第52話 ウラジオの町
俺達は、ついにウラジオの町に到着した。
オーウェル様は、パウエル子爵の配下との調整のため、館に行ってしまう。
俺達モンスター部隊は全員が街の中で過ごすのは難しいため、今日は城壁の外で過ごす。
ウラジオまで行軍するまでに町に泊まる事は何度もあったが、ハイネを除けばこんな事ばかりだ。もう慣れたが。
ただ、こう考えると改めてエルモンドやハイネはモンスタ-が過ごしやすいように色々考えてくれてあったのだと思う。
少しだけ、ブランタンの野郎にも感謝しようかと思った。俺をエルモンドに無理矢理送り付けたことは許さんけどな。
クロガネ講師は、ウラジオの自分用に用意された工房の設備をチェックするようだ。
これから熊用の盾をしっかりと作るので、しばらくはウラジオに留まることになるという。
出来上がり次第送るから、ウル様の救出が終わったら使い心地を聞かせて欲しいと言われた。
オーウェル様に、希望モンスターに人間の言葉を学ばせることができないか聞いたのだが、ある程度ウラジオでの引継ぎが落ち着く待って欲しいと言われた。
俺達は先にエルシアへ行ってウル様の救出作戦を行うから、その後になりそうだという話だった。
俺は、ヤヨイ隊長やゼル隊長に、その旨伝えて待ってもらうことにした。
また、道中、俺はストライフさんに協力してもらい、イクソシズムと同じ要領で、アンチディスペルガードの技を習得した。アウルスさんも兄貴もストライフさんもだ。
それ以外にも毎晩アウルスさんや兄貴に技を教えてもらい、俺は前回の任務でまだ覚えてなかったコンセントレイトとエクステンドを、兄貴はミサイルガードとアースイミュニティーを習得した。アウルスさんはイクソシズムを習得した。
それを見ていた隊長達もやる気になったようで、俺も隊長達に色々技を教えたり戦闘訓練をした。行軍中だというのに一部の隊員まで熱心に技の練習をしていた。翌日の行軍に差し支えるといけないので、ある程度の時間になったところで無理やり止めさせたが。
夜になって、フォノアさん、ストライフさん、アウルスさんと兄貴と俺が館に呼ばれる。
「今日、ケルティクから報告が来ました。
ノリクがパヴェル公との関係を修復したみたいですね。
アレス殿の話していた御三家共同のノリク討伐作戦は実現できなかったようです。
それどころか、ノリクとパヴェル公が共同で連合国に対抗する準備を進めているようです。」
オーウェル様が言う。
「となると、我々はピュートル公との共同軍、敵はノリクとパヴェル公との共同軍と言うことか?」
アウルスさんが確認する。
「そうなりますね。
ノリクは帝都を押さえているため、さらに敵に皇帝直属軍が加わります。
ニコラ公はピュートル公とパヴェル公との争いで中立を決め込んだようです。」
「だとすると、連合国の主力を早く向かわせないと、ピュートル公は厳しいんじゃねえのか?」
兄貴が言う。
「そうです。
ピュートル公からすると、すぐ東隣にライン・ミューゼル。
北にはマケルーノ公国、さらに先には帝都の皇帝直属軍。
西にはノリクの本拠ウォルタン、遠いとは言え北西にパヴェル公と周りが敵だらけになります。
エルシアのブライアン殿の所にもピュートル公から支援要請が来たそうで、ブライアン殿もアレス殿率いる精鋭をレオグラードに向かわせたようです。
そこで、連合国としてもモンスター部隊を主力とする先行部隊をレオグラードに向かわせようと思っています。」
オーウェル様が地図を広げて説明する。
レオグラード周辺簡易位置関係「縮尺無視」
「★パヴェル派・☆ピュートル派」
★バイカル 帝都
「パヴェル公」「★ノリク・皇帝直属軍」
★マケルーノ
「ケイシュール公」
★ウォルタン ☆レオグラード ★ファーレン
「ノリク本拠」 「ピュートル公」 エルシア ☆ウラジオ
「☆ブライアン」 「現在地」
「連合国の本隊が到着するまで、レオグラードを守り切ればいいんだな。」
俺が聞くと、
「そうなりますね。
3か月以上かかりますが。
パール伯を通じて、連合国内の貴族達に、ウラジオでの軍の集結後すぐにレオグラードに向かう旨を伝えておきます。」
オーウェル様が答える。
「これは事実上、ピュートル公とパヴェル公による次期皇帝の座を巡る争いになりましたね。
我々はピュートル公につくことになりますが。」
ストライフさんが言う。
なるほど、そう言う見方もあるか。
どちらが勝っても幼い皇帝は完全に傀儡だろうしな。
