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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

短編集

竜は意外と怖くない?

作者: 氷桜 零
掲載日:2025/10/23


「ここなら、誰にも気づかれないな。……モア、本当に残念だ。ちょっと可愛いロリだからって、期待外れだ。お前は勇者パーティにいらない。このダンジョンで、竜の餌になってしまえ!」



……あ゙?

何を言いやがってんのかな、この勇者(笑)(馬鹿)は。





ことの起こりは、私が勇者(笑)パーティにメンバー入りした事から始まる。

あれはそう、約一年前の話だ。


当時聖女として神殿で活躍していた私は、神殿に来た勇者(笑)にパーティに入るよう命令された。

当然私は拒否したが、国王と神殿長から、聖剣を抜いた勇者(笑)と共にダンジョンを踏破して欲しいと、頭を下げてお願いされた。

さすがの私も、国と神殿のトップに頭を下げられては、断れなかった。


私がパーティに加入してすぐ、勇者(笑)は私に、身体検査をするから脱げと言って来た。


馬鹿じゃないだろうか?


私は意識する前に、気がつけば麻痺と暗眠の状態異常をかけていた。

変態に会った時の対処法が、勇者(話)に炸裂したのだ。

ハッとした時には、勇者(笑)は痺れて気絶していた。


他のパーティメンバーのお姉さんたちは、その隣で呼吸困難になるくらい笑い転げると言う、カオスな空間となった。


私とお姉さんたちは、勇者(笑)を床に転がしたまま、自己紹介をするとことになった。


斥候の妖艶系美女、アニタお姉さん。

剣士の溌溂系美女、セナお姉さん。

魔術師の清楚系美女、カルナお姉さん。


みんな系統が違う美女で、よくこのラインナップを揃えたものだと、変な感心をしてしまった。


ちなみにお姉さんたち曰く、私はロリ系美少女らしい。

まあ、それはおいておいて。


お姉さんから聞いた話によると、勇者(笑)の勇者(笑)はかなり緩いらしい。

お姉さんたちが交代で、夜のお世話をしているんだとか。

だから気をつけるようにと、言われた。


それを裏付けるように、その日から勇者(笑)の猛攻が始まった。

一瞬でも気を抜けば連れ込まれるので、気を緩められなかった。



敵より味方を警戒しなくちゃいけないなんて。



ある時は物理的で、ある時は状態異常で、その猛攻を防いでいた。

だがそれが、勇者(笑)にとって、何よりも許せなかったらしい。

毎回毎回、悪態をつかれるはめになった。


そろそろ本格的にイラついているなと思っていたら、お姉さんたちからも気をつけてと、忠告があった。

それが三日前の話。


そして今日、パーティでダンジョンに潜っていたのだけど、最下層のボスを倒したあと、帰還の魔方陣から押し出され、言われたセリフがアレだ。


ダンジョンで死んだら完全犯罪だし、遺体が残らないからいいと思ったのだろう。


最後まで碌な人間じゃなかったことが、証明された。



あの、腐れピーー野郎。


〈呪え、呪え、腐り果てて千切れろ。〉


今までの鬱憤を呪いに込めて、勇者(笑)にプレゼントしてあげる。

ご自慢の聖剣(笑)が腐り果てて千切れるのをゆっくり見ていろよ!



その頃勇者(笑)は、背筋の悪寒と身体の違和感に、全身を震わせていたとか。



「ハハハッ、実に楽しいお嬢さんだ。」


「誰!?」


空間を歪めて現れたのは、最下層のボスよりも大きい竜だった。

さすがに一人で竜を相手にするのは厳しい。

逃げる算段を立てていると、竜がみるみる小さくなっていった。


「竜って人の形になれるんだ……」


「ずっと大きいと、不便だろう?」


そう言う問題なんだろうか。


「まずは自己紹介かな?私は竜王ヴァルトレイ。」



竜王……

とんでもない大物だった……



「えっと、聖女のモアです。」


「うんうん。モアは何故ここに、それも一人で?」


私はことの経緯を説明した。

話を進める度に、竜王の眉間の皺が深くなる。

竜王からしても、やっぱり不快になる話みたい。


「女性は尊重して、庇護すべき存在だ。それなのに……報復するなら手伝おうか?」


「いえ、報復は自分の手で先ほどしましたので。」


「ああ、さっきの呪い。……聖女と呪いは対極にあるものと思っていたが……」


「聖女は解呪も得意です。解呪するには、呪いを詳しく知らなければいけません。つまり、解呪が得意なほど、呪いも得意と言うわけです。」



まあ、この考えを持っているのは私だけだけど。



「パーティの女性はいいのかい?」


「はい。お姉さんたちにはいつも助けられていますし、可愛がってもらっていたので。」


お姉さんたちは、私を守るために色々してくれた人たち。

お姉さんたちは、別に勇者(笑)が好きで一緒にいるわけではない。

それぞれ目的があって一緒にいる。

目的がなくなったらすぐにでも、勇者(笑)と縁を切るだろう。

案外ドライなのだ、お姉さんたちは。

勇者(笑)は、お姉さんたちが自分に惚れていると思っているお馬鹿さんだ。



それに自分で自分を勇者(笑)って。

痛いわー。



「竜王様は、どうしてこちらに?」


「ああ、ここは私の巣の一つでね。寝心地がいいから気に入っていたんだが、人間が多く出入りするなら別の場所を考えないと。」


「いいんですか?寝心地。」


「そうだよ。」



ちょっと、その感覚はわからない。

さすが、竜。

人と違う感性を持っている。



「さて、もし行くところがないなら、一緒に来るかい?お嬢さん。」


「どこに行くんですか?」


「私の国、ドラゴニアに。」


竜の国ドラゴニア。

幻の国だと書物には書かれていた。

本当に実在していたなんて。

非常に、興味がある。

それに今なら、ダンジョンで死んだことになっているから、神殿に縛られる必要もない。

私は自由だ。


私は幼い頃から両親と引き離されて、神殿に送られた。

平民の聖女候補として、貴族には疎まれた。

そして教育という名の罵倒と暴力に晒される日々。

逃れられない日々は、とても苦痛だった。


ようやく手にしたチャンス。


「行きます!連れて行ってください!」


「歓迎するよ。お嬢さん。」


私は、差し出された竜王様の手を力一杯握りしめた。





聖女がいなくなった後。


聖女の呪いは見事に、勇者(笑)に悲劇を齎した。

勇者(笑)はあまりの痛さと恐ろしさに、部屋の奥から出て来れなくなったとか。


それを見たパーティメンバーは、すぐに勇者(笑)を身限り、離れて行った。

彼女たちは、聖女を探して旅をしているのだとか。


平民の聖女がいなくなったことで、神殿の業務が回らなくなった。

そして心ある誰かが、平民の聖女の置かれた状況を噂で流し、神殿は民からの信用を無くしたとか。




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― 新着の感想 ―
お見事♪素晴らしい勇者(笑)退治でした。これで世の中が平和に成りますね。 それにしても他の女性メンバーもさすがです。コレぐらいシタタカでないと(笑) 聖女様でもう一つ、思いつきました。 大聖堂で働か…
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