突如の閃き
一息ついた頃に、俺はあることに気付いた。
オヤジは誹謗中傷の手紙に入った写真を見た時、すぐ月海カリンの存在に思い至った。世代的な問題だろう。
ということは、他の親も似たような状況になれば月海カリンの存在へと行き着く可能性がある。というか、少しでも賢ければ俺みたいに何もかも調べ上げているかもしれない。
それはマズい。ラッキーパンチにほど近いとはいえ、その流れは黒蜜先生にとって不利過ぎる。
邪悪なコンビ、松本・森内ペアは自分よりも美しく人気者である黒蜜先生を潰したくてしょうがない。このことに気付いたら、あいつらは何のためらいもなく先生を潰しにかかるだろう。それだけは許せなかった。
嫌だ。先生を失いたくない。
俺の小説を心から楽しいと言ってくれた彼女を、こんなことで失いたくない。
そう思った時、俺はすでに動き出していた。
何かあるはずだ。邪悪な承認願望モンスターから先生を守る手立てが。
ひとまず、俺だけの力ではどうしようもない。もう先生と直接話すしかないだろう。
だけど、俺は先生のLINEアカウントを知っているわけでもないし、先生もさすがに教師と生徒の距離感なのか、秘密の連絡先を特定の生徒に教えているということはなかった。
だから、今後について話し合うにはどうしても学校で会う必要が出てくる。だが、今は休日。理由をつけて学校へ行っても、先生はいない。
一体どうすれば……。
そう思った時、ふいに閃きが舞い降りた。
――そうだ、あの手があった。
珍しく自分を褒めてやりたいぐらいの閃きを得た俺は、すぐにパソコンを操作しはじめた。