第50話 進化
俺達は、任務を終えてハイネに戻った。
門で待っていたロウエンに話を聞くと、ハイネ近辺にも数匹のアンデッドが現れたが、冒険者に解放されたらしい。
リズボーンの町の近くにもアンデッドが来ていたが向こうの冒険者に処理してもらえたようだ。
あと、アンデッドの中には攻撃時に病気などを感染させる場合があるようなので、念のため全員調べてもらうよう言われる。
冒険者は冒険者ギルドに、俺達モンスターは訓練施設へ行くことになるが、さすがに数が多いので1部隊ずつ連れて行くことになった。
その間残りの部隊は門の外で待ってもらう。
まず俺達がウィル隊を連れて施設に行く。
1匹ずつ調べてもらうが、幸い全員病気の感染はないようだ。念のため、負傷者は全員キュアディジーズの魔法をかけられた。担当者が今日の魔法を全部これに充てていただけでなく、冒険者にも応援を頼んだようだ。
そして、別の事実が判明する。
俺と兄貴、そしてウィル隊長、さらに隊員2名が進化可能となっているというのだ。
今は全員の感染チェックが優先だが、後程進化をどうするか考えないといけない。
ウィル隊のメンバーには広場で休憩してもらい、俺達は1部隊ずつ感染チェックをしてもらうために案内した。
全員チェックしたが、幸い感染者はいなかった。
だが、多数の進化可能メンバーがいることが分かる。
エルモンドだと、メキロ家の費用で進化できるけど、ハイネだとそうはいかないよな。
とりあえず報告に戻りつつ、あの野郎に頼むしかねえか。
あの野郎に頭を下げるのは癪だけど。
俺はアウルスさん・兄貴と館に向かう。
館にはあの野郎とフォノアさんだけでなく、オーウェル様も待っていた。
パウエル子爵との話がついたのか。
「アウルス殿、パワー殿、ガイン殿、お疲れさまでした。
アンデッドの大軍を倒したそうですね。」
オーウェル様が言う。
「ボスには逃げられちまったが。」
兄貴が言うが、
「昨日の状態じゃ、100匹を超えるアンデッドが暴れるだけで大惨事だったじゃねえか。
よくやってくれたぜ。お疲れさん。」
あの野郎が俺達を労うとは珍しい。
何か企んでいるのか?
「まだ、アンデッドが多少は残っているだろう。
だが、我々はウラジオに向けて進軍することになる。
イクソシズムが使える冒険者で対処してもらいたい。」
フォノアさんが言う。
「ってことは、パウエル子爵との話はついたのか?」
俺が聞くと、
「ウラジオの件は、パウエル子爵の腹心のモリン殿に同行してもらい向こうですぐに交代できるよう対処してもらえることになりましたよ。」
オーウェル様が言う。
とりあえず、最大の懸念は解決できたな。
「あと、頼みたいことがあるんだが、施設でモンスター部隊の進化はできねえか?」
兄貴が言う。
うわ、ストレートに言っちゃうのか。
「おう、いいぜ。
連合国の部隊には最大限協力しねえとな。
それに、ハイムのモンスターもいるしな。」
俺はハイムのモンスターじゃねえぞと言おうと思ったが、今あの野郎を怒らせて進化はなしだと言われる訳にはいかないので敢えて黙っておく。
「今回の戦闘で十匹ほどの者が進化できるようになった。
この後、該当者を連れて施設に向かいたい。」
アウルスさんが言う。
「そうだな。
連絡事項も片付いたし、行って来いよ。」
あの野郎に言われて、俺達は館を後にする。
そして、進化できるメンバーとその隊長を連れて再び施設に向かう。
まずは、ウィル隊から行くか。
最初にウィル隊長の進化先を決めよう。
熊族進化系統図
★3グリズリー→★4アルカス→★5カリスト
★4モサ →★5オニクビ
「ウィル、今度の進化は選択肢があるから考えないといけないわけだが、何か希望はあるか?」
俺はウィルに聞く。
「あの、パワー大将はノリクを倒した後もエルモンドに残るのでしょうか?」
ウィルが聞いてくる。
「俺様がなんで関係するんだ?」
兄貴が聞くと、
「★5まで進化すると専用技があると聞いています。
できれば、ガイン様とは違う★4モサを選んでガイン様のサポートができればと思ったのですが、パワー大将がずっとエルモンドにいるのでしたらその必要もないかも知れないと思ったのです。」
ウィルが言う。
「ウィル、俺もエルモンドに残るとは限らねえぜ。
俺の事は気にせず自分の希望を考えな。」
俺は言うが、
「俺は、小熊の頃ガイン様に命を助けられました。
だから、ガイン様に恩返しできるようガイン様の役に立ちたいのです。」
ウィルは答える。
「襲われてる小熊を見かけたら助けるのは当たり前だろ。
進化先の選択と言うのは、自分の熊生の選択と同じだ。
ウィル、お前は自分で自分の熊生を選ぶんだ。