「できれば、パヴェル公と争うことは避けたかったですのが、パヴェル公はノリクと同盟を結びましたし、ピュートル公との同盟締結文にパヴェル公から攻められた場合は援軍を出すことになっていることは伝えてありますので、連合国内の理解は得られるでしょう。
それに、ピュートル公はいち早く連合国の独立を認めてくれましたので、連合国としては、ピュートル公に味方するしかありませんね。
パール伯には事後報告で伝えますが。」
「ピュートル公に使者は送らねえのか?」
兄貴が聞く。
「ウラジオにいる方にお願いしないといけないので、モリン殿に頼んで手配してもらいます。
早急にモンスター部隊を主力とする機動部隊を送ることと、主力が援軍のために向かっている旨を伝えます。」
オーウェル様が言うが、ここはウラジオだから引継ぎが終わるまではエルモンドのようにはいかないよな。
少しずつ体制を整えていくしかないか。
「で、我々はまずエルシアに向かえばよいのか?」
フォノアさんが聞く。
「いえ、明日少し無理をしてイーストゲートまで行ってもらいたいのです。
そこにブライアン殿が来る筈ですので、そこでブライアン殿と今後のことについて相談してください。
基本ピュートル公を全力で支援することになりますので、そのままレオグラードに向かう話になると思いますが。」
オーウェル様が答える。
こうして、俺達は明日イーストゲートに向かうことになった。
「そうだ。ウラジオの町で、進化可能か確認できないか?」
一通り話が終わったところで、オーウェル様に聞いてみる。
「ウラジオにも施設はありますから大丈夫ですよ。
技のコーチはモンスター使いである冒険者に頼まないといけないですが。」
「進化ができればいい。
実は、進化できるか確認したいと言っている奴がいるから、確認だけでもさせてやりたい。」
「それなら、経費関連は何とかしますので、施設で私の名前を出して進化を行ってください。」
オーウェル様が言う。
ゼル隊長の我儘にも快く対処してくれるオーウェル様に感謝でいっぱいだ。
俺は、部隊の所へ戻るとゼル隊長を呼びに行く。
「ゼル、オーウェル様の許可は取ったぜ。
施設で進化できるか確認して貰いに行くぞ。」
俺はゼル隊長に言う。
「ほんとか。ガイン大将すまねえ。
ウラジオにつくまでこれだけ訓練したんだから、今度こそ進化できると思ってるんだ。」
「分かったからさっさと行くぞ。」
俺は、アウルスさんと兄貴にゼル隊長を施設に連れて行く旨伝え、通訳としてストライフさんを連れて進化施設に向かう。
話は通っていたようで、ストライフさんがオーウェル様の名前を出すと、すぐに中に入ることができた。
そして、ゼルを確認してもらうと、進化可能になってるという。
ゼル、頑張ったもんな。これでダメだったら、ゼルのショックを受ける姿がいたたまれなくなりそうだったから、進化できて良かった。
熊族進化系統図
★3グリズリー→★4アルカス→★5カリスト
★4モサ →★5オニクビ
「ゼル、進化先は決めてあるのか?」
俺はゼルに聞く。
「俺は強くなりたい。
★4モサを選ぶつもりだ。」
ゼルは答える。
確かに★5になったときの俺と兄貴の体格差を見る限り、★4モサを選んだほうが強くなれそうだからな。俺も今選べるなら、モサの方がいいかもと思ってしまう。
「確かに★4モサの方がでかくなるから強いだろうな。
それじゃあ、進化させて貰って来い。」
俺はゼルを送り出した。
ゼルは★4モサに進化した。
体は★4アルカスのウィルやアリサより一回り大きくなり、体毛は灰色から茶色に変わった。
コストを測ってもらうと、前回の52から84に上がっていた。
種族平均を除いても2上がっていることになる。
前回の測定から2週間ほどしか経っていない。
ゼル、相当頑張ったな。
「ゼル隊長、進化おめでとうございまーす。」
俺はゼルを隊のメンバーの所に送ると、隊のメンバーが歓声を上げてゼルを出迎えていた。
ゼルはメンバー1匹1匹とハイタッチして喜びを分かち合っている。
ゼルの奴、ボルトだけじゃなくて、隊のみんなに慕われているなあ。
まあ、ゼルは親分肌でメンバーと一緒になって進んでいく感じだな。
そう考えると、最善の方法を相談して隊のメンバーを納得させて進めていくウィルとは対照的だな。
俺は、ゼルがウィルをライバル視するのが分かるような気がしてきた。
今の所、ウィルの方はあまりゼルの事を気にしてなさそうだけどな。
ウィルの場合は、ゼルに負けてもそこまで気にしないような感じだ。
俺は、騒ぎすぎて他の隊に迷惑をかけないようにだけ注意して兄貴達の所に戻った。
明日はイーストゲートか。
日が暮れるかもしれないが、ブライアンに会うためにも、何とか辿り着かないとな。




