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熊王伝  作者: ウル
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第39話 移動の調整

 次の日の朝、今日はドンロンから責任者が来て全体打ち合わせをするから、部隊の調整が終わったら館に戻ってほしいと言われる。

 近い内に全体での打ち合わせするとは聞いていたが、今日か。

 モンスター部隊の隊長同士の打ち合わせはその後からだな。

 兄貴とも相談して、隊長打ち合わせは今日の隊員の訓練が終わった後にすることにした。


 となると、今日すべきことは捕虜の見張りの引継ぎと、新しいメンバーの配属だけだな。

 俺はダガンの記録を見て漏れがないことを確認する。

 部隊のところへ来ると、隊員達が待っていた。

 今日は新メンバーの配属をすると知らせてあったからな。


「待たせたな。

 昨日話した通り、今日から交代で捕虜の監視をしてもらうことになる。

 今日はヴァディス隊がすることになるが、メンバーは決まっているか?」

 兄貴がヴァディス隊長に聞く。


「今日は、★2★3のメンバー12匹で見張りに当たります。」

 ヴァディス隊長が答える。


「それじゃあ、ヴァディス隊長と見張りをする12匹は着いてきてくれ。

 他のメンバーは新規隊員を連れてくるまで待っていてくれ。」

 兄貴はそう言うと、見張りのメンバーを捕虜が住んでいる家の近くに連れていった。

 俺はその間に、今日の訓練後に、隊員の指導に関する隊長の意見交換をすることを伝える。


 兄貴はすぐに、ヴァディス隊長と新規隊員達を連れて戻ってきた。

 俺達は、新規隊員を紹介して部隊に配属し、アリサ隊を含めて後のことをダガンに任せ、打ち合わせのために館に戻った。


 部屋に入ると、いつもよりさらに多くのメンバーが揃っていた。

 初めて会うメンバーもいるということで、改めてメンバー紹介がなされる。

 基本エルモンド側のメンバーとドンロン側のメンバーに分かれる。

 エルモンド側の人間は先日の討伐で知っているので、俺が覚えないといけないのはドンロン側のメンバーだ。


 まずは、モンスター部隊のメンバーが2匹。

 ★5ナイトメアのアウルスさんは会ったことがある。進化したばかりのウル様に5レベル技を教えていた。

 ★5キリンのスレイルさんがドンロンのモンスター部隊の総大将でパワーの兄貴と同じポジションだ。アウルスさんの実兄とのことだ。

 続いてジェラ衛兵隊長。隊長が女なんだ。こっちでもサラ隊長やアリサ隊長がいるけどな。グレアス隊長のポジションだな。

 バルドゥル冒険者部隊長。エイク隊長のポジションだな。

 最後にドルク領主代理。ドンロン領主の息子で、次期領主らしい。


「本日集まってもらったのは、ウラジオへの移動後のエルモンド及びドンロンの体制を決めるためです。

 ノリクとの戦争を想定し、どのような体制にすべきか、方針を相談させてください。」

 オーウェル様が口火を切る。


「まずは、ドンロンにどれだけの戦力を残す必要があるかだな。

 それについて意見を聞きたい。」

 ジェラ隊長が言う。


「前線がエルシア近郊になるのであれば、ドンロンは後方の安全地帯になる可能性が高いと思うが。」

 バルドゥル隊長が言う。


「いや、敵は船を使えば遠くドンロンまで攻撃にくることも可能だ。

 何しろ、敵には新兵器があるのだ。」

 アウルスさんが言う。


「その新兵器ってなんだ?」

 俺は気になったので聞いてみる。


「ウル様が言っていたが、オールも帆も使わず、風の方向に逆らって高速で進める船だ。

 しかも、大砲とか言う武器が装備されていて、遠距離から破壊力のある攻撃が可能だぜ。」

 兄貴が教えてくれる。


「敵にはそのような兵器があるのか。」

 エイク隊長が驚いている。


「ウル殿の話では、最先端の兵器とのことです。

 遠距離から城壁の破壊もできるようです。

 今この場にいる中で現物を実際に見たのは、スレイル殿、アウルス殿、パワー殿だけです。」

 オーウェル様が補足する。


「となると、その兵器で海上から攻撃するのと同時に特殊部隊が陸上から攻撃してくる可能性もあるということだな。」

 ジェラ隊長が可能性の高い敵の攻撃について教えてくれる。

 確かに、そんな兵器を持ってこられて、同時にダガンと同じ特殊部隊にドンロンの町を攻撃されるとまずいな。

 ドンロンは後方だからといって、全然安全地帯じゃないわけだ。


「実際に見たってことは、1回は撃退しているんだよな。

 どうやったんだ?」

