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熊王伝  作者: ウル
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第56話 ファーレン攻略戦「2」

「お前達、全員でこの熊を攻撃するのじゃ。」

 キュウビが命令する。

 自分は見えない障壁の中に隠れて、手下に攻撃をさせるつもりらしい。


 今まで見た感じ、触った部分の形や敵モンスターの技の消え具合から、キュウビの障壁はキュウビの周囲に球体状でかかっているようだ。

 この障壁は敵からも攻撃できないようで、障壁がある限りキュウビ自身も障壁の外へ攻撃はできないようだ。

 障壁の効果が切れてキュウビがフリーになる瞬間が危険だが、このままでは埒が明かないので、手下モンスターを何とかするしかない。

 そのためにはどうするか。


「お前達、じっとしていたら首輪の効果を消してやるぞ。

 俺がディスペルマジックの技を使えば、首輪の効果を一時的に消すことができるぜ。」

 俺は手下モンスター達に向かって叫ぶ。

 見た感じ、こいつらのしている首輪は全部量産型だ。

 大人しくさえしてくれれば効果を消すことができる。


「本当か?」

 手下モンスター達がざわめき出した。


「いいか、2回技をかけるまでじっとしてろよ。」

 俺は、一番近くにいた★3レオに近づくが、★3レオはじっとしている。

 他の手下モンスター達も黙って見ている。


「ディスペルマジック」

 俺は、1回目のディスペルマジックを首輪の水晶にかける。

 よし、8割方効果は消したな。


 そして、2回目の精神集中を始めた時、


「わらわを裏切りおって、死ね。」

 後ろからキュウビの声が聞こえる。

 すると、★3レオの首輪を発動させたようで、目の前の★3レオが苦しみ始めた。


「もうちょっとだったのに。

 貴様、仲間を殺すとは何事だ!」

 俺はキュウビに向かって叫ぶと同時に飛び掛かる。

 だが、またしても見えない障壁に阻まれる。


 今、障壁を立てるために再度精神集中したよな。

 それにしても、この障壁の技の精神集中の時間が短すぎる。サンダーより早いんじゃねえのか。


 だが、俺がディスペルマジックを始めた時に、すぐにキュウビが首輪を発動してこなかったこと、

 そして、俺が攻撃しようとしたときに再度障壁を出す技を使ったことからも、

 障壁の向こう側にいる相手の首輪を発動させることはできないのだろう。

 他の奴を救うためには、障壁があるうちに終わらせる必要があるな。

 俺は、他のモンスターを救うための算段を素早く計算した。



「お前達、早くこの熊を倒すのじゃ。

 攻撃しない奴は後で、そこのレオのように苦しむことになるぞよ。」

 キュウビが言う。

 既に★3レオは息絶えていた。


 そして、死にたくない思いから手下モンスター達が俺に近づいてくる。

 今度は近接攻撃をしてくるようだ。

 さすがに、★4込みの30匹以上を俺だけで相手にするのは厳しい。


 どうせキュウビを攻撃できないし、一旦引くか。

 俺がそう思ったとき、


「ガイン大将、助けに来たぜ。」

 後ろからゼルの声がした。

 ゼル隊長が空中の部隊をあらかた片付けて応援に来てくれたのだ。


 敵の手下モンスターとゼル隊の戦闘が始まる。

 俺はキュウビの障壁が消えた瞬間キュウビを狙えるよう、キュウビの障壁の前で待つ。


