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Fランク召喚士、ペット扱いで可愛がっていた召喚獣がバハムートに成長したので冒険を辞めて最強の竜騎士になる  作者: ケンノジ


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新しい仲間


「それで……その盗賊を使用人扱いにして周辺に住まわせることにしましたの?」


 きょとん、とニナは首をかしげる。

 ビンに書かせたサインを渡し報酬を受け取ったあと、俺とフェリクはどうなったのかを説明した。


「お姉さまは、それでよろしいのですか?」

「ええ。追い払うだけだと、また別の魔物や盗賊たちが住み着いてしまうだろうし、それくらいなら誰かが近くにいてくれるほうが助かるわ」


 ビンには、別荘の掃除と荒れ果てた庭を畑に変えるように伝えている。


 朝飯前だったらしく、手下たちは手際よく農作業を開始した。

 元々武器を持つよりも農具を持つほうが長かった者が大半だったらしく、慣れた様子だった。


 手紙一枚で追い払えると思っていたニナには、思ってもみない話だったらしく、トンチの利いた小話を聞いているかのように、興味津々だった。


「ですが……その頭領の男は、また悪さをするのではありませんこと?」

「それは、俺と召喚契約を結んだから大丈夫だと思う。俺の言うことには逆らえないようになっているから」


 あんなのと契約することになろうとはな。

 けど、あれはあれで使いでがありそうだ。


「召喚、契約……? ジェイ様は召喚士様でございますの?」

「一応な」

「わたくし、高名な武芸者だとばかり……」

「召喚魔法の能力が低かったから、武芸を鍛えるしかなかったんだ」


「召喚獣並みに戦える召喚士というのは、ジェイ様以外に聞いたことがありませんわ……!」


 普通の召喚士は、戦う必要がないからな。

 ニナが尊敬の眼差しを向けてくる。

 冒険者として上手くやっていくにはこうするしかなかっただけだから、あまり胸を張れたものではないと俺は思っている。


 また何かあればよろしく、と俺は伝えてニナの下をあとにした。


「農作業が得意な盗賊っていうのも、おかしな話よね」


 城下町を歩いていると、フェリクがくすっと笑った。


「武芸を学んでいるやつが盗賊になるほうが少数だからな。どこかの軍隊から脱走してきたなら別だけど」


 そうだ。ビンたちの食料がほぼないままだ。

 けどどれくらいの量が必要なのかわからない。


「戻れ(バック)」


 これで、今あの別荘らへんにいるビンが消える。


召喚(サモン)


 言うと、ビンが光りとともに姿を現した。

 似合わない演出に笑いそうになる。


「あ。お頭! 何かご用で?」

「手下たちの食料を買い付ける。ただ、どれくらい必要なのかわからない」

「わかりやした。お頭、何から何まで面倒を見てくださって、ありがとうございます」

「いいよ。そんなの」


 仕事をこなしているおかげで懐には余裕がある。

 いずれ手下たちにも働いてもらうつもりだ。


「野菜や植物の種も買おう」

「へい」


 市場にやってきて、水と食料の買い付けをしていく。

 そこで、食料店の店主が眉をひそめた。


「だ、旦那、その隣の黒髭の男は――まさか、黒狼のヴィンセントじゃあ!?」


 なんだ、それ。


「ビン、そんな呼ばれ方をしてるのか?」

「ええ。まあ、はい。そう呼ぶやつも、いるっちゃ、いますねぇ」


 得意げな顔をするビン。

 ファンに見つかった有名人みたいな顔すんなよ。


「しょ、賞金首ですよ、旦那。この男。冒険者ギルドか警備の騎士に突き出せば――」

「え。賞金首なのか」

「ええ。一五〇万でさぁ」


 凶悪犯なんだな、ビンは。


「大丈夫ですよ、店主。僕が召喚契約をしているので、勝手なことはもうできません。……死んでも蘇生させて人のために働かせまくるので、過去のことは忘れてやってください」

「そ、そうですか……?」


 不安そうな店主とは違い、ビンは感銘を受けたように首を振っている。


「ったくぅ……お頭の志は天よりも高いぜぇ……」


 擦り切れても働いてもらうって言ったんだけど、意味わかってなさそうだな?


