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熊王伝  作者: ウル
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第46話 兄貴との打ち合わせ

 会談後、ようやく兄貴と2匹だけで話せるようになった。

 報告したいことが色々あるからな。

 とは言え、館の外はどこに敵の密偵がいるか分からない。


「アウルスさん、こないだの件をパワーの兄貴に報告したいんだが、シャドウウォークをかけてくれないか?」

 俺はアウルスさんに頼む。


「分かった。

 私はアルガ隊長との調整があるから先に戻っている。

 シャドウウォークの効果が切れないように注意してくれ。」

 アウルスさんはそう言うと、俺と兄貴にシャドウウォークをかけてくれた。


「話には聞いていたが、これがナイトメアの専用技のシャドウウォークか。

 それじゃあ、フライトで通行人とぶつからないようにしながら話すか。」

 兄貴が言うので、俺達はフライトで空中に飛んでから話を始める。


「それじゃあ、俺がドンロンに着いてからの出来事について話すぜ。

 帝都を騒がせていた★5ガルムのアレスが、バート・フィロソフィーと一緒にエルシアのタロウの調査のために俺に話を聞きに来た。

 タロウは、エルモンドとの交渉から帰った後エルシアの商人達に連合国につくよう説得したが、煙たがられてピュートル公への使者としてエルシアの方針決定の場から締め出されて、ピュートル公の本拠レオグラードに向かったまま行方不明になったらしい。

 俺達が2回目にタロウを見たのは、行方不明になったかなり後で、ノリクに捕まって洗脳された後のようだ。

 そして、ノリクの命令通りウル様を攫ったらしい。」

 俺は、順番に話をしていく。


「タロウもウル様もノリクに捕まって洗脳されて敵に回ったってことだな。

 にしても、ブライアンはなんで急にまたノリク討伐を急ぎ出したんだ?」

 兄貴が言う。


「ブライアンとアレスは、予め大陸の東側を反ノリクで固めて、ノリクの求心力を落としてからノリク討伐軍を上げる予定だったようだ。

 そのためアレスは、アレン・リッチモンドにノリクの偽指示書を送って、メキロ家に潰されるメキロ家討伐軍を出させた。

 ここは、兄貴の予想通りだったぜ。

 メキロ家が予想外に手際が良かったので、アレスも殆ど手助けする必要がなかったようだ。」


「連合国の設立は予想以上だったが、方向はアレスの思惑通りだったというわけか。

 ブライアンがアレスの黒幕なのか?」

 兄貴が再度聞いてくる。


「ここから先は、口外しないように言われているが、兄貴とスレイルさん達にだけは話すことにした。

 だから他の奴には漏らさないように頼むぜ。

 ブライアンとアレスは兄弟だ。ブライアンの正体は★5セトが覚醒した★6ゲブなんだ。」

 流石にこれには兄貴も驚いたようだ。


「ブライアンは表向きは人間で通っているんだよな?」

 兄貴が確認してくる。


「そうだ。専用技で人間に化け、かつ人間の言葉も話せるから、人間の振りをしている。

 だが、正体がモンスターであるからこそ、必死にノリクに対抗しようとしている。」


「そうだとしても、連合国の援軍すら待たないほど急ぐ必要があるのか?」


「アレスはタロウが攫われて洗脳されたことにかなり腹を立てていたからな。

 エルシアまで何日か徹夜してでも飛んで、反ノリク軍の立ち上げを急いでいた。」

 俺が答える。


「危険だぜ。

 感情に任せて不用意に軍を動かしたらノリクの奴に足元をすくわれるかもしれねえ。」

 兄貴にそう言われ初めて、俺は自分の認識の甘さに気付いた。


「その時はアレン・リッチモンドを手玉に取るほどの策士なら本当にノリクを倒すかもなって話をしていたが、確かに兄貴の言う通りだぜ。

 俺は、ノリクが潰されることでウル様が助からないことを危惧して行軍を急いだが、寧ろ急いでエルシアまで行って、ブライアンやアレスとノリクとの戦いについて話をした方が良さそうだな。」


