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熊王伝  作者: ウル
55/62

第55話 ファーレン攻略戦「1」

 作戦会議で、既に戦争状態であることはお互い分かっているという事で、パヴェル公が動く前にファーレンとマケルーノを占領する事になった。

 2日後、準備が完了したため、俺達はファーレンへ向けて軍を向ける。


 ファーレン侵攻軍は、レオニード将軍の率いる本隊3万5千、ディビアン公国軍と一部協力貴族の右翼2万2千、残りの協力貴族の左翼2万3千の3部隊に分け、ファーレンの町を包囲するように進軍するが、今は街道を行軍中なので、右翼・本隊・左翼の順番で進軍する。


 モンスター部隊も3つに分け、アウルスさんがレオン隊・ヤヨイ隊を率いて本隊に、兄貴がホーク隊の半分「ボルンガ別隊」・サラ隊・ウィル隊を率いて右翼に、俺がホーク隊の半分「ホーク本隊」・ゼル隊・アリサ隊を率いて左翼と同時に行軍する。

 ボルンガは統率もできるようになってきたので、ホーク隊の半分を任せて別隊として行動する事になった。


 冒険者部隊は、フォノア隊が兄貴にいる右翼に、ストライフ隊が俺のいる左翼についた。それ以外に協力してくれるレオグラードの冒険者が本隊についている。


 俺が行動を共にする左翼の指揮者は、アルク伯爵だ。

 オーウェル様の爵位も伯爵なので、オーウェル様と同クラスの貴族と言う事でもある。

 ピュートル公の協力貴族の中でも、ディビアン公国に次いで規模の大きいアルク伯爵が自ら指揮を執るらしい。他の協力貴族は当主を本拠に残しここには軍事責任者がいるだけなので、実質左翼はアルク伯爵が率いる事になる。


