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熊王伝  作者: ウル
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第61話 方針決定

 次の日の朝、ピュートル公の館で作戦会議に入る。

 まずは、情報共有のための状況報告からだ。


 オーウェル様の所にも、ピュートル公への協力を止めればウル様を返して連合国の独立を認めるという書状が届いたらしいが、オーウェル様は拒否したようだ。まったくノリクの奴もしつこいな。ピュートル公との同盟関係が軋まなくて良かったが。

 さらに、魔王がウル様救出を昨日決行したはずだと聞かされる。結果はまだ分からないらしいが、上手くいっていて欲しい。

 だが、ノリクの暗殺は魔王に拒否されたらしい。魔王はあくまで協力者であり、オーウェル様が魔王に命令できる訳ではないので、ピュートル公に申し訳ないと言っていたそうだ。


 連合国の本隊がウラジオに集結するまであと1ヵ月。その後レオグラードに向かって進軍するので、到着まであと2ヵ月近くはかかるとのこと。

 派遣各貴族からの自己申告の数値を合算すると、援軍兵力は24万程度になるようだ。


 そして、パヴェル公の本隊がバイカルから帝都に向かって出陣したとのこと。パヴェル公が自ら率いている模様。

 今日にも帝都に到着し、ノリクの率いる皇帝直属軍と合流してレオグラードに進軍してくるようだ。12~13日でマケルーノ公国につくだろうとのこと。

 これで、合流前にマケルーノ公国を討つのは難しくなった。

 レオグラードからマケルーノ公国までは5日かかる。

 到着前に倒すためには、今日明日にでも再度出陣して数日でマケルーノ公国を破るしかない。


 ニコラ公には動きはないようだ。


 ウォルタンのノリクの本拠では、出陣の準備が進められている模様。レオグラードで合流できるタイミングを待って出陣するらしい。

 また、海からも船で出撃するらしい。

 船は僅か5隻らしいが、ノリクの新兵器のため要注意とのこと。

 オーウェル様からノリクの新兵器についての情報も共有できているようで、これについて会議で方針を相談することになった。


「では、まずはマケルーノ公国との再戦時期とノリクの新兵器対策について方針を決めたい。


 1つめの、マケルーノ公国との再戦をどのようにするか。

 選択肢としては大きく分けて2つだ。

 片方は、パヴェル公と合流される前に速攻で再度攻撃を仕掛ける場合。

 この場合は既にパヴェル公の本隊がマケルーノ公国に向かって進軍を始めているため、到着前の数日で勝負をつける必要がある。


 もう片方は、早急には攻め込まずレオグラードと周辺都市に籠城する場合。

 この場合は、パヴェル軍・皇帝直属軍・ノリクの新兵器を同時に相手をしなければならないことになる。」

 アレクセイ将軍が切り出す。


「合流前にケイシュールとは一戦を交えたい。

 以前説明した方法でケイシュールの暗殺を狙う。

 それが失敗した場合は、撤退して籠城もやむなしと考えるが。」

 アウルスさんが言う。

 兄貴達がケイシュールと戦っている間に、シャドウウォークで隠れた俺がタイムストップを使ってケイシュールの暗殺を狙う。

 俺としてもこれは是非ともやっておきたい。

 籠城は最後の手段だ。


「仮にケイシュールの暗殺に成功したとして、その後マケルーノ公国を占領し、パヴェル・ノリク連合軍の攻撃を凌ぐのは困難だと思われるが。」

 ライオネル公が言う。


「ケイシュールは本人1人がいるかいないかだけで戦況が大きく変わるぜ。

 籠城するにしても敵にケイシュール1人が加わるだけで、相当不利になる。

 できるだけケイシュール殺害を狙って、成功したとしても撤退して籠城するという方針じゃいけねえか?」

 兄貴が言う。


「失敗した場合、撤退中の軍に大量の隕石を落とされ相当の被害が出るのでは?」

 レオニード将軍が言う。

 確かにそれは否定できないな。


「ケイシュールの暗殺は、奴がレオグラード近辺まで来た時に狙うわけにはいかないですか?」

 アルク伯爵が言う。


「その場合、レオグラードの内部や城壁に隕石を落とされる可能性が出てくるぞ。

 それだけじゃなく、海からのノリクの新兵器も同時に相手をしなければならなくなる。」

 俺が言う。


「ケイシュール1人の暗殺だけを目標に出陣するのには無理がありませんか?

