第3話 ウィルの特技
今日もウィルの訓練をするつもりだった。
ウィルは技の覚えがいい。
体力は足りないが、ジャンプアタックもトリプルスラッシュも、形だけならもう崩れていない。
あとは反復と、基礎体力のはずだった。
「いないな。」
訓練場にウィルの姿が見当たらない。
「大将、ウィルならさっき領主様に呼ばれてたぜ。」
ゼルが言う。
ブランタンが。
しかも、なんでウィルだけなんだ?
俺は嫌な予感がして、そのままブランタンの執務室へ向かった。
扉を開けると、予想通りの光景だった。
机の前にブランタン、その横にちょこんと座るウィル。
ウィルは俺を見るなり、慌てて背筋を伸ばす。
「おい、ブランタン。
ウィルは俺の手下だ。勝手に連れ出すな。」
俺は遠慮なく言った。
ブランタンはため息をつくと、
「言い方というものがあるだろう。
私は、彼の様子を確認していただけだ。」
と言う。
「確認?」
ブランタンは驚いた様子もなく、落ち着いた声で答える。
「誤解するな。昨日の件で、トラウマになっていないか確認しただけだ。」
「余計な世話だ。」
「必要なことだ。まだ★1だぞ、この子は。」
ウィルが慌てて首を振った。
「ぼ、僕、大丈夫です。
怖くなんてありません。」
「ほらな。」
俺が言うと、
ブランタンは少し考え、うなずいた。
「問題なさそうだな。では、連れて行っていいぞ。」
「最初からそうしろ。」
俺はそう言って、ウィルを引き連れて、さっさと屋敷を出た。
訓練場へ戻る途中、ウィルがぽつりと言った。
「……あの、ガイン様。」
「なんだ。」
「領主様って、優しいですね。」
「そうか?」
俺には、ただの心配性にしか見えないが。
訓練場へ戻り、訓練を始めようとした時、
ウィルが立ち止まり、耳をぴくりと動かす。
「……ガイン様。」
「なんだ?」
「遠くで、戦ってる音がします。」
ウィルが言う。
俺は耳を澄ますが、何も聞こえない。
「ゼル、アリサ、聞こえるか?」
俺はゼルとアリサに聞くが、
「俺には分からねえな。」
ゼルも首を振る。
「私も聞こえないわ。」
アリサも同意する。
「ほ、本当です。」
ウィルは不安そうに言う。
「ガイン様、あっちの方から…」
俺は少し考えた。
ウィルは臆病だが、嘘をつくやつじゃない。
念のためだ。
俺はウィルを先頭に、その方向へ向かった。
しばらく歩いたところで、俺にも聞こえた。
金属がぶつかる音、怒号、そして、あの羽音。
「……ドラゴンか。」
この前のやつだ。
商隊が襲われている。
「このままだとまずいな。」
俺は状況を見て判断する。
「アリサ、町に…」
俺が言いかけると、
「僕が行きます。」
ウィルが、一歩前に出た。
「お前はロウエンを知らないだろ。」
俺は言うが、
「知ってます。場所も。」
ウィルが答える。
俺は紹介した覚えがない。
「いつの間にだ。」
「町で、何度も見ましたから。」
確かに、ウィルは町をよくうろついてたな。
戦力としても、ゼルとアリサは揃っていた方がいい。
俺は一瞬だけ考え、うなずいた。
「分かった。
伝令を任せる。」
俺は言った。
「はい。必ず。」
ウィルは全力で駆け出していった。
「さて、時間稼ぎだ。
行くぞ。」
「了解だぜ。大将」
「分かったわ、ガイン。」
ゼルとアリサが答える。
俺達は商隊の方へ走った。
戦いは、これからだ。




