第64話 ノリク新兵器迎撃戦「2」
予め精神集中していたのかリバイアサンが何か技を放つ。
しかし何も起こった感じはしない。
自分に技でもかけたのか?
リバイアサンは、俺をじっと見ると何か唸ったような声を出す。
そして、再び技の精神集中を始める。
水中ではサンダーをはじめ攻撃技は効果がない。
さっきの技は恐らくアナライズマジック。
俺にかかっている技を確認した可能性が高い。
だとしたら、次に使う技はアンチディスペルガードしかない。
俺はディスペルガードの精神集中を始める。
「アンチディスペルガード」
リバイアサンが技を放ってくる。
そして、再び技の精神集中を始める。
「ディスペルガード」
俺は僅かに遅れてディスペルガードをかけ直す。
俺はアナライズマジックの精神集中を始める。
ディスペルマジックよりは早いからだ。
「アナライズマジック」
俺はリバイアサンにかかっている技を確認する。
リジェネレーション・ストレングス・スタミナ
スピード・フィッシュムーブ・フライト
エレメンタルガード「炎・水・風・大地・光・闇」
ストーンスキン・フリーアクション
ディスペルガード・コンセントレイト
ミサイルガード・リフレクション
詠唱中ディスペルマジック
やはりディスペルマジックできたな。
俺がリバイアサンにかかっている技を確認した瞬間リバイアサンのディスペルマジックが飛んでくる。
しかし、ディスペルガードをかけ直した俺の技は消えることはない。
とは言え、予め襲撃が予想されていたためかしっかり強化は終わってやがる。
しかし、俺にかかっているアウェイキングとリベンジカースがない。あとシャープか。
俺はアウェイキングを朝からかけてエクステンドで維持しているから、全ての能力が上限まで上がっている。
さらに、敵にはこちらの攻撃技を反射するリベンジカースがない。リフレクションがあるが1回反射できるだけだ。
バフの差である程度有利に戦えるはずだ。
とは言え、レベル的には同格の相手。かつ相手の得意フィールドである水中。
バフの差を過信するわけにはいかない。
ほぼ攻撃技を使えない水中では、近接戦闘で殴り合うしかない。
★5リバイアサンはストレングスがかかっているため体長が20メートルを超える。
細長い分横周りは俺の方が太いが、体長では圧倒的に負けている。
しかも、残っている魔法はあとリザレクション1回のみ。先が長いことを考えるとあまり無茶もできない。
さて、どうやって戦うか。
「第3部隊長のガインだ。
海中のリバイアサンと戦う援軍が欲しい。
奴を倒せば、この船を船底から破壊できる。」
俺は海上に出て叫ぶ。
船の甲板には上がらない。ミサイルガードがかかっているとはいえ、銃器で撃たれる危険があるからだ。
俺は相手の得意フィールドである海中でリバイアサンとサシで戦うなんて危険は冒さないぜ。
勝てたとしても時間がかかりすぎるし。
当然勝利と効率優先だ。
すると、俺の意を汲んでくれたのか、多数のメンバーが海面に飛び込む音が聞こえる。
銃器の危険がある地上よりも戦いやすいと判断してくれたのかもしれない。
俺の近くにも★5キリンと人間数人が甲板から飛びだしてきた。
しかし、襲撃部隊にキリンはいなかったはず。
「アンチディスペルガード」
キリンは既に精神集中を終えていたのであろう技を俺に放ってくる。
しまった、こいつは敵のモンスターだ。
しかも首輪をしていない。
ノリクの幹部モンスターか。まずい。
「ディスペルマジック」×3
間を置かず、それに呼応して、傍にいた人間達が俺に魔法を放ってくる。
しまった。
俺にかかっている強化技が消される。
少なくともフライトが消えたようで、俺は海中にドボンと落ちてしまった。
こいつらノリクの精鋭なのか。戦い慣れてやがる。
俺が海中に落ちたところをリバイアサンがかみ砕こうと突っ込んできた。
俺は慌てて盾で受ける。
ウォーターブリーズも消えたようで、水中で呼吸ができない。
幸い、まだフィッシュムーブが残っていた。
盾でリバイアサンの攻撃を受けた直後、俺は船底を越えて船の反対側に泳いで逃げる。