 それと同時に、しばらく見ていなかった西門の方を見た。

 既に西門を開けることに成功したようで、レオニード将軍の部隊が城内になだれ込んできている。

 兄貴の姿も見える。俺の代わりに兄貴が西門を開けるよう動いてくれていたようだ。


 ヤヨイ隊長とボルンガが、アースクエイクにディスペルマジックをかけている。

 これで、本隊の大部分が城内に入れば勝ったも同然だ。

 これで大勢は決まったな。

 なら、俺は目の前のキュウビを倒さないとな。


「この障壁は自分も越えられないだけでなく、外にいる手下の首輪の発動もできないようだな。」

 俺は見えない障壁の中にいるキュウビに言う。

 見えない障壁でも音が届くことは既に確認済みだ。

 触覚でいつ効果が切れても攻撃に入れるよう態勢は万端にしておく。

 図星なのか、キュウビは俺を睨みつけるだけで何も言わない。

 ほぼ確定の予想だったが、これでキュウビの反応からも裏付けが取れた。


 再度西門を見ると、既にかなりの部隊が城内に入ることに成功したようで、レオニード将軍がしっかりと部隊の隊列を整え始めている。

 アウルスさん達も周りをしっかり警戒している。

 ここまで体制が整えば、下手に西門前に攻撃に来たところで多勢に無勢。返り討ちにあうだけだろう。

 やはりマイヤー騎士団長の判断は早いようで、西門を目指していた部隊が既に一斉に撤退していた。


「モンスター部隊、全軍、館まで私に付いて撤退。

 すぐに、エルザから30メートル以上離れろ。」

 その時、上空から声がする。

 ★5シリウスだ。


「ジーク、わらわを見捨てるのか?」

 キュウビがジークらしきシリウスに向かって叫ぶ。


「エルザ、お主なら独力で逃げられるであろう。」

 シリウスはそれだけ言うと、首輪をつけた手下モンスターを連れて撤退していく。


「ゼル、深追いはするな。」

 俺はそう言って、手下モンスターをわざと撤退させた。

 名前がエルザらしいこの★5キュウビだけは絶対に仕留めるためだ。


「ガイン、無事だな。」

 兄貴もサラ隊を連れてやってきた。

 見えない障壁がなければ、こいつは既に袋の鼠だな。


「兄貴、こいつは首輪をしていないだろ。

 ノリクの幹部だぜ。

 手下を平気で殺すとんでもねえ野郎だ。」

 キュウビを指して俺は兄貴に言う。


 見えない半球体の障壁の中にいるキュウビを俺と兄貴、ゼル隊のメンバーが完全に包囲している。

 キュウビは、何か精神集中して自分を強化し始めた。


「ディスペルマジック」

 俺は再度見えない障壁に向かって放つが、全く効いた気配はない。

 アナライズマジックをかけて確認してみても効果が全く弱まっていないことが分かる。


 その間に、見えない障壁が消えたので俺は攻撃しようとするが、タイミングを分かっていたかの如く、キュウビに見えない障壁のかけ直しをされてしまう。


「キュウビにアナライズマジックは効かないようだぜ。」

 兄貴が言う。兄貴はキュウビ本人にアナライズマジックをかけたが、障壁に阻まれて効果が分からなかったようだ。


 キュウビは、障壁の効果時間の間に着々と強化技を自分にかけていた。

 そして、障壁の効果が切れるとすかさずかけ直しを行う。


「この障壁の技の効果時間は一定じゃねえな。」

 兄貴が言う。

 確かにそうだ。今回の障壁はさきほど比べて効果時間が長かった。

 見えない障壁の技は効果時間が一定ではない。

 にも拘わらず、キュウビはまるで効果が切れるのを待ってたとばかりに次を用意できるのは何故だ?

