『君は役不足だ』と魔法学園のクラス分け帽子に言われた少年は学園を出て行った。
『シン=ヒノ、君は……どのクラスでどんな役割を与えられても役不足だ』
帽子がそう告げた瞬間、嘲笑が波のように広がっていき、中心にいた少年シンは何事かを呟くが笑い声にかき消され生徒たちには届かない。
「ははは! やはり下級貴族がこの魔法学校に入ろうなんて無謀なんだよ!」
「だっさーい! どのクラスにも入れないなんて」
シンが被っていたぎゅっと帽子を握りしめると、帽子が苦しそうに皺を寄せ、呻く。
その帽子は、大魔法使いが作った〈生きた魔法道具〉の1つ。
被った者の才能を見極め、相応しい教育を与えてくれるクラスを教えてくれる。
シンは下級貴族にも関わらず、上級貴族がほとんどの【学園】に入ろうとしていた為、生徒や教師陣から白い目で見られていた。
「……そうですか、分かりました」
立ち上がろうとするその肩をぐっと押さえ、茶髭の男が話しかける。
「可哀想に。私の弟子にならないか。このクラウス、空いた時間に魔法の指導をしてあげよう」
「……ありがとうございます!」
『うむ、それが良い』
笑う帽子に頷いたシンを生徒たちはにやにやと眺めていた。
「ああ、時間が出来たら、必ず魔法を教えてやるからな」
クラウスは、シンの為の時間を作ることなくコキ使い続けた。
だが、彼はずっと笑っていた。
1年後。
シンはクラウスに告げる。
「もう教わることは無いと思うので出ていきます」
「はあ? お前、ずっとニコニコしていて頭がおかしいと思っていたがとうとうイカれたか?」
「いや、ずっと僕達は正常でしたよ」
「僕達?」
首をかしげるクラウスの前にシンにそっくりな笑顔の少年が。
「ふ、双子!?」
「これは僕が教えてもらって作った生きた魔法道具〈リビングドール〉。大魔法使い様みたいに心は与えられないけれど、逆に良かった。じゃなきゃアンタに従うなんて耐えられなかっただろうから」
「はあ!?」
驚くクラウスを余所にシンが〈彼〉に触ると、木製人形に姿を変えた。
「ば、バカな!?」
「馬鹿なのはそっちでしょ? 帽子は言ってたよ。どのクラスのどんな役割であっても役不足、僕の実力の無駄遣いだってね」
「なら、何故それを言わなかった!?」
『「だって」』
帽子を頭に乗せ、シン達は笑う。
「役不足もちゃんと理解できていない教師のクラスなんているべきじゃないから。ただ、図書館は凄く良い本があったし、帽子の話は勉強になりました」
帽子とシンは告げる。
『「ここの学生なんて僕(この子)には役不足だ」』
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