第47話 出発
翌朝、エイク隊長が冒険者部隊のメンバーを連れてやってきた。
冒険者部隊のメンバーは全部で9名のようだ。
ドンロンの部隊から4名、エルモンドの部隊から5名。早速紹介してもらう。
まずはドンロンの部隊の4名から。
1人目は、モンスター使いのフォノアさん。戦士であり魔術師でもあるらしい。人間の女は顔に傷を作ることを嫌うと聞いているが、フォノアさんは顔に何か所も傷跡がある。
元々ドンロンの部隊4名のリーダーだが、今回行軍する冒険者部隊9名を束ねるそうだ。
行軍方針はフォノアさんとも相談してほしいとエイク隊長に言われる。と言うことは、俺達と同格で相談しろってことだよな。
連れているモンスターは、★4ヒポグリフォのカイザートと★4ヴァナルガンドのトリスタン。
フォノアさんはカイザートに乗るので、1人分馬が空きそうだ。
2人目は、ルーフェンさん。野外活動の専門家の野伏であると同時に魔術師でもある。
ドンロン部隊4人の知恵袋で、フォノアさんのよき相談相手だそうだ。
3人目は、ガイネストさん。重そうな鎧に身を包んだ重戦士。ガイネストさんを乗せる馬は大変そうだ。
4人目はモンスター使いのリーナさん。弓使いでもある。レオン隊長のマスターと言うことで、今回この4人の同行が決まったようだ。
連れているモンスターは★4ネメアーのレオン隊長と★2ホースのバース。リーナさんもバースに乗るので、さらに1人分馬が空くようだ。
続いてエルモンド部隊の5名。
1人目は、商人であり学者でもあるストライフさん。前回の討伐の第8グループの隊長だ。今回ストライフさんのパーティーが選ばれたのは、メンバー全員がモンスターと意思疎通ができるというのと、ストライフさんが交渉に長けているという理由のようだ。
2人目は、重戦士で魔術師でもあるランバルディさん。ガイネストさんと比べれば鎧は断然軽いよな。
3人目は、武闘家で魔術師でもあるガルウィングさん。全く鎧を着ない人間の戦士は初めて見た。武器も一般的なソードとかではなく俺達モンスターの爪に似た金属製の武器だ。これなら多少大きさが変わっても問題なく使えそうだ。ストレングスでも使うのだろうか?
4人目は、野伏で弓使いでもあるシュナルツさん。一応ある程度の魔法も使えるらしい。
5人目は、モンスター使いのミルルさん。
連れているモンスターは★3ダイアウルフのディランと★3ホワイトドラゴンのスノウだ。
ミルルさんは小柄なのでディランに乗って移動するそうで、さらに1人分馬が空くようだ。
続いて、モンスター部隊のメンバーも紹介し、誰が誰を乗せるのかを決めた。
その後、オーウェル様の側近である外交官3名と内政官2名がやってくる。
内政官はどちらもネフェルさんの副官だな。顔を見たことがある。
パウエル子爵への確認後、オーウェル様・武器職人のクロガネ講師・諜報部隊員の3名が追い付いてきて加わるらしい。3人なら乗せる馬は余っているから大丈夫だな。
隊員の背中に荷物を乗せてもらっている間に、フォノアさんを交えて行軍方針について相談する。
「まずは、行軍の隊列を決めるか。
最初に、飛行のモンスターの配置から決めよう。
鳥族は視力がよく遠くの敵を発見するのに優れるが、昼間に限られる。
あと、飛行すると本隊の行軍より早く移動できる代わりに地上の移動速度は遅い。
ゆえに鳥族には、空中から周りの警戒をしながら行軍してもらい、地上部隊だけで隊列を決めようと思うが。」
アウルスさんが言う。
「鳥族は飛行が得意と言っても、1日ずっと飛行を続けるのはきついぜ。
チーム毎に、本隊の近くを警戒しながら飛行と休憩を細かく繰り返してもらうのがいいんじゃないか?」
俺が聞く。
「エルモンド側の飛行モンスターは殆どホーク隊に固めてあるが、ドンロン側は隊ごとにいるんだよな。
飛行部隊の中のまとめ役はいるのか?」
兄貴が聞く。
「今回の行軍に限っては、ヤヨイ隊長にドンロン側の全ての飛行モンスターを率いてもらうつもりだ。
逆にドンロン側の地上モンスターは全てレオン隊長に率いて貰う。」
アウルスさんが答える。
「飛行モンスターと言っても、鳥族・竜族だけだな?