 キュウビ自身が効果時間を調節することができるとしか考えられない。


「ホーク隊。

 このキュウビは、強化技をかけ終えたところで、空中から脱出を図るはずだ。

 逃がさないように待機しろ。」

 俺はホーク隊に指示を出す。


「ガイン大将。ゼル隊もまだ飛べるぜ。

 ゼル隊も待機するぜ。」

 ゼル隊長が言う。

 そろそろ切れてもいい時間だが、フライトをかけ直したのか。


「ゼル、頼むぞ。」

 俺がそう言って、ゼルに頼むと。


「ゼル隊、障壁の周りを空中も含めて完全に包囲するぞ。」

 なんと、ゼル隊のメンバーは半球体の見えない障壁の周りを隊のメンバー全員で空中も含め完全に埋めてしまった。

 まさに、肉壁で敵のキュウビの脱出を阻んでいる。

 これで、見えない障壁の効果が切れたとしてもキュウビは逃げられないだろう。

 ゼル、良く思いついたな。

 それをしっかりと実行するだけの統率力も兼ね備えている。

 俺はゼルを見直した。いや、以前から評価はしていたけどな。


 西門の方を見ると、本隊は完全に入城が完了し、右翼左翼も西門に回って続々と門をくぐっていた。

 敵は、ほとんど戦闘することなく領主の館の方へ撤退したようだ。

 逆に言うと敵兵力はほとんど減っておらず、3万の敵がしっかりと館の周りに残っているということだ。

 3万の敵を3万5千の本隊だけで相手するのはきつい。だが、これに右翼左翼を加えて8万になれば、敵もひとたまりもないだろう。

 ここまでこれば、この先敵に脱出されたとしても、ファーレンを押さえれば後ろは安全になるので問題はないと事前打ち合わせ済みである。


 俺としては、右翼左翼の準備が整う前に、このキュウビを倒したい。

 だが、キュウビも諦めが悪く、ひたすら見えない障壁をかけ直す。

 この障壁はディスペルマジックも効かないので、俺達も手の出しようがない。


「ガイン、しばらく頼むぜ。」

 兄貴が一旦キュウビの前を離れた。

 キュウビを完全に包囲をしている以上、兄貴がいなくても問題はないだろう。

 キュウビが脱出を図るときが勝負だ。


 30分くらいしただろうか。

 兄貴が戻ってきた。


「ガイン、俺様が障壁を壊すから、勝負をかけるぜ。いいな。」

 兄貴が言う。


「兄貴、この障壁を消せるのか?」

 俺が聞くと、


「まあな。

 俺様の目の前で何度もフォースフィールドを使ったのが運の尽きだったな。

 しっかり覚えさせて貰ったぜ。」

 兄貴が言う。


「そうか、貴様は★5オニクビ。相殺技を使う気か。」

 キュウビが言うが、明らかに焦っている。


 兄貴に聞くと、★5オニクビと★5キュウビは専用技が同じフォースフィールドらしい。

 モンスターの中にはこのように複数のモンスターで共通の専用技を持つ者もいるようだ。

 しかも、この技は反転して使用することにより、効果を相殺して消すことができるという。

 ★5オニクビに進化した兄貴は、当然自分の専用技であるフォースフィールドについて色々調べていた。


「フォースフィールド「相殺」」

 兄貴が技を放つ。

 その瞬間キュウビの周りにある見えない障壁が消える。


「フォースフィールド」

 包囲していたメンバーが一斉に障壁が消えた瞬間一斉に襲い掛かるが、少し狭くなった障壁に阻まれる。

 フォースフィールドは、障壁をかける場所に誰かがいると技が失敗するので、それを避けるためにキュウビは範囲を少し狭くしたのだ。

 往生際が悪い。兄貴に相殺技をかけられれば何度でも消されるのに。

 兄貴はすかさず技の精神集中を始める。


「フォースフィールド「相殺」」


「フォースフィールド」

 キュウビは再度フォースフィールドをかけ直すが、更に範囲が狭まっている。

 既に、障壁の外側は完全に包囲されており、逃げることはできない。

 あと数回相殺したら終わりだな。


「フォースフィールド「相殺」」

 兄貴が障壁を相殺して消す。


 キュウビは、今度は飛行特攻して体の小さい★2ウルフのメロに体当たりをして吹っ飛ばそうとするが、隣にいたゼルにしっかりフォローされて、無駄に終わる。

 あっという間に、キュウビは捕らえられてしまった。

 俺は、キュウビにかかっている技を全て解除すると、ストライフさん達を呼んで逃げられないようキュウビをしっかりと縛ってもらった。


 西門近辺を見ると、8万の大軍がようやく集結したようだ。

 南門・北門では、町の住人が脱出を図っている。既に門の外にいた右翼・左翼も西門の中に入ったので、脱出しようと思えばいつでも脱出できる。

 寧ろ、敵兵が脱出して兵力が減る方が望ましいという事前打ち合わせ通りだ。

 だが、脱出しているのは住人ばかりで、敵兵はほとんど脱出しているようには見えない。


 その後、右翼左翼が完全に城内に入るまでの間に、

 レオニード将軍が★5キュウビを尋問しようとしたが、情報を話すどころかレオニード将軍に技をかけようとしたので、後ろにいたレオニード将軍の腹心がその場で殺害したそうだ。後から聞いた話では、キュウビが厄介な魅了技をかけようとしていたので危険と判断しての事だった。

 まあ、俺としても、仲間を平気で使い捨てるこいつを生かしておく気はなかったけどな。



 そんな事をしている間に、8万の軍全員が城内で態勢を整えた。

 敵兵は、ラインの館周辺に集結して抗戦をするつもりらしい。

 3万ほどの敵兵がしっかりと集結している。

 しかし、城壁と言う鎧を失った以上、野戦同様の戦場で2倍半の戦力差を覆すことは困難だろう。


 敵の指揮をしているのは騎士団長のマイアーと★5シリウスのジークのようだ。

 2倍半の敵に城内に入り込まれて、隊列が全く乱れていない時点で、マイアー騎士団長の統率力はかなりのものだろう。

 本人の殺害を狙うにしても隣に★5シリウスのジークがしっかりと警護している。そう簡単にはいかないだろう。

 そう言えば、当主のライン・ミューゼルがいない。館の中にいるのか、それとも、脱出したのか?


 俺達は、アルク伯爵の所に戻り、これからの進軍について打ち合わせていると、本隊から伝令が入った。

 敵の★5シリウスのジークが停戦交渉をしたいとレオニード将軍のところに使者を送ってきたらしい。

 レオニード将軍は、このまま戦うと勝てるにしても相当の犠牲が出ることを考慮し、話だけは聞く事にしたそうだ。

 アルク伯爵は左翼の指揮で動くことはできないので、アルク伯爵の指示で、俺がアルク伯爵配下の伝令を連れ、内容伝達とレオニード将軍の護衛のためにレオニード将軍のいる本陣へ行く事になった。


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