 俺が聞く。この答えが対策になりそうだ。


「私とアウルスとローラン、ウル殿、パワー殿で乗り込み、フォッサマグナの連発で船内の乗組員を殺害した。

 兵器である船自体は敵のリバイアサンに沈められたが。」

 スレイルさんが答えてくれる。

 要するに、広範囲の高レベル攻撃技の連発で船に乗っている敵兵を皆殺しにしたわけだ。

 実際に兵器を使う敵兵を皆殺しにしてしまえば、脅威はなくなるということか。


「であるなら、当時と同じ作戦ができるだけの戦力はドンロンに残した方がいいな。」

 ジェラ隊長が言う。

 まあ、確かにそうだな。


「フォッサマグナとアースイミュニティーができるメンバーが3匹以上と、それをサポートするメンバーだな。

 とは言え、スレイルさん達の誰かは前線にも出てほしいぜ。

 人間の冒険者には使えるメンバーいないのか?」

 兄貴が聞く。


「エルモンド側では、魔術師が1名だけですね。」

 エイク隊長が言う。アンデルセンさんだろうな。


「ドンロン側にはいませんね。

 今後の訓練で習得できそうなメンバーは何人かいますが。」

 バルドゥル隊長が言う。


「それなら、私とローランがドンロンに残り、エルモンドの魔術師と協力してドンロンを守るということでどうか。これでアウルスは、前線に出ることができる。

 他のメンバーも訓練による習得に努め、使用できるメンバーが増えることにより前線の戦力を増強することもできるようになるだろう。」

 スレイルさんが言う。


「あと、厳しいとは思うが、ドンロンの★4シードラゴンのジャガン隊長が★5リバイアサンに進化した上で、メイルシュトロームを習得を目指しておいてほしい。

 これができれば、ジャガン隊長とサポートメンバーだけで守れそうだからな。」

 兄貴がさらに言う。


「ジャガン隊長は★4シードラゴンに進化したばかりだから長い目で見ないと厳しいが、メイルシュトロームの習得は念頭に入れて準備は進めよう。」

 アウルスさんが答える。

 確かに、船ごと沈める技を使えれば強力だよな。


「ドンロン側はそれでいいとして、エルモンド側の守りはどうするんだ?」

 グレアス隊長が聞く。


「エルモンドは海岸から遠いゆえ、船からの攻撃は考えなくていい。

 治安維持とノリクの特殊部隊に対抗できる戦力だけを置いて、ドンロン側の戦力を厚めにした方がいいだろう。」

 アウルスさんが言う。


「主力はドンロンに置き、エルモンドに大規模な攻撃が来るようならドンロンから援軍を派遣するのがいいだろうな。

 そのようなことがないように、諜報部隊・偵察部隊の活動が必要だが。」

 ジェラ隊長が言う。


「エルモンドに残るモンスター部隊に、毎日空から巡回をさせるようにする。

 これで、一定以上の規模の軍隊の接近は探知できるはずだ。」

 俺が答える。


「ドンロンでも、空から海上も含めて巡回をさせるようにしよう。」

 スレイルさんが言う。


「諜報部隊の方は、ケルティクが帝都に向かいましたからとりまとめが難しくなっていますね。

 ドンロン領主の叔母のエリーゼに統轄をお願いしたいと思います。」

 オーウェル様が言う。


「では、諜報部隊については、ドンロンとエルモンドをまとめて、エリーゼ様とハルメルン商会・フィロソフィー商会にお願いすることでいいか。」

 ジェラ隊長が聞く。


「そうするしかないでしょうね。」

 オーウェル様の言葉で方針が決まる。


「オーウェルは、前線に出るんだよな。エルモンドの領主はどうする?」

 グレアス隊長が聞いてくる。


「こちらのドルクにお願いすることにしました。

 ドンロン領主であるエリーゼの息子で、私の従兄弟になります。」

 オーウェル様がそう言って、ドルク様を紹介する。


「ドルクです。

 エルモンドの領主代理として頑張ります。」

 まだ子供に見えるが、しっかりとしているな。

 エルモンドは再奥地だから、一番安全か。領主を代理にするならここだろうな。


「エルモンドの冒険者部隊は、モンスター部隊のコーチを含む最低限の人員にとどめ、ドンロンに向かわせる予定です。

 ドンロンの冒険者部隊と合流した上で、前線行きのメンバーを選定したいと考えています。」

 エイク隊長が言う。


「ドンロンの冒険者部隊は、敵の新兵器対策である程度の人数を残そうと考えています。

 前線とドンロン残留を半数ずつくらいでしょうか。

 出来れば、エイク隊長には前線側の冒険者部隊の指揮をお願いしたいのですが。

 私と副隊長でドンロン・エルモンドの両方を見たいと思いますので。」

 バルドゥル隊長が言う。

 敵の最新鋭兵器を考えるとそんな配分かな。エイク隊長の了解で、冒険者部隊の配分が決まった。


