第1回アレクシス様救出会議
まずはゲームのシナリオを整理しようかな。
そう考えた私は、紙とペンを用意して覚えていることをキャラクターと時系列に分けて日本語で書いていく。
日本語なのは、この国の言葉で記して誰かに見られて一大事になるのを避けるためだ。
ただでさえ攻略対象は自国でも他国でも主要人物しかいないのに、その人達の未来がわかるなんて知られたら……ダメだ、考えたくもない。
その先の未来を想像して、思わず遠い目をしてしまう。
そんなことになったら最悪の場合、私はゲームよりも早くこの世界から退出することになるのが容易に予想できたからだ。
推しの行く末を見届けられないて、そんなの絶対嫌!
うぅ……と頭を抱えて項垂れる。
推しがいない生活なんて、そんなの耐えられないに決まってる。
なぜなら私は推し命なのだから!
誰にでもなく胸を張って宣言したものの、虚しくなって拳を下ろす。
あぁ、推しに会いたい。
ううん、会えなくても良い。
遠くからそっと眺めるだけでも満足なのだから。
だって前世では画面越しでしか見られなかったんだよ?
それが今世では同じ空間にいられる。……それがどれだけ素晴らしいことか。
推しと同じ空気を吸えるなんて、私は前世でどれだけ徳を積んだのだろう。
差し詰め死の間際に子供を救ったことが評価されたのかな。
なんて思考を飛ばしたところでいけないと首を振った。
昔のことなんて今は良いの。
それより大事なのはどうやって推しを救うか、だ。
ずらっと文字で染まった紙を上から下に眺めてヒントがないかを探る。
やっぱり、キーになるのは“聖女”だよなぁ。
私は聖女と書かれた文字を丸く囲み、はぁと頬杖をつきながらため息を吐く。
アレクシス様は国の為に動く人だ。
国が、民が救われるのなら自ら泥を被っても良いと思っている人。
それがアレクシス様の最大の長所で最大の欠点。
自国のために聖女に近づいてたくらいだし……。
そのシーンを思い浮かべるのと同時にアレクシス様のアップが脳裏に浮かんで思わず笑みをこぼす。
アレクシス様が手をこちらに伸ばして、ヒロインの名前を呼ぶ、そんな場面。
あぁ、このシーンは最高だった。
初めてヒロインを名前で呼んじゃって、慌てる姿が脳裏に浮かぶ。
あの照れ顔は保護されるべきだ。
本当、悪役だなんて信じられないよなぁ。
アレクシス様の設定欄に書いた「悪役」の文字をくるくると囲った後、その上にばつ印を書き足した。
悪役にしない為に私が居るんだから。
絶対に悪役になんてさせない。そんな気持ちの現れだった。
……で、問題はどうやるかだよね。
結局そこに戻って来た私はどうするかなぁと椅子の背にもたれかかる。
聖女に隣国を救ってもらうように説得する、とか?
いやいや、どんな理由で自国より他国を優先させるの。
選択を迫られた時、真っ先に救うのは生まれ育って思い入れのある故郷だろう。
私みたいに推しがいるからって自国を見捨……ごほん、他国を先に救う人の方が珍しい。
ならやっぱりあの方法しかないかな。
私は身体を起こして、ペンを手にする。
『聖女攻略大作戦』
紙にはどでかくそんな言葉が書かれていた。
そう、私が思いついたのはアレクシス様に聖女を攻略してもらおうというもの。もちろん正攻法でね。
私はゲームをやり込んだからヒロインのツボもバッチリ押さえている。
つまりそれをアレクシス様にやって貰えば、ヒロインをアレクシス様の婚約者にできて、さらには婚約者の国を優先的に救うという名目が立つ。
そしてもう一つ。
『いざとなったら私が救おう大作戦』
これはアレクシス様が戦地で危機に陥った時、回復魔法を使って助けるという作戦。
私はもちろん聖女候補なので、回復魔法が使える。
つまり、最悪の場合は助けられる可能性があるということだ。
まあ、人を生き返らせるなんて神の技だし、最大までレベルを上げて瀕死の人を助ける、くらいかな。
そこまで極めれば、アレクシス様を救えるかもしれない。
一番はアレクシス様が危険な目に遭わないように聖女に浄化してもらうことだけど、上手くいかなかった時の為に私も力をつけておく必要がある。
今やるべきことはこの2つかな。
紙を掲げた私はよしっと気合いを入れる。
アレクシス様は絶対に死なせないんだから!