自分の熊生すら自分で決められないのに、もし、あとでリコがウィル隊長の役に立ちたいんですとか言って来たら、どうアドバイスするつもりなんだ?」
俺がそう言うと、ウィルが考え出した。
「俺はどちらかと言うと、肉体技より精神技の方が得意です。
熊らしくないと言われればそうかもしれませんが。
ですので、自分の得意分野を生かして★4アルカスを選びたいと思います。」
ウィルが言う。
「ウィル、自分で道を選べたじゃないか。
それでいいんだ。
それじゃあ、進化させて貰って来い。」
俺はそう言って、ウィルを送り出した。
ウィル、俺よりちゃんと考えて選んでるじゃないか。
死んだ親父の背中を追いかけて★4アルカスを選んだ俺なんかより、余程考えているぜ。俺はそう思った。
ウィルは★4アルカスに進化した。
体毛は基本★3グリズリーと同じ灰色基調だが、色目がやや銀色掛かった。
体長は俺とほぼ同じにまででかくなり、人間から見れば俺とあまり見分けはつかないだろう。
同じ★4アルカスになったのだから当然と言えば当然だが。
コストを測ってもらうと、前回の57から88に上がっていた。
種族平均分を除外しても1上がっていることになる。
前回測ってからまだ10日ほどしか経ってないよな。
測定誤差があるとは言え、ウィルの成長には驚くばかりだ。
俺は、隊員の進化先の相談に乗ってやるように言うと、次のメンバーを呼んだ。
次に進化するのは★2ウルフのリコだ。
こいつは、エルモンドに来て進化したばかりなんだよな。
★2から1回も進化してない奴も少なくないにもかかわらず、リコは2回目の進化。
相当努力しているんだろうな。
今回はなるべく、ウィルに相談させることにしているので最初は俺と兄貴は黙っていることにした。
狼族進化系統図
★2ウルフ→★3シルバーウルフ→★4テンロウ→★5シリウス
★4アヌビス→★5セト
★3ダイアウルフ →★4アヌビス→★5セト
★4ヴァナルガンド→★5フェンリル
★4バージェスト→★5ガルム
★3キラーウルフ →★4バージェスト→★5ガルム
★4ヘルハウンド→★5ケルベロス
「ウィル隊長、★4アルカスに進化したんですね。すごい。
ガイン大将みたいです。」
リコが言う。
確かに大きさとか毛並みとかは俺と一緒だしな。
「リコ、ありがとう。
おかげで、俺もなんとか★4まで進化することができた。
次はリコが進化する番だ。自分の進化先は考えているのか?」
ウィルが聞く。
「はい。
僕は、いつか★5セトになって人間と話ができるようになりたいです。
だから、★3ダイアウルフに進化しようと思っています。」
リコが答える。
「★5セトには、★3シルバーウルフからでもなれるが、★3ダイアウルフでいいんだな?」
ウィルが聞く。
「★3の時は比較的体が大きくて仲間の支援ができるダイアウルフの方が、隊の役に立てそうですから。」
リコが答える。
リコはしっかりとした自分の考えを持っているな。
ウィルがリコを送り出し、リコは★3ダイアウルフに進化した。
体毛は茶色系に変わり、2周り大きくなった。
コストは、44から59にあがった。
種族平均分を除外しても1上がったことになる。
この後もう1匹ウィル隊のメンバーが進化して、ウィル隊の進化が終わった。
次はゼル隊だ。
ゼル隊は進化が4匹もいる。ゼル隊長がちゃんと相談に乗ってあげられるか見守らないとな。
最初は★3ダイアウルフのボルトだ。
ボルトはエルモンド北の森で襲撃部隊から保護したモンスターの1匹で、保護モンスターの中では初めての進化となる。
狼族進化系統図
★3ダイアウルフ →★4アヌビス→★5セト
★4ヴァナルガンド→★5フェンリル
★4バージェスト→★5ガルム
「ボルト、進化できるようになったみたいだぜ。頑張ったな。
自分の進化について何か考えているか?」
ゼルがボルトに声をかける。
「ゼル様、俺、何を考えればいいか分からない。」
ボルトの前回のコストは28だったな。普通の★3ダイアウルフ並だけど、自分で考えるのはきついか。
「★3ダイアウルフに進化するときはどうしたんだ?」
ゼルが聞く。
「俺に首輪をつけた奴が、無理やり進化させたから分からない。」
ボルトが答える。
進化先は支配する人間の都合で決めてしまえるからな。ボルトの意志とは関係なく決められたのだろう。
「ボルト、お前の進化先の選択肢は3つあるぜ。
★4アヌビスになると、技が沢山覚えられるようになる。さらに、★5セトに進化すると人間と喋れるようになるぜ。
★4ヴァルナガンドと★4バージェストはどちらも戦闘力重視で似たようなものだな。★4ヴァルナガンドの方が強くて、★4バージェストの方が死ににくいという違いがあるが。」
ゼルが言う。ゼルの奴、ちゃんと俺達が教えた進化先の特徴も覚えて指導できているじゃねえか。