「エルモンドの衛兵は2割ほどを残して前線に向かう。

 エルモンド側の責任者はライオスに任せ、俺は前線に向かう予定だぜ。」

 グレアス隊長が言う。


「できればグレアスには、ドンロンで指揮を執ってほしいのだが。」

 ジェラ隊長が言う。


「最先端の兵器が相手だと、俺の判断はあまり役に立たなさそうだからな。

 ドンロンは兵力が薄くなる分、しっかり統率できる責任者が残った方がいいと思うぜ。

 諜報部隊と調整ができた方がいいだろうしな。」

 グレアス隊長が言う。


「グレアス、言うようになったではないか。

 いいだろう。

 では、私がドンロンに残るとしよう。

 隊長5名と兵力の7割を連れていけ。

 細かい配分調整はドンロンですることにしよう。」

 ジェラ隊長の了解で、衛兵の配分も決まった。


「エルモンドのモンスター部隊は、巡回・捕虜の監視・幼体の育成をさせるために1部隊だけ残す。残りは前線に向かわせる予定だ。」

 兄貴が言う。


「ドンロンのモンスター部隊は、アウルスに半数の3部隊を率いて前線に向かってもらおうと思う。」

 スレイルさんが言う。

 モンスター部隊はこんなものか。


「内政官は誰が前線に向かう?」

 ジェラ隊長が聞く。


「ウラジオの町にも内政官は残るそうですので、連れて行かなくても問題はなさそうですが、連絡調整等でエルモンドの副内政官を2人だけは連れていこうと考えています。」

 オーウェル様が答える。

 まあ、そんなものだよな。


「前線の諜報部隊についてはどうする?」

 ジェラ隊長が再度聞く。


「ハルメルン商会、フィロソフィー商会に人員の手配をお願いしようと思ってます。

 ウラジオ到着後は帝都方面の部隊を一部引き上げさせてウラジオ近辺に展開させる予定です。」

 オーウェル様が答える。

 ここもそんなものか。


「了解した。

 大体方針は決まったようだが、ドンロンとエルモンド間での移動はいつ行う?」

 ジェラ隊長が聞いてくる。


「パウエル子爵があと1週間ほどでドンロンに到着します。

 その時までにはドンロンに移動しておきたいです。

 部隊ごとに内部調整も必要でしょうから、出発は3日後でどうでしょうか?

 オーウェル様が言う。

 特に反対は出なかったので、3日後にエルモンドの前線移動組がドンロンへの移動を開始することになった。

 ドンロンの調整は移動組がドンロンに着いてから行うことになった。



 会議が終わると、昼を過ぎていた。

 俺達が館から出ると、ジェラ隊長が俺達の所にやってくる。


「パワー殿、ちょうどよかった。ウル殿が攫われたときの警備体制について聞きたいのだが。」

 ジェラ隊長が兄貴に聞いてくる。


「ウル様が1匹で、エルシアのタロウに会いに行ってそこで攫われた。」

 兄貴が答える。


「ウル殿に護衛はいなかったのか?」


「いなかったぜ。」


「全く、ウル殿は重要人物の警備を強化しろと言っておきながら、自分自身の警備は強化していなかったのか。」


「その通りだ。

 今にして思えば、ウル様が重要人物だと言う認識が足りなかったな。」

 兄貴が言う。


「分かった。

 過ぎたことは仕方ないが、同じ過ちを繰り返すわけにはいかない。

 今後は、パワー殿、ガイン殿も自分が重要人物だという自覚は持ってくれ。」

 ジェラ隊長はそれだけ言うと、ドンロンへ帰っていった。


「俺達もいつの間にか重要人物なんだな。」

 ジェラ隊長が帰った後、俺は兄貴に言う。


「俺様とガインがいなくなったらエルモンドのモンスター部隊は機能しなくなるだろうからな。」

 兄貴が言う。

 確かに、隊長達に人間との折衝は難しいだろう。

 となると、俺達も町の外でウル様のように単独行動はしないよう気をつけないといけないな。



「移動が3日後ってことは、それまでに移動の調整をしないといけないよな。」

 その後、昼の餌を食べながら俺は兄貴に相談する。


「基本もう終わってるだろ。

 引継ぎの最終調整すればいいんじゃねえか。」

 兄貴が答える。


「確かに、残るのはヴァディス隊だけだと決まってるし、ヴァディス隊に捕虜の監視と巡回関連の話を引き継げばいいか。

 あと、ライオス隊長と残る冒険者部隊にヴァディス隊長を紹介しておかないといけないか。」


「そんなところだろうな。

 あと、クロガネ講師の講義の日数だけ今夜聞いておくか。」

 これで兄貴と引継ぎ内容を確認できた。

 クロガネ講師の件も要確認だな。

 できれば講義を最後まで聞いておきたいからな。


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