リバイアサンに同調した敵兵が俺に止めを刺そうと剣で斬ってきたが、多少攻撃を喰らってでも強引に移動しきった。
ちょうど反対側に行くとウィンディさんのパーティーがいた。
何とか助かったか。
「敵の集中攻撃を受けて、強化技の大半が消された。
かけ直す間、リバイアサン達の相手を頼む。
敵のキリンを見たら要注意だ。」
俺はウィンディさんにそう頼むと、海面に出て船にしがみつく位置で技の精神集中に入る。
銃器で狙われる可能性があるが、この場所なら甲板からは死角になるからだ。
まずは、ディスペルガードとウォーターブリーズをかけ直すか。あとはフライトだ。
味方の援護で精神集中を乱されることなく、俺は技をかけ直す。
あまり時間をかける訳にはいかないので、これだけかけ直すと俺は再度海中に潜る。
ウィンディさん達や第1部隊のメンバーが戦っていたが、リバイアサンに苦戦していた。
リバイアサンにはストレングスがかかっているため細長いとは言え体長が20メートル以上ある。
頭の幅も2メートル余りあるため、小柄な人間は飲み込まれかねない。
それが縦横無尽に海中を動き回るのだ。
一発でも直撃を喰らえば命取りだ。
だが、海中では敵兵は銃器を使えないため、リバイアサン以外が相手なら陸上より有利な条件で戦える。
リバイアサンが負けると船を潰されると知り、敵も戦力の多くを海中に投入してきたようだ。
アウルスさんの指示もあったのか、第1部隊も次々と海底に潜ってくる。
敵の方が数がかなり多いが、メンバーの平均レベルはこちらが上だ。互角以上に戦えている。
とは言え、敵のリバイアサンは別だ。
放っておくと、こちらの犠牲が増えてしまう。
俺が引き付けるしかない。
俺は、リバイアサンに突っ込んでトリプルスマッシュをかます。
リバイアサンは身をくねらせてかわすと、横から俺に噛みついてこようとした。
俺は、リバイアサンの牙を左腕の盾で受け、右腕でリバイアサンの顔を引っ掻いた。
鱗が固いし、リバイアサンの図体がでかいため、かすり傷にしかなっていない。それでも血の匂いがしたから、出血はしたようだが。
俺もストレングスがかかっていれば体長7メートルはあるとは言え、リバイアサンとの体長差を考えるとそう簡単には倒せない。
タイムストップをかけることができたとしても、図体がでかすぎて1秒では殺せない。
攻撃技でダメージを累積させていければいいのだが、水中では基本的に攻撃技は使えない。
どうするか?
「俺が奴を引きつけている間に、アンチディスペルガードとディスペルマジックのコンボを頼む。」
俺は近くで戦っているウィンディさん達に頼む。
奴を倒すには、奴のバフを剥がすのが一番手っ取り早い。
何の事はない。
さっき、俺が敵のキリン達にやられた事だ。敵の立場になれば何をされるのが一番嫌かよく分かる。
俺は、ウィンディさん達を信じて再度リバイアサンと対峙するために前に立つ。
リバイアサンは俺に気づいて突っ込んできた。
「アンチディスペルガード」
ウィンディさんのアンチディスペルガードがリバイアサンに決まる。
「ディスペルマジック」×2
続いてドゥマさん、クァスさんのディスペルマジックが決まる。
よし、後は任せろ。
と思った瞬間、下からペガサスのマースとぶつかる。
「マース、一旦海の上に上がって技をかけ直して。」
エタニアさんの声が聞こえる。
下を見ると、先ほどのキリンと人間達がいた。
再度俺の技を引き剥がそうとしていたのか。
エタニアさんが気づいて、マースが俺の盾になってくれたのだ。
エタニアさん、マース、助かったぜ。
俺は、全然気付いていなかった。
しかし、その僅かの会話の間にリバイアサンは海中深くに潜っていってしまう。
いかにウォーターブリーズがあるとは言え、水棲生物ではない俺達には海底の水圧には耐えられないと俺はエルモンドで習った。
となると、先に目の前のキリン達を倒すしかない。
キリンを見ると、近くにいた人間に指示を出したようで、敵兵6~7人がマースの追撃を始めていた。
あのキリン、敵兵にすら指示を出せるレベルの幹部か。
手強いわけだ。
「ウィンディさん、まだアンチディスペルガードは残っているか?