「そんなすごい盗賊だったのね、ビンは。何をしてきたのよ?」

「そりゃあ、お嬢さん、お宝を盗んでましたぜ」


 盗賊って呼ばれるくらいだからな。


「険しい山や深い森……洞窟の奥深くに仲間たちと向かって」

「ほぼ冒険者だな」

「横取りをされたと喚くやつらがいて、襲ってくるから撃退をしていただけなんでさぁ」

「それで賞金首に?」

「へい」


 横取りなんて別に珍しくもなんともない。とくにダンジョンと呼ばれる危険地帯では、誰でもやるし、誰でもやられていることだ。

 ビンたちは、悪い盗賊ってわけではないらしい。

 俺は店主に料金を支払った。あとでキュックに運んでもらおう。


「ということは、賞金を狙ってビンを襲う人間がいるってことよね」

「そういう場合は、冒険者ギルドだ」


 不思議そうにしているフェリクとビンを連れて、俺は冒険者ギルドへ向かった。


 中に入ると、ビンはかなり注目を集めた。


「おい――あいつって賞金首の黒狼だろ」

「トカゲの召喚士と一緒だぜ?」

「トカゲの野郎が捕まえたのか!?」


 さざ波にのように俺たちを中心に会話が広がっていく。

 疑問に答えることはなく、俺は空いているカウンターに向かった。


「ステルダム様。ご無沙汰しております。今日はどのようなご用件でしょう?」


 何度か見たことのある受付嬢が応対してくれた。


「この男は賞金首みたいですね」

「はい。さようでございます。――今すぐ懸賞金の準備を」

「いえ。違うんです。召喚契約をしたので、もう勝手なことはできませんから、懸賞金の解除をお願いします」


「へ?」


 受付嬢の目が丸くなった。


「しょ、召喚契約? この、男と? ……それで、懸賞金の解除を?」

「はい」


「黒狼は、かなりの腕自慢で、剣を持たせたら一騎当千とすらいわれる男なのですが――それを殺さず、屈服させた、と?」


「この通りです。――な?」

「へい」


 ギルド内のざわつきが一層大きくなった。


「あの黒狼を? 返り討ちにあった奴等は数知れねぇんだぞ」

「宝物の番人って異名すらあるんだ。それを、トカゲの野郎が?」

「どんな手品を使いやがったんだ」


 俺は王都の冒険者たちの間では、トカゲの召喚士として侮られている。

 戦って打ちのめしたとしか言えないが、きっと信じてもらえないだろう。


「かしこまりました。一度上席と相談いたします。少々お待ちください」


 受付嬢が踵を返し、奥の事務室のほうへ消えた。


「ビンってば、強かったの?」

「お嬢さん、オレ様を侮ってもらっちゃ困りますぜ」

「一騎当千か……、俺には一瞬で剣を弾き飛ばされたのにな」

「いやいや、お頭が異常なだけです」


 俺たちが話していると、さっきの受付嬢が五〇代後半くらいの丸眼鏡の男を連れて戻ってきた。


「ステルダム様。いつも幣ギルドのご利用、誠にありがとうございます。わたくし、こちらのギルドを預かっております、支店長の者でございます」


「支店長? あの人が?」

「何年もここで活動しているが、はじめて見たぜ……」

「支店長が直接?」

「トカゲの野郎、一体何を?」


 俺たちの会話は全部ではなく、途切れ途切れに聞こえているようだった。


 支店長が差し出した手を俺は握った。


「こちらこそ、いつもお世話になっております」

「部下から用件を伺いました。これまでのご功績とステルダム様のお人柄を考慮いたしまして、特別に、ご要望を承りたく存じます」


「よかったです。ありがとうございます」

「いえ。今後とも、何卒ご贔屓にしていただければ幸いです」


 恭しく一礼をして、支店長の男は去っていった。


 ということで、ビンの懸賞金が解除された。


「よかったな、ビン。これで安心して暮らせるぞ」

「ジェイのお頭……あれこれ手を尽くしてもらって、オレ様ぁ、どう恩を返したらいいか……」


 半泣きのビンの肩をぽんぽんと叩いてやった。

 粗野な口調で品がなく小汚い男だけど、悪いやつではないのがわかってよかった。


「ジェイってすごいのね……。支店長が出てきて特別に言うことを聞いてもらえるんだもの」

「ただ単に、ここで長くやってたってだけだろう」


 と、俺は他人事のように言った。


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