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熊王伝  作者: ウル
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第41話 盾の試作

 俺達は、夜の餌の後、館の庭でポケットを広げる訓練をしながら、クロガネ講師が来るのを待った。

 ダガンも兄貴が教えた技の練習をしていた。やってみると、技と魔法の両刀使いは便利らしい。


「おや、皆はん熱心やな。」

 俺達が各々訓練をしていると、クロガネ講師が荷車を引いてやってきた。

 昨日言っていた熊用の盾を持ってきたのだろうか。

 どうせ、実際に使ってみるからと、今いる館の庭で講義を始めることになった。


「俺様達は、3日後にドンロンに向けて移動することが決まったんだが、講義の予定はどんな感じなんだ?

 講師の話は実践的だから最後まで聞きたいんだが。」

 兄貴が、最初に講師の予定について聞く。


「講義は双方向でするさかい予定は読めへんが、わいも近いうちにドンロンへ行くから心配せんでいいで。」

 講師が答える。


「それなら安心だな。」

 兄貴が言うと、


「領主様から、モンスター部隊の武装化について依頼を受けとるさかいな。

 だから、昨日は当人であるあんたらに装備についてどう考えているか聞いてみたんやで。

 今回の講義のわいの方の目的はモンスター部隊に武装化が必要かどうか、必要ならどんな形がいいかを見極めることやで。」

 オーウェル様はそんな依頼をしてたんだ。

 俺達の事を色々考えてくれているんだな。

 


「運んできたのが、盾の試作品なのか?」

 兄貴が言うと、


「そうやで。

 急いで作ったで、壊れやすいけどな。

 機能を確認するくらいには使えるやろ。

 それじゃあ、早速装備してみよか。」

 そう言うと、クロガネ講師は荷車の中身を見せてくれた。

 昨日よりもやや大きな盾が2つとダガーが2本入っていた。


 盾を見ると、両端に鍔が付いており、敵のソードを受けられるようになっている。

 なぜ両側についているのだろうか?

 それに、昨日の盾と違って紐の先に輪っかがついている。

 どうやって装備するのだろうか?


