第62話 激務
翌日、俺とドルカンコーチはアウルスさんに教えて貰ってアースイミュニティーを習得した。
好相性技じゃない5レベル技を2時間ほどで習得したぜ。早くなったな。
次はいよいよ最難関のフォッサマグナだ。
既にアースイミュニティーを習得している兄貴は昨日からフォッサマグナの習得に挑戦しているが、苦戦しているようだ。
流石に「熊族にとっては」最難関技。一筋縄ではいかないらしい。
「パワー、インパルスを習得したときの事を覚えておるか。
その時に何を苦戦したか考えてみるといいぞ。」
自分も習得途中のドルカンコーチがアドバイスをくれた。
兄貴は何かを思いついたのか、ひたすら同じことを繰り返し始める。
午後になったが、兄貴はついに最難関技のフォッサマグナを習得した。
それだけでなく、ドルカンコーチまで習得してしまった。
まだ習得できていないのは俺だけだ。
「よし、ガイン。
習得したわしがフォッサマグナのコーチをしてやろう。」
ドルカンコーチが言ってくる。
こうなったらドルカンコーチに頼むしかないよな。
俺はドルカンコーチに怒鳴られながらも夜になったが何とかフォッサマグナを習得した。
そんなことをしていると、町からホーク隊長がやってくる。
フォッサマグナの練習はレオグラードの町の中では迷惑がかかるから町の外でやっていたのだ。
緊急会議を開くからピュートル公の館に集まって欲しいとのことなので俺達はすぐに館に向かう。
部屋に入ると、俺達以外は全員が揃っていた。
レオグラードでも、アウルスさん・兄貴と俺のモンスター3匹は完全に会議メンバーとして普通に参加している。
わざわざ俺達の到着を待っていてくれたほどだ。
エルモンドのようないい雰囲気だと思う。
「それでは全員揃ったので緊急会議を開きたい。
レオグラードの北隣の友好2貴族の町に多数のアンデッドが押し寄せてきている。
既に城門は締め切ったので問題はないが、アンデッドが周辺に拡散されているようだ。
そして、そのアンデッドは先ほどのマケルーノ侵攻軍の戦死者の成れの果てと思われる。
ケイシュールが我が軍の戦死者をアンデットに変え、レオグラード方面にばら撒いたと考えられる。」
アレクセイ将軍が言う。
ケイシュールの奴、ノリクの配下の死霊術師を使いやがったか。
前回逃がしたのが痛いな。
「イクソシズムがないと倒せないアンデッドなのか?」
兄貴が聞く。
「その通りだ。
レオグラードでイクソシズムが使えるものは冒険者を入れても30人余りだ。
しかも、イクソシズムは準備に膨大な時間がかかるにも関わらず、アンデッドの数が多すぎる。
イクソシズムで魂を開放するには相当な時間がかかるだろう。」
アレクセイ将軍が答える。
「私とパワー・ガインの3匹と冒険者1名は技でイクソシズムを使える。
技で準備すれば2分程度でイクソシズムを放つことができる。」
アウルスさんが言う。
「それは助かる。
是非ともアンデッドの開放部隊の主戦力になってほしい。
これで既に発生しているアンデッド対策はかなり楽になる。
では、アンデッドを作り出している死霊術師の討伐部隊について相談したい。」
アレクセイ将軍が続ける。
併せてケイシュールの暗殺も狙いたかったが、流石に俺達が行くわけにはいかないよな。
結局レオグラードの冒険者を含めた精鋭部隊が、死霊術師の討伐に向かうことになった。
その間俺達はせっせとアンデッドの開放だ。
ハイネ周辺の時よりも数が多いので、協力してもらえる冒険者が連れている★5モンスターにもイクソシズムを習得してもらって何とか対処した。
対処するまで4日かかったが、ようやくアンデッドの対応が終わる。
討伐部隊は見事死霊術師を退治したようだ。
凱旋した冒険者達を見て俺は驚く。
20人余りの冒険者の中に、ライン公と★5シリウスのジークがいるのだ。
あんたら、何やってるんだ?