 もし悟られた場合、撤退するしかなくなりますが。」

 ライオネル公が言う。

 確かにこれもその通りではある。


「メリットとリスクを天秤にかけると決め難いですな。

 では、先に2つ目の課題であるノリクの新兵器対策について相談したい。

 敵の新兵器は遠方から金属の球を飛ばし、城壁を破壊できる機能があるという。

 さらに風や海流に逆らって高速で進むことができるとのこと。

 これらと戦うのにどのような戦力を充てるべきか相談したい。

 レオグラードにも船はあるが、話を聞いた限りまともに戦えば戦力にならない。

 連合国のオーウェル殿の話では、飛行可能な精鋭部隊を送って1隻ずつ潰すしかないようだ。」

 現状ケイシュール暗殺狙い賛成派の俺達は厳しいが、アレクセイ将軍が話題を変える。


「船の場所が分かれば、レオグラードに近づかれる前に精鋭部隊で潰せないでしょうか?」

 アルク伯爵が言う。


「まだ、船はウォルタンの港にいるようだ。

 敵がレオグラードを狙っていると分かっている以上、

 密偵から出発の連絡を受ければ、大体の位置は把握できるだろう。」

 アレクセイ将軍が答える。


「本隊と同時にレオグラードを攻撃できるような日程で出発するだろうな。

 ケイシュール暗殺が成功しても失敗しても、その後、すぐに新兵器潰しに行かないといけねえな。」

 兄貴が言う。


「早急にケイシュール暗殺作戦、その後、新兵器対策。

 日程的に間に合うでしょうか?」

 ライオネル公が言う。


「いずれにしても、新兵器にはレオグラードに近づかせずに潰したいぜ。

 レオグラードの城壁を破壊されるわけにはいかないからな。」

 俺は言う。


「船の大きさや搭乗人数は分かっているのですか?」


「4隻は比較的小型で百人程度、1隻は大型で数百人程度は乗れるようです。」

 アレクセイ将軍が答える。

 飛行できる精鋭部隊が1隻ずつ潰していくしかないよな。


「こちらも船を出すのは自殺行為だ。

 飛行できる精鋭部隊で1隻ずつ制圧していくのがいいだろう。

 出来れば、フォッサマグナのような広域攻撃技を使える者を1部隊に複数投入したい。」

 アウルスさんが言う。


「それはその通りなのだが、広域攻撃技を使えるものがどれだけいるか。

 軍の者だけではなく、冒険者を含めても、魔法で使えるものが十名もいるかどうか。

 冒険者の精鋭にも依頼して部隊を編成するとして、

 技で広域攻撃技を使えるアウルス殿にかなり頼らなくてはいけなくなるだろう。」

 アレクセイ将軍が答える。


「レオグラードや協力貴族に★5モンスターはいるのか?」

 俺が聞くと、


「レオグラードの軍にはいない。」

 アレクセイ将軍が協力貴族にも聞くが、軍にはいないようだ。


「レオグラードには、★5モンスターを連れている冒険者が5~6名いるが、個別に依頼をする必要がある。

 とは言え、前回のファーレン攻略の例を鑑みても、高レベル冒険者の協力を募って敵の新兵器を制圧する作戦は有効だと思える。

 協力貴族の皆様にも、領内の高レベル冒険者に依頼してもらい迎撃部隊を編成したいと思うがどうか?」

 アレクセイ将軍は、協力貴族達に聞く。

 同意する意見が多く、各貴族が★5モンスターを従えている又は広域攻撃魔法が使える冒険者に依頼することになった。

 冒険者の集まり具合を見て、改めて迎撃軍を編成するとのこと。


「あと、協力してくれることが決まった★5モンスターには私からフォッサマグナとアースイミュニティーを教えたい。

 そうすれば、迎撃部隊の戦力が飛躍的に上がるからだ。」

 アウルスさんが言う。


「それをすると、ケイシュールの暗殺を狙う時間がなくなるぜ。」