「どうやって装備するんだ?」

 俺は講師に聞く。


「盾の内側に輪っかになった太い紐が2本ついとるやろ。

 まずは、色の付けてない方の輪っかに左腕を通すんやで。

 あと、盾の内側の端に取っ手が付いとるやろ。

 そのうちの小さいほうの取っ手に左腕の親指を入れるんや。」

 俺は講師に言われた通りに盾を装備する。

 すると、俺の腕にぴったりに盾が装備された。

 しかも、親指の取っ手である程度固定されているから、昨日と違って腕を振っても盾がずれたりしない。

 これは便利だ。


「反対側の取っ手と緑色の輪っかは何に使うんだ?」

 兄貴が聞く。


「それは、あんたらがストレングスを使うとき用やで。

 ストレングスを使ったときの腕の大きさに合わせてあるで。」

 講師が答える。

 なるほど、俺達がストレングスを使っても問題なく使えるように考えてあるんだ。


「それじゃあ、試してみるぜ。」

 俺はそう言うと、ストレングスを使って大きくなると、もう一つの取っ手を使って装備する。

 こちらもぴったりだ。

 ストレングス使ったときは盾を上下逆にするから、こっちにも鍔が付いているんだな。

 兄貴のストレングス使ったときの装備具合もばっちりだった。

 こんなのを1日で作れるんだからすげえな。


「2本のダガーは俺用なのか?」

 ダガンが講師に聞く。


「そうやで。

 練習用やで殺傷力はないが、少し軽くして動かし易くしてあるで。

 2本目を予備にするか2ウェポンスタイルにするかはあんた次第やけどな。」

 講師が言う。


「2ウェポンスタイルで左手を実質盾として使うのはありだな。」

 ダガンがダガーを両手に持って言う。


「2ウェポンスタイルというのは、両手に1つずつ武器を持つことだな?」

 兄貴が講師に確認する。


「そうやで。

 かなりの熟練が必要やで使う人は少ないが、極めると強力やで。

 逆腕の武器を敵の攻撃を受けることに専念するならほぼ1ウェポン1シールドスタイルと同じ運用ができるしな。」

 自分で使わないとしても、2ウェポンスタイルというのも覚えておいた方がよさそうだな。


「今日は、得意武器のダガーを持ったダガンと実戦訓練をするのか?」

 俺が聞くと、


「分かっとるやないか。準備が出来たら始めるで。」

 やっぱりか。


 こうして、俺はダガンと実践訓練することになった。

 俺は既にストレングスをかけているのでそのまま、ダガンが昨日と同様フライトだけをかけていいことになった。

 今日は俺が先だ。

 得意武器を持ったダガン相手だと流石に厳しいが、全力で当たる。

 俺は盾を構えてダガンと対峙した。


 ダガンは2ウェポンスタイルをとって、両手に1つずつダガーを持ったまま動かない。

 俺はダガンに向かって走ると、盾を装備した左手でパンチを放つ。

 ダガーで受けるなら、盾を前に出して受けつつ、スピードと体重を使った体当たりでぶっとばす算段だ。


 ダガンはダガーで受けようとすると同時に、右に移動して避けようとする。

 2段構えの防御か。今からパンチを繰り出しても間に合わないし、盾を前面に出してダガーを打ち返すか。

 俺は盾を前に出しつつ、ダガンの行き先である俺から見て左に向かって無理のない範囲で進行方向を変える。


 当然ダガンの方が早く、盾とダガーが一瞬カンと当たっただけでダガンに左に逃げられる。

 距離が空いたので振り出しだ。

 ダガンの方が移動スピードが早いのだから逃げ続けられると俺には何ともできない。本番の敵なら技を使うけどな。

 ダガンに攻撃させて近接戦闘に持ち込まないと、勝ち筋が見えないか。


 俺は、しっかりと盾を構えると、一歩一歩ダガンの方へ歩いて行く。

 ダガンがどんな攻撃をしてきたとしても、カウンターの一発を喰らわせるつもりだ。

 今度は、ダガンが俺に向かって突っ込んでくる。

 右手の攻撃を俺の盾に防がせている間に、左手のダガーで決めるつもりか。


 なら、ダガンの右の攻撃を盾で防ぎつつ、そのまま左腕でパンチを入れる。

 それだけではバレバレなので、当然右腕でもパンチを狙う振りをする。


 ダガンがまずは右手で斬りかかってきた。

 よしっ、予定通り左腕の盾で受ける。

 つもりだったのだが、ダガンは急に右腕のダガーを引いた。

 ダガンは利き腕の右手のダガーを引き、代わりに左腕のダガーで攻撃をしてくる。


 ダガンの左からの攻撃は、俺から見て右からくるので、左腕の盾では防げない。

 出来なくはないが、かなり余分な動きをしなければならない。

 なら、このままダガンに向けている俺の左腕で先に決める。

 俺はパンチをしようとしている左腕をそのままダガンに向かって伸ばす。


 ダガンは俺の左手のパンチを右手のダガーで受けようとする。

 本番なら左手の怪我など気にせずそのままパンチをするところだが、今回はダガーを素手で受けてはいけないルールになってるからな。相手の攻撃を受けつつ押し潰す戦い方だから、本番なら怪我もするし。