 俺はアルク伯爵と打ち合わせ、モンスター部隊の配置を決めた。

 ゼル隊とアリサ隊が軍の左右から周りを警戒しながら行軍する。

 ホーク隊の半分は、アルク伯爵の本隊の荷物にとまりつつ、交代で空中から軍の周りを警戒する。

 そして、俺はアルク伯爵のすぐ側を行軍する事になった。


 ファーレンまでは4日の日程だ。モンスター部隊なら1日で行けるが、歩行する人間の軍と同時に行軍するので時間がかかる。

 道中、アルク伯爵と話をしたり、報告のやり取りをしながら進軍した。

 アルク伯爵はモンスターの軍に興味があるようで、俺達の話を色々聞いてきた。

 今日初めて一緒に行軍する俺とアルク伯爵が旧知の仲でもあるかの如く話しまくるので、アルク伯爵の側近の騎士隊長2人に呆れられてしまったが。




 行軍を開始して3日目、軍の上空を何かが通過する。

 ボルンガ隊、ヤヨイ隊のメンバーが追いかけたようだが、相手はスピードとフライトを併用しているようで、すぐに距離を離されてしまった。

 ホーク隊長も部隊を出動させるが、追いかけるのは無理と判断したようですぐに戻ってきた。


「報告します。

 我が軍の上空を通過したのは、白銀色の狼族のモンスター1匹。

 レオニード将軍のいる本隊の上で、何か技を1つ使ったようですが、攻撃ではなかったようで詳細は不明。

 それだけすると、軍全体の上空を通過して去っていきました。」

 ホーク隊長がアルク伯爵と俺に報告してくれた。


「狼の大きさは分かるか?」

 俺が聞くと、


「近づくことはできませんでしたが、狼族にしてはかなり大型の部類と思われます。」

 ホーク隊長が答える。


「と言うことは、★5シリウスのジークの可能性が高いな。」

 アルク伯爵が言う。

 他に銀色の狼は★3シルバーウルフしかいないし、シルバーウルフは比較的小柄だからな。


「俺達の軍の偵察か。

 ラインの護衛と言っていた割には積極的に動くんだな。

 これで、こちらの軍の兵力は把握されたと見るべきだな。」

 俺が言うと、


「ジークがここまで行動力のある相手とは思わなかった。

 使った技と言うのが気になるな。」

 アルク伯爵が言う。


「強化技なら予め使っておく。敵の前で使うのはあり得ねえ。

 攻撃技ならかけられた時点で分かる。

 探知技だろうな。

 ★5シリウスの専用技センスイービルかも知れねえ。」


「レオニード将軍とその周辺にかけたとして、反応があるのか?」


「敵対行為をしているのは間違いないだろうが、邪悪な行為はやっていないと思うが。」

 俺は言うが、誰も使えない技の効果の事、結論が出る筈もない。


 そうこうしている内に本隊から伝令が来て、ジークらしき★5シリウスが偵察に来たとの報告が入る。

 追加情報として、アナライズマジックをした結果、ジークらしき敵が使ったのは不明探知技だと分かった。

 ほぼ間違いなくセンスイービルだろうな。


 明日はファーレンに到着するため見張りはしっかり行ったが、夜襲はなかった。

 ファーレン近隣の貴族も大人しくしているようで姿は見えない。


 翌日の午後、遠くにファーレンの町が見えてくる。




 ファーレンの町には、西門・南門・北門の3つの門がある。

 俺達は、予定通り西門前に本隊が、南門前に右翼、北門前に俺達左翼が包囲するように移動していく。


 敵は、籠城するようだ。

 町の外には一切の兵力を配分せず、城壁の上の見張り台に多数の弓兵を配置している。

 とは言え、見張り台自体が大して大きくはないため、配置できる兵数も限られる。


 さらに、城壁の上に鳥族や竜族のモンスターの姿が見える。

 遠くが見えるホーク隊長に確認してもらったが、首輪をつけている者はいないようだ。

 傍に弓兵とは装備が違う人間が5人いる。冒険者というかモンスター使いのようだ。

 弓兵以外で見えるのは、モンスター使いが5人と鳥族5匹・竜族3匹。

 アレスがファーレンの冒険者を引き剥がす工作をしてくれたので、数が少ないのだろう。