「そう思うぜ。

 となると、スピードの技の習得を急いだほうがいいな。フライトは全員にかけるのは無理だからな。」


「大丈夫だ。ドンロン側の先行部隊は、兄貴が来るまでの2日間で全員スピードを習得済みだ。」

 そこは抜かりないと兄貴に伝える。


「ガイン、手際がいいな。お疲れさん。

 匹数が多いから大変だっただろ。」


「覚える技が全員一緒だからエルモンドでの隊長達との意見交換会の話を参考にまず全員に向けて教えて、その後は1匹ずつの習熟度を見て、習熟度別種族別にクラス分けしてクラスごとにアウルスさんや隊長達とも手分けしてやったし、習得できた奴が次々に講師に変わっていったから、後半は見てるだけだったぜ。

 今後、隊員の技の習得もこの方法の方が進めやすいかと思ったぜ。」


「なるほど、確かにそれは良さそうだな。

 報告はこれくらいか?

 それじゃあ、俺達も隊のところに戻るか。」

 兄貴が言うが、まだ報告は終わってない。


「いや、まだ報告は終わってないぜ。

 ドンロンのフィロソフィー商会のバートさんが兄貴に話をしたいと言っているので、ドンロン到着後に俺が兄貴を連れていくことになっている。

 兄貴は何か心当たりはあるか?」

 俺が聞くが、


「フィロソフィー商会が俺様に用事?

 さっぱり分からねえな。」

 兄貴も心当たりがないらしい。


「取りあえず連れていく事になっているから、行けば分かるよな。

 それじゃあ、シャドウウォークを解除して行くか。」

 俺が言うが、


「ガイン、通訳を連れて行かなくていいのか?」

 と、兄貴の突っ込みが入る。


「アランさんはヴァディス隊長の通訳としてエルモンドに残ったし、ドンロンの通訳や内政官はそれぞれ仕事中だし、フィロソフィー商会のバートさんはモンスターの言葉が分かるから何とかなるだろ。

 最悪地面に文字を書いて店員に伝えればいい訳だし。」

 通訳を探すあてもないので、俺はそう言うと、シャドウウォークを解除して、兄貴を無理やり連れていく。


 俺が兄貴を連れてフィロソフィー商会に着くと、

「ガインさんとパワーさんがきましたよ。」

 俺達を見つけた店員が、店長のバートさんを呼びに行ってくれた。

 しばらくして、バートさんが出てきて俺達を出迎えてくれる。


「ガイン殿、パワー殿、よく来てくださいました。

 大事な話がありますので奥へどうぞ。」

 バートさんが店の会議室のような部屋に案内してくれる。


「俺様に話ってなんだ?」

 兄貴が聞く。


「実は、パワー殿にお会いしたいという熊がいるのですが、連れてきて良いものか判断しかねましたのでパワー殿に確認したいのです。」


「俺様に会いたい熊?

 誰だ、そいつは?」


「★5カリストのドルカン殿です。」


「五島諸島の虎島か?」

 兄貴が言う。

 どうやら、兄貴の中で心当たりがあるらしい。


「やはり、ご存じなのですね。

 パワー殿に是非ともお会いしたいと言っていましたよ。」


「そう言えば、一度会いに行くと言ったまま、会わずにこっちに来ちまったからな。

 とは言え、俺様は今、五島諸島まで行く暇はねえからなあ。」


「本人はハキルシアまででも来るつもりのようですが。」


「本当か?

