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熊王伝  作者: ウル
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第51話 コンプレックス

 用事が全て済んだので、俺達は今夜も広場で休み、明日の朝ウラジオに向けて出発する事になった。

 まだ寝るには早いので、ダガンに稽古でもして貰おうかと思っていたら、ゼル隊長がやってきた。


「ガイン大将、相談に乗って欲しい事がある。」

 ゼルが言ってきた。

 ゼルにしては珍しく思いつめた感じだな。

 放っておく訳にはいかないので、俺は兄貴とダガンに断りを入れて、ゼルの話を聞くことにした。


「ゼル、どうしたんだ?

 悩み事なんて珍しいな。」

 俺が聞くと、


「早く進化できるようになるにはどうしたらいいか教えてくれ。」

 ゼルが言う。


「ゼル、どうしたんだ。

 そんなに急いで進化したいのか?」


「隊長の中でまだ★4に進化してないのは俺だけだ。

 それどころか、隊員の中からも★4になった奴が出てきてる。

 俺は悔しい。早く★4に進化したいんだ。」

 確かに今回ウィルとアリサが★4に進化したから、★3の隊長はゼルだけだな。


「ボルトはもともと進化が近かったんだろ。

 進化も順番に来るから焦る事はない。お前の進化もそんな遠くないはずだ。」

 俺は言うが、


「ウィルは仲間にした時まだ★1だった。

 ★2に進化したもの★3に進化したのも俺が先だ。

 なのに、なんで★4への進化がウィルの方が早いんだ。

 リコなんて俺が★3グリズリーのままでいる間に、2回も進化してる。

 なんで、俺だけ進化できないんだ。」

 これは深刻かも知れない。しっかり対応しないと。


「アリサはお前より1つ年上だから先に★2ブラウンベアに進化していた。

 だが、★3グリズリーになったのはお前と同時だろ。

 リコが特別で、ウィルが早いだけで、ゼルもアリサに比べれば十分早いぜ。」

 俺は言うが、


「そうか。分かったぜ。

 なんで悔しいのかが。

 俺は一度もウィルに勝てないからだ。

 俺はウィルよりも先にガイン大将の子分になっていたのに、隊長の順番もウィルが先。

 コストも負けてる。

 ウィルはリコを見る目もあったし、★4にも先に進化できた。

 なんで、俺はウィルに勝てないんだ。」


 そうか、ゼルはウィルにコンプレックスを感じているのか。

 ゼルはウィルにライバル意識があったんだな。

 俺も、ウィルの方が安定感があるからと、どうしてもウィルを先に扱ってしまっていた。


「ゼル、お前はウィルがどんな努力してきたか知っているか?」

 俺はゼルに聞く。


「夜にも隊員に指導していると聞いた。」

 意見交換会で言った話だな。ゼル、しっかり覚えてるな。


「それもあるな。

 それだけじゃなくて、ウィルは色々な所で情報を仕入れてたりもしていたぞ。

 エルモンドでは冒険者部隊の所へ行って話をしたりしてたぜ。

 あとは、リコと技の使い方について議論をしていたな。

 それ以外にも、俺が知らない所で何かやっているかもな。」

 俺はそれ以外に自分の気づいたことをゼルに伝える。


「分かったぜ。

 何も努力せずに勝てる訳がないからな。

 ガイン大将ありがとよ。

 どうすればいいか分かったぜ。」

 ゼルがやる気になったみたいだ。

 ちょうどいい、あれを言ってみるか。


「そうだ、ゼル。

 人間の言葉を覚えてみる気はないか?」

 俺が聞くと。


「ガイン大将も人間の言葉を覚えたんだよな。

 俺はウィルに負けたくねえ。

 大将、俺に人間の言葉を教えてくれ。」

 ゼルが答える。


「ゼル、やる気になったじゃねえか。

 その意気だぜ。

 まだ決定じゃないし、ウラジオについてからになると思うが、希望する隊員に人間の言葉を教えようと思っている。

 その時まで待っててくれ。」

 流石に今すぐ教えろと言われても困るので、それだけは伝えておく。


「分かったぜ。決まったら教ええてくれ。

 あと、ガイン大将は、これから戦闘訓練をするのか?」

 先に戦闘訓練を始めている兄貴とダガンを見て、ゼルが聞いてくる。


「ああ、そうだな。

 もう始めてるみたいだな。」


「俺も訓練したいぜ。」

 ゼル、やる気だな。

 この気持ちを大事にしないといけないよな。


 その日、ダガンにゼルを紹介してゼルも入れて訓練をした。

