秒続く。

 少しでもぎりぎりで効果を延長できるよう、繰り返し何度も練習した。



「エクステンド」


 さらにタイムストップの効果が切れる瞬間を狙い、俺は効果を再度1秒延長させる。

 よし、ケイシュールに追いついた。

 次のエクステンドの直後にシャドウウォークを解除できるようにまだケイシュールに接触はしない。


「エクステンド」

 さらに1秒時間を延長した直後に、俺は、動かないケイシュールの首筋を爪で掻き切ろうとする。

 ここでシャドウウォークの硬直時間に入る。

 硬直が解けるまで、0.5秒の間は動けない。

 だが、残りの0.5秒あれば動けないケイシュールの首を掻き切るには十分だ。

 いかにケイシュールが強かろうが時間が止まれば生身の人間なのだから。


 そして、時間が動き出した。

 首から大量に出血したケイシュールだけでなく、ドルカンコーチの体も落ちていく。


「ケイシュールは倒した。

 誰か、ドルカンコーチにリザレクションしてくれ。」

 俺はドルカンコーチの体を抱えて叫ぶ。

 ケイシュールの体はそのまま地面に落下していった。



「リザレクション」

 後ろから現れたアウルスさんが、ドルカンコーチにリザレクションをかけてくれた。

 だが、ドルカンコーチは動かない。


 すぐに、アレクシードが追い付いてきてドルカンコーチに刺さっている剣を抜く。

 一気に抜くと、大量に出血するので少しずつ抜きながらリザレクションをかける。


 しばらくして、ようやく剣を完全に抜き出血も止めたが、ドルカンコーチの意識は戻らない。


「心臓が止まっている。

 残念ながら・・・」

 アレクシードが言う。


「まだ、分からねえだろ。

 俺は諦めねえぜ。

 一旦町に戻って治療してもらう。」

 俺はそう言うと、ドルカンコーチを背負ってディビアンの町の中へ飛ぶ。



「ケイシュールを討ち取ったぞー」

 ディビアンの兵から歓喜の声が聞こえてくる。

 これで軍の士気が上がったのはいいが、早くドルカンコーチを助けねえと。


 俺は、ドルカンコーチをライオネル公がいる場所の近くに下ろす。


「ケイシュールは討ち取ったが、やられた仲間がいる。リザレクションを頼む。」

 俺がそう言うと、ライオネル公は傍にいる魔術師たちに指示してリザレクションをかけてくれた。

 しかし、ドルカンコーチの意識は戻らない。


「失礼します。」

 魔術師が動かないドルカンコーチの胸に手を当てて確認する。


「残念ながら、既に死亡しているようです。」

 魔術師が残酷な事実を言い放つ。


 ドルカンコーチ、なんでだ。

 タイムストップが決まったんじゃなかったのかよ。


「どうだった?」

 アウルスさんが、やってきた。


「助からなかった・・・」

 俺は答える。


「そうか。

 ドルカン殿は、ケイシュールを逃がさないようタイムストップの間に距離を詰めて体当たりでケイシュールの動きを止めたようだ。」

 アウルスさんが言う。


「タイムストップで一撃でも喰らわして止めたんじゃねえのか?」


「それを狙っていたら、高確率でケイシュールに逃げられていただろう。

 タイムストップを使って距離を詰めてケイシュールの前に立ちふさがることでケイシュールの飛行速度を殺したのだ。」


「そんなことをしたら、ドルカンコーチはケイシュール目の前で硬直時間になるじゃねえか。」


「そうだ。

 その結果、ドルカン殿はケイシュールに一撃で胸を貫かれた。」

 アウルスさんが言う。

 確かにアウルスさんには、俺とドルカンコーチの戦闘が一番よく見えていただろう。


「コーチはなんでそんな無謀なことをしたんだ。」


「恐らく、ガイン、お前がケイシュールとの距離を詰められるようにだ。」

 そうか。

 お互いに動ける状況では俺はいつまで経ってもケイシュールとの距離を詰めることが出来なかった筈だ。

 ドルカンコーチは、俺がケイシュールとの距離を詰められるようにケイシュールの移動速度を止めてくれたのだ。

 俺は慌ててタイムストップを使ってしまったが、そうするまでの1秒くらいの間俺はケイシュールとの距離を詰めていた。

 そう考えると、俺はドルカンコーチがケイシュールを止めてくれたからタイムストップが間に合ったのだ。


「なんでだ。なんでなんだー。」

 俺はドルカンコーチを前にして叫んだ。


 その時、何か俺の中に力が流れてくるのを感じた。

 これは、進化したときに感じた力だ。

 それもこれまでにない大きな力だ。


「ガイン、ついに★6に覚醒したんだな。」

 アウルスさんが言う。

 見ると、アウルスさんが少し小さくなったように見える。

 それだけでなく、ディビアンの兵士が全員小さくなったように見えた。

 それだけ俺がでかくなったということか。


 体毛は銀色のまま変わっていない。少し輝きが増した気がするが。

 ついに俺は伝説級とも言える★6に覚醒したんだ。

 今の俺の姿、ドルカンコーチに見せてやりたかったぜ。

 だが、目の前にいるドルカンコーチはぴくりとも動かない。

 念願の覚醒をしたにも関わらず、俺は素直に喜ぶことができなかった。



「ケイシュールを討ち取った。

 間違いなく本物だった。」

 アレクシードが兄貴達と一緒にやってきた。

 ケイシュールの死体と使っていた剣も運んできたらしい。


 ライオネル公は、ケイシュールを打倒したことを宣伝し、兵達を鼓舞した事により、ディビアン軍及び協力貴族達の軍の士気は大きく上がった。

 そして、ライオネル公は破壊された西門近辺に兵力を集めていた。


「では、我々は、破壊された西門城壁付近の援護に行ってくる。」

 アレクシードはそう言って、町の西に飛んで行った。


「ガイン、よくやったな。

 ★6に覚醒したんだな。すごいぜ。

 だが、すぐにでも敵軍が破壊された西門に押し寄せてくるぞ。

 まだ終わっちゃいないぜ。行くぞ。」

 兄貴が俺の覚醒を祝ってくれる。

 それでも、俺の気は晴れない。


「兄貴、ドルカンコーチが死んだんだ。

 何も思わねえのかよ。」

 俺はつい口に出してしまう。

 俺は、人間の世界で生まれて死者を弔う人間の習慣を当たり前に感じて生きてきた。

 それに対して、兄貴は野生の生まれだ。常識が違うんだ。ここで兄貴に当たっちゃだめだよな。


「ドルカンコーチが今のガインを見たら、自分の事よりディビアンを守ることを優先しろと怒鳴るだろうぜ。」

 兄貴が言う。

 確かにそうだな。

 俺はドルカンコーチが怒鳴っている姿が頭をよぎった。


「兄貴、ありがとな。

 ディビアンの町を守り切らないとドルカンコーチに会わせる顔がないな。」

 俺は兄貴の言葉で少し気分を落ち着けることができた。


「大変です。

 破壊された城壁に向かって敵の大軍が押し寄せてきました。」

 ライオネル公のもとに報告が入る。


 俺は立ち上がり、押し寄せてくる敵と対決する決意を固めた。

 ドルカンコーチ、見ていてくれ。

 コーチが切り開いてくれた勝利への道筋。俺達が引き継ぐぜ。


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