私の仲間のカイザートも飛行は可能だが、馬族であるので走行もできる。
馬族にも飛行モンスターはいるが、地上走行が可能ゆえに、本隊と同時に移動でも構わないか?」
フォノアさんが聞いてくる。
「それで構わない。鳥族全てと竜族の殆どが地上の高速走行ができないための措置だ。
では、地上走行ができない飛行モンスターはホーク隊長、ヤヨイ隊長が率いて交代で周囲を警戒しながら本隊についてきてもらうことにしよう。」
アウルスさんがまとめる。
「あと、ミルルの仲間モンスターの★3ホワイトドラゴンのスノウだが、どちらかの飛行部隊長のすぐ側につかせたい。」
フォノアさんが言ってくる。確かに、マスターのミルルさんの傍では行軍に支障がありそうだからな。
「では、ヤヨイ隊長に面倒を見てもらうことにしよう。
ミルル殿に、伝えてほしい。」
アウルスさんの答えにフォノアさんが同意して、飛行モンスターの行軍について決まった。
「続いて、地上部隊の行軍だが、隊ごとに移動すると冒険者部隊は、メンバーがばらけてしまうが問題ないか?」
アウルスさんがフォノアさんに聞く。
「ある程度離れるのはやむを得ないが、できるだけ近くになるよう考慮してほしい。
あと、騎乗するモンスター使いと仲間モンスターは、スノウ以外は仲間の近くを行軍したい。」
フォノアさんが言う。
「では、基本モンスター部隊の隊ごとに固まって行軍するが、
騎乗するメンバーがある程度チームごとに固まるよう行軍順を決めることにしよう。」
アウルスさんが答える。
「フォノアさんのチームは全員レオン隊に騎乗しているから独立して動ける。
ウィル隊・アリサ隊には内政官と外交官が騎乗、ゼル隊・サラ隊にストライフさんのチームが騎乗している。
あとからオーウェル様が追い付いてきたときに、メンバーに余裕のあるアリサ隊とゼル隊に騎乗してもらうこと考慮すると、レオン隊・ウィル隊・アリサ隊・ゼル隊・サラ隊の行軍順序でどうだ?」
俺が言う。
「なるほど、それなら追加メンバーが来ても人間のチームメンバーは近くを行軍する事になるな。
あとは俺様達か。匹数が多くて隊列が長くなるから前後に分かれるか。
アウルスさんとフォノアさんは前方のレオン隊近辺、俺様とガインは後方のゼル隊・サラ隊近辺で走行することでいいか?」
兄貴のまとめと責任者の配置意見に全員が同意して行軍順が決まった。
あと、何かあったときは責任者の俺達がフライトでお互いに相手側まで飛んで連絡することになった。
「次に、今日の行軍予定について相談したい。
今日の行軍は、隣のベリンの町を目指すのか?」
フォノアさんが聞いてくる。
「隣のベリンの町が人間の行軍で4日、次のハイネの町が更に6日、計10日の行程だ。
今回の行軍は全ての人間がモンスターに騎乗しているので、スピードとの併用で人間の歩行による行軍の5倍の速度は出せる。
ウラジオの町までの行軍は急ぐこともあり、
今日はベリンの町を過ぎたところで野営をし、明日ハイネの町まで行きたいところだ。」
アウルスさんが言う。
ハイネの町と聞いて、俺は嫌な気分になる。俺の元故郷だからだ。いや、俺の故郷はエルモンドだけだからな。
「基本はそれでいくとしてだ。
今日の行軍状況を見て、無理がありそうならベリンまでにとどめておいた方がいいと思うが。」
フォノアさんが言う。
「確かにそうだぜ。
今日の行軍状況によってはベリンまでにしておくべきだな。」
兄貴がそう言うと、アウルスさんも同意する。
「ガイン殿もそれでいいか?」
俺が何も言わないので、アウルスさんが聞いてくる。
「ああ、それでいいと思うぜ。」
俺は慌てて答える。ハイネの事を考えていたとは言えない。
こうして、ウラジオに向けた行軍を開始する。
エルモンド側のメンバーの方が多く、全体の半数程度しかスピードが使えない状況ではあったが、効果時間が長いので1人2~3回もかければ全員にスピードがかかる。進化ランクの低い隊員の使ったスピードでも効果時間は3時間程度あるため支障はない。
逆に3時間と言う時間が休憩するのにいいタイミングであるため、技の切れ目を休憩のタイミングとした。
3回目のスピード後の出発をして暫くして、ベリンの町を通過する。
日も西の方まで来ている。1日の行軍はスピード3回分だな。
予想以上に順調な行軍で1日目が終わった。
日が暮れてきたので、街道からある程度離れたところで野営の準備に入る。
とは言っても、野営がいるのは人間だけだ。
俺達モンスターは、背中の餌を用意してもらって食べるだけなので準備は何もいらない。
人間達が野営の準備をしている間に、俺達はフォノアさんを交えて野営の相談をする。
「見張りは4交代でよいか?