 基本方針としては、本命の西門攻略支援のために、三方向から包囲して攻撃する布陣だ。


 予め打ち合わせした左翼の役割は、1つめに町の外にいる敵を蹴散らす事。

 だが、現状敵は全て町の中に籠城しているからこれは必要ない。


 2つ目に、ある程度近づいて弓兵やモンスタ使いと交戦する事。

 もちろん、こちらの本命のカモフラージュのためだ。


 アルク伯爵は城の前まで軍を前進させ、見張り台の弓兵と弓の打ち合いになる。

 敵の方が高度が高いのでこちらの弓はほぼ届かないが、カモフラージュなので問題はない。

 数が圧倒的に違うので、敵の方がいつ総攻撃が来るかビクビクしているだろう。


 敵の鳥族竜族のモンスターが飛行して空中から攻撃技を仕掛けてきた。

 が、弓が届かない上空から攻撃技を使うだけで牽制にもなっていない。

 そりゃ弓が届かないとは言えこっちは2万3千、向こうは8匹じゃそうなるな。

 これだけ数が違えば技を喰らった負傷者の手当ても余裕でできる。


 とは言えこちらの軍の主力の弓が届かない以上、俺達モンスター部隊で迎撃しないとな。

 ホーク隊で相手してもいいのだが、別の任務があるのでここはダガンとアリサ隊に任せる。

 主力の弓隊は不用意に近づいてくる敵がいないかをしっかりと警戒している。

 まあ、近づいてこないだろうが。大量の矢でハチの巣にされるだけだしな。



 その間に、俺・ホーク隊長・ゼル隊長の3匹でゼル隊全員にフライトをかける。

 勿論それ以外の強化もしっかりと済ませる。


 準備ができると、俺とゼル隊のメンバーは空中に浮く。

 そして、本隊や右翼を見ると、準備ができているようで向こうのメンバーも空中に浮いていた。


 俺は、アリサ隊長とダガンに後を任せ、ホーク隊とゼル隊を率いて空中を西門の方へ飛んでいく。

 まずは、近くにいる飛行可能な敵を倒し、西門の北にある2つの見張り台を制圧する。


 それと同時に、ホーク隊長に西門へつながる主要道路にアースクエイクをかけてもらった。

 俺達の意図に気付いたのか、北門から西門に向かって衛兵が大勢移動をし始めた。

 北門の前の兵士を半分まで減らして西門に回すつもりのようだ。

 敵からすればフェイクの可能性もあると思うのだが、躊躇がなかったな。

 さらに、ラインの館周辺の兵士まで西門に向かって動き出してきた。

 結果、一部の衛兵にアースクエイクの壁を越えられてしまう。


 やはり、敵のマイヤー騎士団長の判断は早いな。

 しかも、こちらの意図を正確に読んで的確な指示を出してくる。

 まあ、これくらいは仕方ないか。想定の範囲内だ。


 町の中央広場から戦場全体を見渡して指示を飛ばしているマイヤー騎士団長らしき姿が見えた。

 今いる西門からは遠いし、護衛もぎっしりついているし、本物と言う保証もないしな。

 今わざわざ遠方のマイヤー騎士団長を潰しに行く手はないな。


 それでも、こちらは飛行できるモンスター部隊を主力とした機動部隊。

 いかに敵の判断統率が早いと言っても、それ以上の速さで動いているはずだ。


 既にゼル隊とホーク隊「本隊」は、アースクエイクを超えようとしている敵部隊との交戦を始めている。

 敵兵が回り込んだ裏通りにもホーク隊長がアースクエイクを張って、敵の通過口を潰していく。


 両隊長がしっかり指示できているから、俺が都度指示を出す必要がないのは助かる。

 西門の南側でもヤヨイ隊・サラ隊とボルンガ隊「ホーク隊別隊」が似たような抗戦をしているようだ。


 西門の内側では、アウルスさんが1発目のフォッサマグナを放つ。これで、西門近くの敵兵は全員かなりのダメージのはずだ。すかさず敵の小隊長達が負傷兵を連れて撤退を始めた。

 よしよし、これで西門を開ける邪魔が減る。

 しかし、まだ耐えている部隊が西門を守って残っている。


 なんとか残った兵も押しのけて西門を開けたいところだが、アースクエイクの妨害により数が少ないとは言え北門・南門・中央からの応援部隊がばらばらと西門に到着しだしてアウルスさん達との交戦が始まる。