あのキリンは敵の幹部のようだ。
無理をしてでも潰したい。」
「あと2回はあるわ。
ドュマ、クァス、目標はキリン。もう一発行くわよ。」
ウィンディさんが仲間に指示を出す。
俺も、キリンに見えるように精神集中を始める。
カモフラージュの意味もあるが、念を入れてアンチディスペルガードを使うためだ。
「アンチディスペルガード」+「ディスペルマジック」×2
ウィンディさん達の魔法がキリンを狙う。
が、キリンは近くにいた手下を壁にしてアンチディスペルガードを受けた。
手下には5レベル技のディスペルガードがかかっているとは思えないため意味がないし、当然のように敵のキリンは無傷だ。
遅れて俺もアンチディスペルガードをかけるが、キリンは別の手下を壁にして受ける。
ダメージを受けない技だと言え、手下を使い捨てかよ。
こいつは、ファーレンの時のキュウビ以上に禄でもねえ野郎だ。
そして、このキリンの地位はこの部隊の中でもかなり上位なのだろう。
敵の手下がどんどんと集まってくる。
これでは、きりがない。
そして、キリンは目の前に手下が来て射線が通らなくなると精神集中を始める。
だめだ。
力不足で押せない。
「ウィンディさん、一旦海の上に出るぞ。」
俺は、ウィンディさん達に指示する。
あのキリンは手下を平気で盾にする飛んでもねえ野郎だ。
だが攻撃する側からすれば、キリンの周りの手下を片付けないと、キリンに手が出せないと言う事でもある。
地上に出てきた所を広域攻撃技で攻撃するか。
だが、俺が使える広域攻撃技は大地系のフォッサマグナだけだ。
そして、敵にキリンがいるということは、敵にキリンの好相性技である大地系完全無効化技のアースイミュニティがかかっている可能性は低くない。
ウィンディさんにダイヤモンドダストをしてもらう手もあるが、1発だけだし、その1発で片付くような雑魚は敵にはいなさそうだ。
アイスレクイエムが技で使える第5部隊のアルマを呼べないか?
俺は空中に飛んで全体の状況を見る。
兄貴たち第2部隊は、甲板上で優位に戦っている。フォースフィールドで銃器の攻撃も防いでいるようだ。
ライン公の第4部隊は、銃器を警戒して海中からヒットアンドアウェイを繰り返していた。
第5部隊は、船を沈めたあと、俺達がいた敵の大型船に応援に向かったようだ。
しかし、★5フェンリルのアルマの姿が見えない。
アンチディスペルガード+ディスペルマジックを喰らったのか?
俺は、ウィンディさん達に今いる船にいる第1部隊の援護を指示すると第4部隊の船の方へ向かう。
海中にいるライン公を見つけ、船を動かしているくるくるを曲げて船を動けなくするからと言って援護を頼む。
俺は、ライン公と仲間に守られながら、タイムストップを使って船を動かしているくるくるの金属版を曲げる。
1秒では無理だが、3回4回かけることで曲げることができた。
「これで、この船はまともに動けなさそうだな。」
ライン公は言う。
「敵の大型船にいる第1部隊の援護を頼みたい。
敵の幹部にキリンがいて、フォッサマグナが効かない。」
俺はライン公に頼んで第1部隊の援護に行ってもらった。
次は兄貴の第2部隊だ。
兄貴が船上で敵を引き付けてくれている間に、船底から船を潰す。
この船は船上が戦場になっているため船底には誰もいない。
俺は同じ要領で船を動かしているくるくるを潰す。
「第3部隊長のガインだ。
この船を動かしている部分を破壊した。
もうこの船はまともに動けない。
第1部隊が苦戦しているので救援を頼む。
俺は第1部隊の救援に戻る。」
潰した後海面に顔を出して、俺は叫ぶ。
そして、銃器で狙われないよう水中を進んで大型船に戻る。
大型船に戻ると、俺達は甲板の上を制圧して、敵を建物の中に押し込めたらしい。
扉から出てくる敵がいれば集中砲火を浴びせて葬る態勢ができたようで、敵も迂闊に外に出てくる事ができないようだ。
第4部隊のライン公とジーク達がいた。
それだけでなく、第5部隊長のアレクシードの姿も見つけた。しかし、相棒のフェンリルのアルマがいない。
聞いてみると、銃器で撃たれ戦死したという。
ノリクの新兵器にミサイルガードを貫通して頭を撃たれたそうだ。
ミサイルガードを貫通するノリクの新兵器はやはり脅威だな。
俺達第3部隊は、最初、船底から攻めて正解だった。
俺達は第1部隊長のアウルスさんを探す。
すると、甲板の中央部で指示を出しているアウルスさんを見つけた。
しかし、座ったまま指示を出しているだけで動いていない。
何かあったのか?