 俺は左腕を右に向けて、ダガンのダガーが盾に当たる態勢に変えて、そのまま突っ込もうとする。

 その瞬間俺の左手の甲に痛みが走る。


「もらったぜ。」

 ダガンの声がした。

 ダガンが左手のダガーの向きを急に変え、近づいてきた俺の左手に攻撃したのだ。

 ダガンに俺の行動を先読みされたか。やられた。


「ダガンはん、流石やで。

 相手の動きに合わせてダガーの動きを臨機応変に変えるのは得意みたいやな。」

 クロガネ講師が言う。


「やられたぜ。俺だけ2連敗か。」

 俺が言う。


「ガインはん、昨日はともかく、今日は相手の方が技量が上やで仕方ないで。

 やっぱ得意武器を持ったダガンはんは強いで。」

 講師が言う。

 その後、兄貴もダガンと試合をするが、俺よりは粘ったものの結局ダガンのフェイントの前に負けてしまった。


「ダガン、ダガーを持つと別人だな。

 明日から日課で稽古つけてくれねえか。」

 兄貴が言う。


「せやな。

 わてがいないときも、同じような訓練すれば技量が上がるで。」

 講師が講評してくれた。


「俺も頼むぜ。」


「ああ、分かったぜ。

 俺としても訓練になるからな。」

 ダガンの了解で明日から武器戦闘の稽古をすることになった。


「それじゃあ、本題に戻るで。

 ダガンはん、敵の盾の鍔は厄介やったか?」

 講師が聞く。


「厄介だったぜ。昨日のような勝ち筋を封じられたからな。

 それに盾があるだけで正面からは攻めきれなかったから、

 しつこく何度もフェイントをして、ガイン様、パワー様が引っかかって隙を作るのを待つしかなかったぜ。」

 ダガンが答える。


「今日の盾は使ってみてどうやった?」

 今度は講師が俺達に聞く。


「腕を振り回しても昨日のようにずれねえし、指に挟むことでしっかり固定できて使い易かったぜ。」

 兄貴が言う。


「ストレングス用もあってとても便利だったぜ。

 ただ、この形の盾は後ろ脚で立てる熊しか使えなさそうだし、さらに、1匹ずつ採寸する必要ありそうだな。」

 俺も感想を言う。

 正直、熊のように二本足で立って戦闘できるモンスターじゃないと使いこなせないんじゃないかと思った。


「モンスターにも色々な種族がおるから画一的な装備じゃ使えんな。

 とは言え、熊族用の盾としては形になってきたということやな。」

 講師が言う。


「他のモンスターについては、ドンロンのアウルスさん達にも聞いてみたらいいんじゃねえか?

 リッチモンド家の騎士団長と戦った経験もあるだろうし。」

 兄貴が言う。


「それじゃあ、他の種族についてはおいおい考えるとして、まずは熊族の盾を完成させるかいな。

 他の熊族モンスターにも聞いてみたいで。」


「それじゃあ、明日の訓練後に熊族の隊員だけを連れてくるから夕方ここに来てくれねえか。」

 兄貴の案により、明日の訓練後に熊族の隊員の採寸をすることになった。

 ただ、試作品ができるのはドンロンに着いてからになるようだ。

 この日は、再度ダガンと訓練をして終わった。



 翌朝、ウィル達にも意見を貰うため、俺達は試作品の盾を装備して隊員のところへ向かう。


「大将、腕につけてるのは何だい?」

 最初に盾を見つけて声をかけてきたのはボルンガだ。


「この前の戦闘で人間が似たようなものを付けていましたけど、同じものですか?」

 続けてリコも聞いてくる。


「これは盾と言ってな、人間が戦うときに装備する防具だ。

 モンスターは人間用の物は使えないから、

 熊が使えるように特別に作ってもらったものだ。」

 兄貴が説明する。


 他の隊員も集まってきて、ざわざわしだした。

 驚きや物珍しさで興味がわいたらしい。


「なあ、兄貴。

 折角だから、使い方を見せてやらねえか。

 何か面白い意見が出るかもしれねえし。」

 俺の意見を兄貴が了承してくれたので、俺はダガンとスローモーションで使い方を披露した。


 目新しい意見は出なかったものの、モンスターが武具を装備することに興味を持ってもらえたのはよかった。


 この日、ヴァディス隊長と巡回の調整をし、また、ヴァディス隊長を衛兵隊と冒険者部隊に紹介。

 夕方になって、熊族の隊員の採寸を行った。



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