冒険者メンバー8人が2日に1回ずつ番をする予定で考えているが。」
フォノアさんが言う。
「モンスター部隊については、鳥族は夜目が効かないため、見張りとしては役に立たない。
地上の5部隊が半分ずつ10チームで交代しようと考えているが。」
アウルスさんが言う。
「モンスター部隊は2日半で1回ずつか。それくらいだろうな。」
フォノアさんが答える。
別に1周りのローテーションが揃っていなくても問題はないよな。
「竜族だけは夜目が効くから交代で入ってもらったらどうだ。
10チームなら各チームに1~2匹ずつの配分になるが。」
兄貴が言う。
「俺達はどうする?
隊長がいないチームのときに交代で入るか?」
俺が聞く。
「そうだな。
ヤヨイ隊長とホーク隊長にもローテーションに入ってもらうか。
自分は目が見えなくとも、何かを発見した隊員の報告を聞いての判断はできるだろう。」
アウルスさんが答える。
これでモンスター部隊側の見張りの順番は決まった。
「であるなら、私も冒険者部隊のローテーションに入って問題ないな。
9交代で見張りをしよう。」
フォノアさんが言うが、
「いや、モンスター部隊にも人間が1人いる。ダガンだ。
ダガンも入れてローテーションを組んでくれ。そうすれば冒険者部隊も10チームになる。」
兄貴が言う。
その後、兄貴がダガンを呼んでフォノアさんに紹介し、人間側も10交代での見張りとなった。
見張りの順番は以下の通りだ。
1 レオン隊長 レオン隊1 ストライフさん
2 アウルスさん レオン隊2 ガイネストさん
3 サラ隊長 サラ隊1 ルーフェンさん
4 兄貴 サラ隊2 リーナさん
5 ウィル隊長 ウィル隊1 ランバルディさん
6 ヤヨイ隊長 ウィル隊2 フォノアさん
7 ゼル隊長 ゼル隊1 ガルウィングさん
8 俺 ゼル隊2 シュナルツさん
9 アリサ隊長 アリサ隊1 ダガン
10 ホーク隊長 アリサ隊2 ミルルさん
初日は特に何も問題なく、行軍2日目の朝が来る。
朝、餌を食べた後、フォノアさんも入れて今日の行軍の打ち合わせをする。
「行軍速度も順調のようだ。今日は予定通りハイネの町を目指すことでよいか?」
アウルスさんが言う。
「無理して町で止まらずとも、行けるところまで行っちゃだめか?」
俺が言う。
「折角近くに町があるのに、あえて野営することもあるまい。」
フォノアさんが言う。
「なあ、ガイン。
ハイネの町って、俺様達が入ることもできないくらい小さいのか?」
兄貴が聞いてくる。
「ベリンの町よりは大分大きいから入ることはできるだろうが、モンスターがこの数で町に押し寄せたらあまりいい顔はされねえぜ。後半の食料調達も冒険者部隊がメインでやってもらうんだろ?」
俺は答える。
「では、町でフォノア殿に交渉してもらい、入れるようなら入り、厳しそうなら人間だけ町に入ることにして、モンスター部隊だけは町の周囲で夜を過ごすということでどうだ?」
アウルスさんが言ってくる。
「了解した。
できる限り交渉しよう。
先発隊すら満足に出迎えできない領主なら喝を入れてきてやるから期待しててくれ。」
フォノアさんが言う。
俺は、そんな所で頑張ってもらわなくてもいいのにと思ったが、口には出さずにおく。
2日目の行軍も順調に進み、3回目の行軍の半ばくらいでハイネの町が見えてきた。