 なら、久々に会ってみたいぜ。」

 兄貴が言う。


「では、次の航海でお連れするようにしますね。」

 バートさんが言う。


「兄貴、★5カリストの知り合いがいるのか?」

 俺は兄貴にどんな知り合いなのか聞いてみる。


「俺様が前に会ったときは、まだ★4アルカスだったけどな。」


「どういう知り合いなんだ?」


「俺様の技のコーチさ。

 俺様は初めての技をドルカンコーチから学んだんだ。

 指導は厳しかったけどよ、可愛がって貰ったなあ。

 俺様は、昔、ドルカンコーチがインパルスの技を自由自在に出している姿に憧れていたからなあ。

 今の俺様があるのも、ドルカンコーチの背中を見て追いかけて来たからだ。」


「兄貴の師匠なんだ。

 それは是非とも会ってみたいぜ。」


「五島諸島のセンターのコーチだとマスターがいると思うんだが、大丈夫なのか?」

 兄貴が聞く。


「実は、ドルカン殿はマスターが死亡した後、別のマスターと契約していないのでマスターがいないのです。

 後継のコーチも育ってきたから、パワー殿の行く末を見たいと仰っていました。」


「それは会うのが楽しみだな。

 ただ、次の航海ってことは、往復1~2か月はかかるよな。俺様達はウラジオどころかエルシアに行ってるよな。」

 兄貴が言う。


「それどころか、ブライアン・フィロソフィーとの交渉結果次第では帝都に向かってる可能性すらあるぜ。」

 俺が言う。


「お二方はウル殿の救出のために、ブライアンの所へ向かうのですね。

 それでしたら、エルシアにいるフィロソフィー商会当主のブライアンの所へお連れして、そこでパワー殿の行先に案内する形で良いですか?」


「そうしてくれると助かる。」

 兄貴の了解で、ドルカンコーチをブライアンの所に案内してもらうことになった。

 俺達がどこに向かうにしても、ブライアンに行先を話しておけばいいだろう。

 ブライアンにとっても貴重な★5の味方戦力。丁重に扱ってくれるはずだ。



 フィロソフィー商会での話を終え、俺達は部隊の所へ戻る。

 本来はドンロンの部隊だけの所に、今日はエルモンドの部隊も加わったのでかなり混みあっているが、今日1日だけなので我慢してもらうしかないな。


「パワー殿、ガイン殿、話の間にアルガ隊長の調整と、全部隊に明日出発する旨は伝えておいた。

 では、今後の指揮体制について相談したいのだが。

 現状のエルモンドの部隊は、パワー殿が大将、ガイン殿が副隊長と聞いているが、役割に違いがあるのか?」

 アウルスさんが聞いてくる。


「名前はそうなってるけどよ、違いはないぜ。

 基本方針は2匹で相談して決めるし、任務上別行動する必要があるときは各々が半分ずつ部隊を率いたりするしな。」

 兄貴が答える。


「なるほど。

 息が合っていればそれで問題はないか。

 私も兄弟では同じようにして率いてきたわけだしな。

 今後はパワー殿、ガイン殿に私も入れて3匹で相談し、手分けして率いるということでいいか?」

 アウルスさんが聞いてくる。


「そうだな。

 一応隊で唯一の★5だからアウルスさんが大将ということにしてくれ。」

 兄貴が答える。まあ、そうだよな。


「了解した。

 では、明日の出発前に隊員にその旨伝えることにしよう。」

 先発部隊は、アウルスさんが大将、兄貴と俺が副大将と言うことで決まった。

 まあ、実質同等なのだが。


「あと、冒険者部隊2チーム10人程度と、オーウェル様と側近7人が加わるぜ。

 冒険者部隊との指揮関係はどうなる?