 ゼルは何度やってもボコボコにされていたが、何度でもすぐに起き上がって俺や兄貴、ダガンに向かってきた。

 ゼルにこんなに根性があるとは思っていなかったから驚いた。

 その成果もあり、今日1日だけでもかなりゼルの動きがよくなった。

 ゼルは、明日以降も訓練したいと言ってきたので、俺達も毎日してるわけじゃないことを伝えた上で、今後の訓練に付き合って貰う事にした。




 次の日の朝、出発前にアウルスさん、兄貴と俺が呼ばれる。

 急いで館に行くと、オーウェル様が待っていた。

 中にいるのはオーウェル様だけで、ブランタンの野郎はいないようだ。


「アウルス殿、パワー殿、ガイン殿、お待ちしていました。

 魔王絡みの話なので、ブランタン殿やフォノア殿にも席を外して貰っています。

 今朝ケルティクからまた報告がありました。

 昨夜帝都の諜報部隊の拠点が襲撃されたそうです。

 幸い、その場にいた魔王が敵をほぼ全滅させてくれたみたいですが、ノリクに場所を特定されました。

 魔王の隠匿も考え、拠点を撤去したそうです。

 ノリク側も動きが活発になっているようで、当面はメンバー同士の情報交換は帝都の外の森の中で行うそうです。」

 オーウェル様が言う。


「父の姿を見られたのか?」

 アウルスさんが聞く。


「魔王の話では、姿を見られた相手は一人残らず殺したとのことです。

 なので、姿を見られてはいない筈だと。」

 オーウェル様が答える。


「それならいいのだが、これだけ騒ぎが大きくなると、父の存在が敵に知られるのも時間の問題かもしれんな。」

 アウルスさんが言う。


「拠点って今まではずっと見つかっていなかったんだよな。」

 俺が聞く。


「ええ、そうです。

 スラム街の分かりにくい場所にありましたし。

 我々が連合国として独立して、ノリク側も後がなくなって総力を挙げてきましたね。

 特に反乱軍の重要人物として、ケルティクを似顔絵付きで指名手配してきました。

 指名手配されてからは、ケルティクは動かないようにしていた筈なのですが。」

 オーウェル様が言う。


「拠点の撤去はまずかったと思うぜ。」

 兄貴が言う。


「どうしてですか?」

 オーウェル様が聞く。


「似顔絵付きで指名手配してきたって事は、ノリクはケルティクを必死に追っていたわけだ。

 ケルティクが姿を現さなくなったから、ノリクの奴、ウル様を発見した時のケルティクの匂いを追跡したんじゃねえか。

 ノリクなら、ケルティクを発見した場所でケルティクの匂いを覚えて、人海戦術で帝都中匂いを探させるぐらいして来るだろ。」

 兄貴がさらに言う。

 ノリクの館にいるウル様の姿を発見したということは、ケルティクも姿を現したってことだから、いた場所の匂いは当然チェックされるよな。


「そうか。

 拠点を撤去してしまったら、拠点に残っている匂いで、残りのメンバーが特定されてしまうんだ。」

 俺が気付いて言う。


「それはまずいですね。

 次回ケルティクから連絡がきたときに、その件について伝えます。

 周辺都市の部隊と可能な限りメンバーを交代して、魔王以外は匂いで発見されないようにしましょう。

 あとは、ケルティクですね。

 もし匂いを特定されているとしたら、今後はケルティクは拠点に近づかないようにした方が良さそうですね。」

 オーウェル様が言う。

 こうして、諜報部隊の襲撃に関する対応が決まった。




 部隊に戻ると、ウィルとリコが飛行の訓練をしていた。

 話を聞くと、ウィルが★4に進化したのでアウルスさんに教えてもらってフライトの技を習得したようだ。

 今後ウィルがかけたフライトを使ってウィル隊が全員飛行する訓練もするらしい。

 それを見ていたヤヨイ隊長が、今夜は私にも技を教えてほしいとアウルスさんに頼んでいた。

 隊長達のやる気が出てきているのは良いことだ。

 ゼルも、進化したら技を覚えると言って意気込んでいた。



 準備ができた後、補給を済ませた俺達先発部隊はウラジオ目指して出発する。

 ブランタンの野郎が俺に餞別と言って魔法書を1冊くれた。

 アンチディスペルガードの魔法書だ。

 この技は誰も覚えていなかったから欲しかったんだよな。

 あの野郎、俺の欲しいものを的確についてくる。

 少しだけあの野郎に礼を言って、俺達はハイネの町を後にし、ウラジオに向けて出発した。


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