 アウルスさんが2回目のフォッサマグナの精神集中に入った。レオン隊がしっかりとアウルスさんを警護している。


 せめて西門の前の奴だけ何とかできればいいのだが、敵の援軍が早くてその余裕がない。

 俺が行って蹴散らしてもいいが、俺にはアースイミュニティーがかかっていない。

 次のフォッサマグナが終わったら、レオン隊と交代しよう。

 その間に、不慮の事態にならないか俺は敵のモンスター使いがけしかけてくる鳥族竜族を1匹ずつ潰しながら戦況を見渡すことにした。


「ディスペルマジック」

 西門から中央広場に続く大通りのアースクエイクが解除された。

 一応アースクエイクは3重「一直線上に3か所連続」にかかっているとはいえ、1つめが1発で完全解除された。

 大通りに大型の狐の姿が見える。★5キュウビだ。尻尾が9本あるからすぐ分かる。

 近くにマスターらしき人間がいないだけでなく、首輪もしていない。

 洗脳を受けていないノリクの幹部なのだろう。

 周りに30匹余りの首輪付きのモンスターを率いている。

 こいつに残り2つのアースクエイクを解除されて、30匹の手下モンスターに西門になだれ込まれるとやばい。

 さらにその後ろには、立ち往生していた多数の敵兵の部隊が続いている。


「ゼル、ホーク隊長、ある程度片づいたら援護を頼むぞ。」

 俺は予定を変更し、ゼル隊長とホーク隊長にそう言うと、★5キュウビに突っ込んでいく。

 強化技は全部かかっているから早々には負けないはずだ。


 俺は、不意打ちで空中から★5キュウビにトリプルスラッシュを喰らわそうとするが、さくりとかわされる。かすりもしない。

 流石に★5だけのことはある。甘くはないか。

 まだまだ。俺は、着地と同時に後ろに飛んだキュウビに追撃のジャンピングクロススラッシュを放つ。

 しかし、キュウビの目の前の見えない障壁に阻まれて、攻撃が失敗する。

 狐族の専用技のチェックなどしていないからな。出してきた技に対応するしかない。


「お前達、この熊に技の集中砲火じゃ。」

 キュウビが障壁の中から手下に指示を出す。

 見えない障壁は音は遮らないらしい。


「ディスペルマジック」

 俺は見えない障壁を解除しようと試みるが全く効果がない。


 その間に、手下モンスターが俺に技を次々と放ってくる。

 俺にはコンセントレイトがかかっているから、攻撃技を喰らってもディスペルマジックの精神集中は途切れなかったけどな。

 さらに、俺にはリベンジカースもかかっているから敵も無事ではない。自分の技が反射されたことに驚いて、動きが止まった奴も少なくない。

 30発近い攻撃技を喰らうが、格下の低レベル技なら何とか耐えられる。

 それに、今日は魔法でリザレクションを準備している。まだ、十分戦えるはずだ。


 俺はいつ消えてもいいように見えない障壁に触って効果を確かめていたが、その直後、見えない障壁が消える。解除できない代わりに、効果時間が短いのか。

 俺はその隙を狙って、もう一度キュウビにトリプルスラッシュを放とうとする。

 しかし、キュウビが技を使ったことにより、再度見えない障壁に阻まれる。

 やはり、見えない障壁はキュウビの専用技と考えていいのだろう。


「お前達、怯むな。

 攻撃技を続けるのじゃ。」

 見えない障壁の中からキュウビが手下モンスター達に命令する。


「俺に放った技はかけた奴に跳ね返るぜ。無駄なことは止めるんだな。」

 俺はまだ見えない障壁の効果が続いていることを触覚で確認しながら、敵モンスターに向かって叫ぶ。

 1匹でも躊躇してくれれば儲けものだ。


「お前達、わらわの命令に従えぬのか。

 従わぬ奴は首輪を発動させるぞよ。」

 キュウビが大声を出す。

 こいつが命じれば首輪の効果を発動させることができるのか。

 手下モンスター達は絞殺される恐怖からか、再度攻撃技の精神集中を始める。


 まだだ。あと1連の攻撃技なら耐えられる。

 見た感じ見えない障壁の効果時間は短い。効果が消えた瞬間にキュウビを攻撃する。同時に見えない障壁を使って敵モンスターからの攻撃の射線を遮ることも狙う。

 俺は、キュウビを睨みながら見えない障壁の効果が消えるのを待つ。


 障壁の効果が切れた瞬間、俺は再度キュウビに殴りかかるが、キュウビも精神集中を済ませていたようで、攻撃が届くことなく新たな見えない障壁に阻まれる。

 そして、その間に散発的に手下たちの技が俺に飛んでくる。一部は見えない障壁に阻まれて届かなかったが、それでも、流石に危なくなってきた。


「リザレクション」

 俺は、魔法のリザレクションを使って生命力を回復させる。


「ばかな。精神集中もせずに回復するじゃと。」

 キュウビが驚いている。


「俺は不死身だぜ。

 残念だったな。」

 もちろんハッタリだ。

 俺はこれで虎の子の魔法であるリザレクションを使ってしまった。ここから先は無茶はできない。


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