「ライン公は連合国へ亡命すると聞いていたが。」
俺が聞くと、
「私も昔は冒険者だったからな。
レオニード将軍に許可を取って討伐隊に参加させてもらった。」
ライン公はあっけらかんとして答える。
「私はその時からのライン様の腹心だ。」
ジークが追加する。
なるほど、昔は1人と1匹のコンビで冒険をしていた訳か。
それでは報告に戻ると言って、ライン公達は部隊に戻っていった。
まあ、ライン公の性格的に連合国やピュートル公側についた方が合うだろうから、いいとは思うが。
そして、近辺のアンデッドの後始末が終わった後、ピュートル公の館で毎日の定例会議に入る。
その日の報告でついに、ウル様が無事救出されたと分かる。
ただし、ノリクに記憶を消されていたようで、回復には時間がかかるらしい。エルモンドに戻って療養するそうだ。
やはりか。ブライアンの予想通りだった訳だ。
とにかくウル様が無事で良かった。これで安心してノリクをぶっ潰せるな。
あと、死霊術師討伐部隊からの報告で死霊術師の正体はノリクの密偵隊長のダクロスだったとの事。
確かノリクの密偵隊長はアサシ・ダクロス・ヘルメス・シャミアの4人だったと聞いていたが、そのうちの1人を倒したという事だ。
これはでかいな。
あと、どうやらケイシュールとは連携が取れていなかったようで、幸いにもケイシュールと遭遇する事はなかったようだ。
討伐隊に犠牲者がなくて良かった。
マケルーノ公国周辺都市の冒険者数十名が協力してくれることになりレオグラードに向かっているようだ。
協力貴族当主の生き残りは誰もおらず、偶然館にいなかった1貴族の夫人と幼い世継ぎしか救えなかったようだ。
あとは、協力貴族の騎士隊長でケイシュールに下るのを良しとしなかった者が3名側近とともにレオグラードに向かっているようだ。
念のためスパイの可能性も考えた上で、部隊に編入するとのこと。
まあ、確かに敵のスパイが何人かは入ってきているだろうからな。
まだ、ウォルタンの新兵器は出発していないとのこと。
パヴェル・ノリク連合軍のレオグラード到着まであと12日程度掛かると考えると出発は5~6日後くらいと予想されているようだ。
先にウォルタンから地上部隊が出発するらしい。家督を譲ったとはいえノリクの義父であるジグムント・ミューゼル公が自ら率いるようだ。
レオグラードと周辺協力貴族から精鋭冒険者と仲間モンスター併せて74名と16匹が参加してくれるとのこと。
アウルスさんが先に到着したメンバーにアースイミュニティーとフォッサマグナを教え始めていた。
一応、各貴族が身元を確認した冒険者ばかりだそうだ。
ライン公とジークが含まれているけど、手当たり次第ってことはないよな。
全員の到着後に、ノリクの新兵器襲撃部隊を編成するようだ。
ケイシュールは、当主を殺害した周辺貴族の都市を概ね掌握したらしい。
制圧した周辺貴族の兵にかなりの死傷者が出たのと逃亡した兵士も少なくないので兵力は1万程度しか増えていないようだが、国力的には5万以上の軍を率いる勢力になったようだ。
ノリクの新兵器出発前までに、必要な訓練は終わらせるよう締めくくってその日の会議が終わる。
俺は、フォッサマグナを習得してやれやれと思っていたら、ストライフさんがやって来る。
「ガインさん、ドルカンさん、ポケットを増やす訓練しますよ。」
「ドルカンコーチはまだ魔法が使えないんじゃないか。」
俺が言うが、
「ガインさんがアンデッド退治に行っている間に低レベル魔法の構築について話をしました。
ドルカンさんの場合は、エクステンドに特化して集中的に覚えて貰いました。」
そうなんだ。確かにケイシュールの暗殺を考えるなら、ドルカンコーチも魔法のエクステンドを使える回数を増やしておいた方がいいよな。
「ウィルとゼルとヤヨイ隊長も訓練するのか?」
俺はストライフさんの後ろにいるメンバーを見て聞く。
「ええ。ウィルさん達はもうすぐ技のディスペルガードが習得できそうですので、ガインさん達が反復練習に入ったときに教えて完成させます。」
ストライフさんが言う。
ストライフさん、人間なのにモンスター相手に技を普通に教えてるよ。ハイスペックすぎる。
これで本人にポケット量の才能があれば魔術師として名を残せただろうな。
俺はストライフさんにポケットを広げる訓練をして貰いながら出陣の時を待つ。
そして、兄貴とアウルスさんはアースイミュニティとフォッサマグナを教えて回っていた。




