表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/17

闇に葬られた過去

 ネットで月海(つきみ)カリンを検索してみた。


 月海カリンは中学1年生でアイドルとしてデビューして、関係者の間ではかなりの注目を浴びていた。それこそ、数年後のアイドル界隈の中核には月海カリンがいる可能性が高いと言われるほど。


 だけど、彼女はスキャンダルを起こした。恋愛スキャンダルぐらいならまだ良かったが、より一層ファンを地獄に突き落とすものだった。


 実話系週刊誌の過去記事を見ると、その詳細が書かれていた。


 写真に写っているのは月海カリン――若かりし頃の黒蜜先生だった。それを突き止めるのにさして時間はかからなかった。


 検索で「月海カリン」のキーワードとともに「不祥事」や「本名」と検索すると、あっさりと月海カリンの本名晒しをされている書き込みを見つけた。日本で一番有名な掲示板だった。表記こそ誤字で黒光凛になっていたが、これは俺たちの担任である黒蜜凛先生に違いないだろう。


 記事を読んでいくと、おおよそ黒蜜先生の起こした事件とは思えないようなことが書いてあった。


 記事の書かれたネタ元の動画で、月海カリンは暴露を行った。現在この動画は削除されているが、探せば誰かの保存したデータが見つかるはず。


 月海カリンの暴露はかなり衝撃的だった。


 曰く、彼女の事務所は大手プロダクションのような力を持っていないため、仕事を得るためにアイドルたちに枕営業をさせていたということだった。


 月海カリンはテレビ関係者への枕営業を命じられて、ホテルにまでは行ったものの逃げて来たということだった。このままでは自分の身が危ないと感じた彼女は、暴露動画にてことの顛末を世界中へと発信した。そういった流れのようだ。


 どこまでが本当かは分からない。週刊誌は記事の9割が嘘であっても珍しくない。だけど、時としてとんでもない真実をえぐり出す。だからこそ、そのわずかな可能性にどうしても目を向けてしまう自分がいる。


 ――結局、月海カリンは芸能界の有力者と寝たのだろうか。


 ベッドで潤んだ目を見せる黒蜜先生――白いブラウスのボタンを一つ一つ外していく映像が流れて、下半身がわずかに反応しかける。こんな時でもそんな妄想をしてしまう自分が嫌になった。


 月海カリンはホテルから逃げて来たと自分では言っているようだが、本当にことに及んでいないかどうかはかなり怪しい。それは彼女に対して贔屓目に見ている俺ですらそう感じる。


 オヤジがなぜ彼女について話したがらないかがよく分かった。


 松本や森内はこのことを知っているのだろうか。


 いや、知っていればもっと徹底的にこのネタをバラ撒くはず。そうなると、でっち上げに近い形で黒蜜先生を誹謗しているうちに、部分的な真実が彼女に流れ弾で当たっていた可能性が高い。


 昔に枕営業をやったアイドルだったとしたら、たしかに黒蜜先生はヤバい教師で間違いないだろう。


 だけど――


 それでも俺は黒蜜先生を信じたい。


 私情が入っているのは間違いない。だけど、短い期間でも彼女と過ごして、そんなことをやる女性ではないと確信している。


 彼女は良くも悪くも純粋無垢で嘘がつけない。そんな彼女が、関係者に言われたからといって枕営業に走るはずがない……と、思いたい。分かっている。所詮は願望だ。でも、それでもいいじゃないか。


 見たくないものを見つけてしまった感はあるけど、これで先生が何に苦しんでいるのかが分かった気がした。きっと彼女はこの事件で負った心の傷を癒し切れていないのだ。


 いや、こんな傷、きっといつま経ったって消えやしない。


 だからこそ、余計に俺が守ってあげないといけない。


 黒蜜先生はヤバい教師なんかじゃない。俺がそう証明してやる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