状況を聞くと、アウルスさんは敵の銃器に撃たれて一度気絶したらしい。
ミサイルガードをも貫いてくるようだからな。
部隊のメンバーの援護でリザレクションをかけて傷口をふさいで一命をとりとめたものの、腹部に金属の弾が残っているという。
アウルスさんは、大事を取って極力動かないようにしているとのこと。
それ以外にも第1部隊には頭部を撃たれて即死したメンバーもいるそうだ。
俺達はアウルスさんに、現在の敵の状況を聞く。
現在敵は船の建物の中と海中にいるらしい。
船上の敵は建物の中に押し込めたので、
現在ドルカンコーチはじめ第1部隊のメンバーが手分けして建物の全ての入口を固めているそうだ。
ただ、それができたのは俺が船底から船が潰せると叫んだ結果、敵が慌てて戦力の大部分を海中に投入したので、甲板の戦力が手薄になったためらしい。俺が叫んだことで一応効果があったんだな。
逆に海中は敵の戦力が大きくて制圧されたようで、味方の部隊は全員船の甲板に上がったようだ。
海中の敵は数が多いため、いつ攻撃が来てもいいように警戒が必要とのこと。
俺達は後から来たメンバーに情報共有して警戒してもらう。
これでまだ合流していないのは兄貴の第2部隊だけか。
船は潰したからそのうちに合流できるだろう。
俺達は甲板の上で今後の方針を相談する。
「ガイン殿、どうやって船を破壊したのだ?」
アウルスさんに聞かれる。
「船を動かすために船底に高速で回転する金属の板があった。
そのまま触るのは危険だが、タイムストップで時間を止めると簡単に曲げることができた。
板を曲げると船は真っすぐ前に進めなくなった。
こんなに上手くいくとは思ってなかったんだが。
第2・第3・第4部隊が担当の3隻は事実上進軍できなくなったはずだ。」
俺が答えると、
「なるほど、敵は船底を決して制圧されるわけにはいかないようだな。
道理でなかなか海中から攻撃に出てこないわけだ。」
アウルスさんが言う。
「第5部隊は、巨大化したアルマが船ごと転覆させた。
船から脱出した敵に空中戦を挑まれ、アルマはじめ多数の戦死者を出してしまった。」
アレクシード隊長が報告する。
今回の戦闘は犠牲者が多いな。
相棒を殺されたアレクシード隊長の声も暗い。
「多くの犠牲が出てしまった。
だが、敵もこの船の船内と海中の船底だけになった。
この船を制圧すれば、レオグラードの城壁を攻撃される心配がなくなる。
あと少しだ。
頼むぞ。」
アウルスさんが、そう言ってメンバーを鼓舞する。
そうしていると、兄貴が第2部隊のメンバーを連れて帰ってきた。
「脱出した敵を片付けるのに手間取ったが、無事完了したぜ。
敵のリバイアサンが行軍不能になった船をメイルシュトロームで沈めてきた。
新兵器の秘密は渡したくないらしいぜ。」
兄貴が報告する。
となると、完全に残りはこの船だけか。
しばらく敵側の動きがない。
何か仕掛けてきそうだ。




