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追憶の彼方

年に一度の、年に一度も

作者: 日浦海里

中学時代、

自慢ではないけれど、

僕は優秀な成績だった


中学時代

先生には悪かったけど

僕はいわゆる不良だった


暴力沙汰は起こしてないし

犯罪だってやって


そういう意味での不良ではなく

ただ、学校がつまらなくて

時折学校を抜け出していた


一人だけなら実行しなかったかもしれない

けれど、学校を抜け出すようになった頃の僕には

同じく学校をサボる仲間がいた


そいつは、小学校時代、

一度も話したことがなくて

中学時代も、

中3になって初めて同じクラスになったぐらい

それまで関わりなかったんだけど

なぜか妙に気があった


そいつに限らず

学校の中でも素行に問題のあるやつから

クラスにあまり馴染めてないやつまで

割と誰とでも話せてたから

もともと僕には「はみ出す」素養があったのかもしれない


そうやって、いい加減なことをしながら

それでも、家には迷惑かけないように

やることだけはやって過ごした中学時代


高校は中学時代に学校を一緒に抜け出していた仲間とは、

別々の学校になった

そもそも僕が行った学校は同じ学校から

二人しか進学しなかったような場所だから

周りに知り合いなんて誰もいないようなものだった


学校は離れたけれど

その仲間とだけは、高校に入ってからも

連絡を取り合った

そうして大体夏頃になると

都合を合わせて顔を合わせて

どこかに遊びに出かけてた


そいつが高校を卒業して働きに行くようになってからも

それは変わらなかった

その時はそいつの就職先が地元だったから

生活圏があまり変わらなかったってのも

理由だったかもしれない


年を重ねるとともに

遊ぶ内容は少しずつ変わっていって

学生時代は主にゲームをしてただけだが

カラオケに行ったり

ビリヤードに行ったり

自由になるお金の額が増えるのに合わせて

遊ぶ幅も広がった


僕が卒業して就職すると、

僕は地元を離れることになった


それでも、そいつとは毎年夏になると

都合を合わせて遊びに出かけた

実家に帰るついでもあった


この頃になると遊ぶ内容はあまり変わらなくなって

むしろ、学生がやるような

無駄に時間を浪費するものが増えた気がする

その時だけは学生時代の、

なんの柵もない自分たちでいたい

そんな思いだったのかもしれない


それでも、時が過ぎると環境も変わる

僕は毎年実家に帰ることがなくなり

そいつと会う機会も自然と無くなった


それでも、ある時、不意に

そいつから連絡があった


最初は、そいつが家庭を持ったという連絡だった


素直に嬉しかったし

お祝いの言葉を伝えた


式とかはなかったから

直接会うことは無かったけれど

それでも久しぶりに話せたのは楽しかった


またしばらく時が空いて

突然連絡が来た

今度はすごくつまらない内容だった


学生時代に一緒に読んでた小説家の新作が

十年ぶりぐらいに出るって話だった


つまらない、とは言ったけど

僕らにはテンションの上がる話だった

そうしてまた、昔みたいに話をした


お互いの住む場所は変わった

お互いの環境も変わった


今はもう、あの頃みたいに

年に一度会うことも難しい


けれど、

今もこうして繫がっている

なんだかよく分からない縁だけど

一年に一度も繋がらないけど

それでも僕らは

確かに繫がっている

最後までお読みいただきありがとうございます


あなたにとっての

これからも繋がっていたい誰か、何か、はなんですか?

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― 新着の感想 ―
[一言]  確かに学生時代の友人たちとの関係は、何だかそういうものが多くて。  密に過ごしてきたから、若さ故取り繕いきれてない根幹の部分を知ってるから、なのかなぁと。  そんなことも思いながら、友人…
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