 先ほどの会議では確認しなかったし。」

 俺が言う。


「明日の朝、選出されたメンバーとエイク隊長を入れて、相談だな。」

 兄貴が答える。

 まあ、そうだよな。本人も入れて相談しないと決められないだろうし。

 モンスター部隊の統率については決まったので、俺達は久々に部隊のメンバーと一緒に餌を食べ、明日に向けて休むことにした。



 とは言っても、俺にはまだすることがある。

 明日に向けて魔法の準備をするのだ。

 魔法は技と違い準備さえしておけばすぐに発動できるとは言え、準備するのにかなりの時間がかかる。

 朝は時間をかけて魔法の準備をする時間はないからな。夜の内に準備しておかないと。


 隊員に途中で声をかけられると精神集中できないので、俺は誰もいない海岸沿いに歩いて行く。

 巡回している人間の衛兵は見かけるから無防備な単独行動ではない。あくまで精神集中のためにだ。

 すると、ヤヨイ隊長が待っていた。


「ガイン殿は寝ないのですか?」

 ヤヨイ隊長が聞いてきた。


「明日に向けて、魔法の準備をするだけだ。

 朝はとても準備する時間はなさそうだからな。」

 俺は答える。


「準備に時間がかかるとは、魔法も万能ではないのですね。」


「もし、魔法が万能だったら、魔法を覚えた俺はもう技なんて使わないぜ。

 技の特徴は、途中で精神集中を妨害される可能性があるが、魔法より遥かに短い時間で準備して発動できること。

 魔法の特徴は、予め時間をかけて準備する必要があるが、準備さえしておけば一瞬で発動させることができることだ。

 だから、明日以降一瞬で発動させることによるメリットが大きい技を選ぶ必要があり、その選択に魔術師のセンスが問われる。

 もし、ヤヨイ隊長が、1回だけ1つの技を一瞬で発動できるとしたら、どんな技を選ぶ?」

 俺はヤヨイ隊長に聞いてみる。


「フライトですね。」

 ヤヨイ隊長が答える。


「フライトを選んだ理由は何だ?」


「明日以降の行軍で敵襲があるかもしれません。

 付いてこれずに遅れて行方不明になる隊員が出るかもしれません。

 自分にかけて高速移動してもいいですし、遅れた隊員にかけて連れてくることもできますので、迎撃にも捜索にも役立ちますから。」


「一理あるな。いい選択だと思うぜ。

 理由も踏まえて選択することを大事にしてくれ。」

 俺が言う。


「ガイン殿の選択は違うみたいですね。

 聞かせてもらえませんか?」

 ヤヨイ隊長が聞いてくる。

 よく分かったな。


「俺はアナライズマジックを選択するつもりだ。

 技として覚えて分かったんだが、対象を指定せずに使うと、視界内に入る魔力をかなり遠くから感知できる。

 熊族は鳥族と違って遠方の小さな対象を発見することは苦手だからな。

 魔力を感知することでより早く遠方の対象を発見できるようになる。

 明日からは全隊員がスピードを使っているから遅れてしまった隊員の発見にも使えるし、何者かの接近の報告があったらすかさず使って敵襲の感知にも使える。敵が自分に何も技をかけずに襲撃に来るとは思えないからな。

 とは言え、基本的な考え方はヤヨイ隊長と同じだな。

 俺が遠方の対象を発見するのに秀でた鳥族だったらフライトを選んでいただろう。

 だから、いい選択だと言ったんだ。」

 俺は答える。


「アナライズマジックにそんな使い方があるのですね。」


「そうだ。

 技について色々な使い方を知るのも大事だな。」


「ガイン殿は、どうやって人間の言葉や魔法を身に着けたのですか?」

 ヤヨイ隊長、積極的だな。


「メキロ家のアドバイザーのウル様は知っているな。

 ウル様は俺が初めて会ったときから人間の言葉を理解できたんだ。

 俺は人間の言葉が理解できるウル様に憧れてな。

 頼み込んで人間の言葉を教えて貰った。

 とは言っても、ウル様は忙しいし、人間の言葉を覚えるには人間の書物を準備する必要があるから、実際は領主のオーウェル様が呼んでくれた人間の講師に教えて貰ったんだが。

 人間の言葉を覚えた後、魔法について学んだ。

 こちらは、人間の言葉さえ覚えれば、そこまで苦労はしなかったな。

 ヤヨイ隊長も人間の言葉を覚えたければ、ウラジオに着いた後になるが、オーウェル様に頼んでみるが。」

 俺は答える。


「是非ともお願いします。」

 ヤヨイ隊長やる気だな。


「分かった、ウラジオについて落ち着いたら頼んでみるからそれまで待ってくれ。」


「お願いします。

 ガイン殿の魔法の準備の邪魔になるといけないので、私はこれで失礼します。」

 そう言うと、ヤヨイ隊長は部隊の所へ戻っていった。

 出来ればやる気のある他の隊長にも学ばせたいな。

 いずれにしても、ウラジオについてからか。


 訓練を続けているから、俺のポケットは今11レベル分までになった。5レベル技を使うことを想定すると魔法で覚えられるのは6レベル分までだ。

 俺は、アナライズマジックとスピードの魔法を準備すると、部隊のところに戻って眠りついた。


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