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熊王伝  作者: ウル
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第58話 ワンマンアーミー

 俺とアルク伯爵は一緒に会議に呼ばれて結果を聞かされるとともに、マイアー騎士団長も入れて緊急会議に入る。

 マケルーノへ侵攻したウラジミール将軍だけでなく、★5ガルムのアレスも戦死したという。

 アレスはフェイタルライフの技で一時的に不死身になれる筈だから尚更驚く。


 生き残った使者の話では、マケルーノ公国のケイシュール公が1人で数万の軍を相手にしたらしい。

 ケイシュール公が魔力を放つ度にピュートル軍の中に次々と空から隕石が落ちてきて、付近にいた兵士に多数の被害が出たらしい。落下地点のすぐ側にいたものは全員即死、ある程度離れていた者も岩の破片の飛散により重傷で動けなくなったという。

 化け物だな。

 話を聞き、こんな奴に勝てる訳ないだろと思ったのか場の雰囲気が暗くなる。


「ケイシュールが技を放った後、次の魔力を放つまでに必要とする時間は分かっているのか?」

 兄貴が最初に口を開く。

 明らかにケイシュールと対決しようと具体的に考えている兄貴の一言が、悲壮感に包まれていた雰囲気を変えた。


「私は遠くから見ていたのですが、最初はひたすら連射をする感じではなかったのです。

 アレス様はじめ、我が軍の精鋭が空中に1人でいたケイシュール公に挑んでいる間に、我が軍はマケルーノの町を包囲攻撃を開始したのですが、アレス様達が返り討ちに遭い、自由に動けるようになったケイシュール公が町を包囲している我が軍に、2~3秒間隔で隕石を連発してきました。」

 使者が答える。使者は、戦死したウラジミール将軍配下の隊長らしい。実際に自分が見た内容を話せるという事で、今回の使者に選ばれたようだ。


「2~3秒に1発と言うのが最大速度だな。

 そして、戦闘中に無闇に連発しなかった事からも、使える回数が無限ではないようだな。

 人間が使う魔法のようにポケットの数か何かの制限があるのだろう。」

 アウルスさんが言う。


「ですが、回数はかなり多いようです。

 マケルーノの町を包囲していた我が軍がほぼ壊滅して撤退を開始するまで攻撃は止みませんでした。」


「撤退を始めた軍にさらに追撃で連発すれば全滅させる事もできただろうに、しなかったんだな。

 こちらの兵士数を減らすためだけに、撃ちたくはなかったという事だ。」

 俺は思ったことを言う。

 明らかにケイシュールは、隕石を落とす回数をケチった。

 無限に使える訳ではない事は明らかだ。


「奴が魔力を放ってから、隕石が落ちてくるまでの時間は分かるか?」

 兄貴が聞く。


「隕石は空から落ちてきましたので、だいたい15秒くらいは時間がかかります。

 ですが、ある程度隕石が近づいてこないと落ちてくる場所も分かりませんし、隕石を見てから退避することは不可能でした。」


「隕石から魔力は感じたのか?」


「隕石自体は未確認ですが、ケイシュールが魔力を放ったことはアナライズマジックをかけた者が証言していましたので、恐らく魔力は感じられるかと。」


「パワー殿、フォースフィールドで隕石を防ぐことをお考えか?」

 レオニード将軍が聞いてくる。


「そうだ。

 発動時間的には余裕で間に合う。

 問題は、落下地点まで移動できるかだ。」


「それ以前に、フォースフィールドは隕石攻撃を完全に防げるのですか?」

 マイアー騎士団長が聞いてくる。


「やってみないと分からねえ。

 だが、記録では魔王の攻撃ですら防いだらしいから、防げる可能性は高いと思っているぜ。」


「確かに、フォースフィールドを力づくで突破されたという記録はありませんな。

 隕石の攻撃を防ぎ続けて弾切れを狙うのですか?

 当然パワー殿のいない場所を狙って来ると思われるが。」

 ライオネル公が言う。


「いや、奴に攻撃に行くときに隕石で妨害されてもフォースフィールドで防いで近づくためだ。

 奴を倒さない限り勝利はねえからな。」

 兄貴が言う。


「ケイシュールを倒すには、私がシャドウウォークをかけてガインに気付かれないまま近づいてもらい、タイムストップをかけてから姿を現し、動けないところを討ち取る方が効果的だと思うが。」

 アウルスさんが言う。

 俺の名前が出てきた。


「だが、シャドウウォークは解除後0.5秒の硬直時間がある。実質動ける時間は最大でも0.5秒だ。」

 俺は答える。

 ★5カリストである俺の専用技はタイムストップ。

 1秒くらいの時間を止めることができる。

 だが、シャドウウォーク解除の硬直時間を考えると現実的に思えない。

 第一ケイシュールが動き回っていれば都合よくシャドウウォークが解除できない。


「厳しいのは分かっているが、1つの攻略方向としては考えておきたい。」

 アウルスさんが言う。

 確かに、最大0.5秒の攻撃が可能であれば、ケイシュールを仕留められるかも知れない。

 時間が止まってしまえば、防御・回避行動はとれない。

 動けなければ、奴だって生身の人間だ。

 時間が止まっている間に首筋を掻き切れば殺せる筈。


「いい案だと思うが、俺はまだタイムストップを習得していないぜ。

 何とかして習得したい所だが。

 あと、硬直時間を踏まえると効果時間は最大でも0.5秒だから確実に仕留められるとは限らねえ。

 一度失敗すると、奴も警戒してきて難しくなるだろうからな。」

 俺は懸念事項を言う。


「エクステンドがあるだろ。

 専用技のタイムストップは魔法で使えないが、エクステンドなら魔法で使える。

 魔法で発動するたびに効果時間が延びるぜ。」

 兄貴が言う。

 なるほど、エクステンドがあったか。

 エクステンドを技で使うと時間がかかるが、魔法なら予め時間をかけて準備しておけば一瞬でかけられる。

 今の俺のポケットは15レベル分だから、2回エクステンドして、最大3秒は行けるな。


「だが、ガイン殿が攻撃を狙う間、直接戦闘する者がいないと、近づくことは難しいだろう。

 それをパワー殿が行うということか?」

 アルク伯爵が聞く。


「そうだ。

 俺様も奴を倒すことを狙うが、本命はガインだな。」

 兄貴が言う。

 ダガンを相手にした時とは囮と本命が逆だな。

 これは、失敗は許されなさそうだ。


「そうだな。

 なんとかタイムストップを習得して狙いたいな。

 あと、アレスと一緒にケイシュールと直接戦った奴の中で生き残りはいるのか?

 いるなら少しでも話を聞いておきたいのだが。」

 俺が聞くと、


「エルシアのノエル様の配下の数名が生き残りレオグラードにおります。」

 使者が答える。

 一度レオグラードに戻らないとこの辺りの話は聞けないか。


 結局、ファーレンの守りはマイアー騎士団長に任せ、俺達は明日レオグラードに向けて戻ることになった。


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