 兄貴が言う。


「では、ケイシュール暗殺部隊を派遣するかどうかを再度検討し、

 派遣しない場合は、その間に技の習得をして迎撃部隊の戦力を向上させるということでどうか。」

 アレクセイ将軍が言う。

 こうして、再び議題はケイシュール暗殺部隊を派遣するかどうかになる。


「現在のケイシュールの動きはどうなっているのですか?」

 ライオネル公が聞く。


「先程戻ってきた密偵の情報によれば、我々を撃退した後、ケイシュールは隕石を使って次々と近隣小貴族達の館を破壊。

 貴族の当主を館ごと破壊して殺害し、マケルーノ公国に従うように迫ったようだ。

 残った者も、単独では勝てないと判断して次々とマケルーノ公国の軍門に下ったとのこと。」

 アンネコフ内政官が報告する。


「それは急がないと友好貴族が滅ぼされるのでは?」

 ライオネル公が言うが、


「今すぐ出発しても間に合わないでしょう。

 現地からここまで報告に戻る時間を鑑みれば、既に終わっている可能性が極めて高いです。」

 アンネコフ内政官はまるで他人事のように冷静に報告する。

 一緒にケイシュールと戦ったマケルーノ周辺の協力貴族達の話なのに。


「アンネコフ殿、そう言う話は最初に報告してほしい。」

 アレクセイ将軍が言うが、


「会議が開始後、届いたばかりの報告ですので。

 すぐに報告して軍を向かわせても間に合わないと思いましたので、生き残った重要人物や協力してくれる現地の冒険者を募ってレオグラードに迎えるよう手配しましたが。」

 アンネコフ内政官は冷静に返す。

 この人、下手にマケルーノに再侵攻してレオグラードの犠牲を増やさないように聞かれるまで伏せていたな。

 冷たく感じるが、ある意味今からできる事を冷静に対応したとも言える。


「確かに、今すぐ向かっても敵の態勢が整った後にしか到着できないだろうが、

 友好貴族をみすみす見捨てるというのは。」

 今知ったばかりのアレクセイ将軍の方は歯切れが悪い。

 冷静に考えれば間に合わないし、今下手に向かっても犠牲が増えるだけだと分かっているだけにアンネコフ内政官に強く言えないようだ。


「我々が撤退した時点で想定しておくべきでしたな。

 総大将の戦死で余裕はなかったでしょうが。

 今からの援軍や現地での反乱等は困難でしょうから、アンネコフ内政官の案の通り少しでも協力貴族の生き残りや協力冒険者を募ってレオグラードの戦力を増強するしかないと思われるが。」

 レオニード将軍が言う。

 ピュートル公の主力軍を退けた相手だ。こちらの主力が撤退すれば周辺の弱小友好貴族がどうなるかは火を見るより明らかか。

 既に、救援に行かない方向で話が進んでしまっている。


「となると、今は態勢を整え、敵がレオグラードに到着する前に、別働の敵の新兵器だけは潰す方向になるのか?」

 俺は聞く。

 誰もここでマケルーノ再侵攻を主張はしなかったため、事実上ケイシュール暗殺作戦は敵がレオグラードに来るのを待ってから行う方針となった。


 当面は、協力冒険者に協力依頼を行い、高レベル技魔法を習得して、敵の新兵器の撃退に向けて準備を進めることになった。


 とりあえず、時間ができたからウィルとゼルに5レベル技をしっかり習得してもらう余裕ができたな。

 アウルスさんから俺がアースイミュニティーとフォッサマグナを習得するよう言われたので、頑張って習得するか。

 熊族は攻撃技が苦手とか言ってられないからな。

 ウィルとゼルに無茶を言った手前、俺も頑張らないと。


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