「俺、強くなってゼル様の役に立ちたい。」
ボルトが言う。
ゼルの奴、慕われてるなあ。まあ、ボルトの場合★4アヌビスはないだろうと思っていたが。
「嬉しいこと言うじゃねえか。
そうか、強くなりたいか。
それなら★4ヴァルナガンドにするか?」
ゼルが言う。
「俺、ヴァルナガンドに進化してゼル様の役に立つ。」
ホルトが言う。
なんと言うか、全てゼルの言いなりになっている気がするが、まだ自分で考えるのは厳しいからしょうがないか。
ボルトは進化させてもらい★4ヴァルナガンドになった。
体が二回り大きくなり、体毛が灰色になった。
元々★3グリズリーであるゼルと変わらなかったからな。
体長がゼルの1.5倍くらいになった。
次にコストを測ってもらうと、前回測定の28から55に上がった。
おやっ、コストが2倍にもなっていないぞ。種族平均を除くと寧ろ1下がっている。
基本、野生モンスターであっても進化レベルが上がるにしたがって多少は賢くなるから種族平均コストは上がるよな。
ボルトの場合、保護するまでは命令に従うことだけを求められてきたから、野生のモンスターほども考えてきてないんだ。
それに、俺達が保護して10日ほどしか経ってないしな。追加コストが下がるのも仕方ないか。
俺は、慌ててゼルに耳打ちする。
「ボルト、でかくなったじゃねえか。かなり、強くなったぞ。
これからは自分でも考える練習もしていこうな。」
俺の意図を受けて、ゼルがしっかりフォローしてくれた。
「俺、ゼル様のためにがんばる。」
ボルトが答える。
やはりゼルの言いなりで、完全に受け身だな。
ボルトがいなくなってから、もっと自分で考える指導をするようゼルに言っておいた。
その後、さらに3匹のゼル隊のメンバーが★2から★3に進化した。
ゼル隊長のサポートがあったとはいえ他の隊員は自分の進化先について考えられるようになったのは良かった。
次はアリサ隊だが今回は、アリサだけだ。
なら、俺が相談に乗ってやらないといけないな。
熊族進化系統図
★3グリズリー→★4アルカス→★5カリスト
★4モサ →★5オニクビ
「アリサ、進化先についての希望はあるか?」
俺が聞くと、
「ガインと同じ★4アルカスにするわ。」
アリサが答える。
そう言われると、俺自身が死んだ親父の背中を追って★4アルカスを選んだことが他人の選択にまで影響を与えてしまったんだなと改めて感じてしまう。
今選ぶなら、でかい★4モサも十分ありだからな。
「後悔しないな?」
俺は確認を取る。
「しないわ。」
アリサは即答した。
これ以上俺が言うことはないので、アリサを送り出しアリサの進化をさせて貰う。
アリサは俺とほぼ同じ大きさ、俺と同じ体毛に変わった。同じ★4アルカスになったのだから当然だが。
「俺は最後に★5カリストに進化させて貰って来るから隊に戻っていてくれ。」
俺はそう言って、アリサを送り出した。
えっと、今回ホーク隊は誰も進化しないな。
次はサラ隊か。
サラ隊は2匹が★2から★3に進化した。
今回からサラ隊長がしっかり隊員の相談に乗ってあげられたのは良かった。
ヤヨイ隊も進化なしか。
レオン隊は★2から★3が1匹だけだな。
アウルスさんに任されたとはいえ、
俺達は、他の隊長と同様レオン隊長にも相談に乗ってもらうことにした。
レオン隊長はまだ慣れてないようで、手間取った所もあったが、そこは兄貴が上手くフォローして無事進化が終わった。
「これで残るは俺様達だけだな。」
兄貴が言う。
「★5への進化は選択肢がないからな。さっさと進化させて貰って来るか。」
俺が言うと、まず兄貴から進化させて貰う。
兄貴は★5オニクビに進化した。
同じ茶色でも毛並みはより濃い茶色になった。
体長は7メートル近くになる。進化前のストレングス時よりでかい。
コストは195だった。
兄貴、この短期間でさらにコストが上がったんだ。
凄いな。
俺も★5カリストに進化させてもらう。
毛並みは銀灰色から銀色になった。
体長が5メートル余りになったが、兄貴ほどには大きくならない。
これが進化先による違いなのだろう。
俺も★5オニクビにすればよかったかな。今更変えられないが。
俺のコストも前回の270から330に60増えた。
ダガン分を除外すればちょうど185だ。
俺はあまり変わっていない。
兄貴は普通より体がでかいがそれが関係しているのだろうか。
でかくなったのはいいのだが、1つ問題が起こった。
俺はまだ何とかなるが、兄貴は館の門をくぐるのがきついのだ。
その話をするとあの野郎は、
「よし、ノリクに勝ったら余裕で通れるように館の扉を全部付け替えてやろう。」
と笑って言った。




