昼寝
ぶらん。ぶらん。
もふもふの黒いそれから目を離せなくて、気づいたら僕は飛び出していたんだ。
*
レンガ造りの家が並ぶ小さな町に、一軒のパン屋がある。そこが俺のバイト先だ。一人暮らししているアパートからも近く、店主夫婦も優しいので気に入っている。
お昼を少し過ぎると昼休みに入る。
「昼休憩いってきます」
「いってらっしゃい。これもっていきな」
「いつもありがとうございます」
おかみさんがサンドイッチを渡してくれた。
ありがたいまかないだ。
天気もいいし、昼寝でもすることにしよう。
家に戻ることもあるが、今日は近所の公園に向かう。
公園と言っても遊具はなく、ただただ豊かな自然と散歩道が続くだけだ。最近はあちこちで木々が芽吹き、キラキラと輝いている。今の時期しか見られない宝石をできるだけたくさん見ておきたくて、公園にいることが増えた。
散歩道からそれて、ふかふかの土の上を歩いていく。
するとすぐにお気に入りの場所にたどりついた。舗装された道からそれほど離れていないにもかかわらず、人目につかないだろうと安心できるところだった。それにのぼりやすい本当にちょうどいい木があるのだ。
新緑を眺めながらサンドイッチを頬張った。今日もうまい。
一息ついて伸びをすると、ポンっと真っ黒な猫の姿になり、木に飛び乗った。